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父と娘とセキセイインコ
「暑いな~、お邪魔しま・・・す?って、何じゃこりゃあ!!」
久々に訪れた・・・
「勉強できんやん!なにこれ!え、え、えー?」
机の上には、マスク、書類、ペン、ブックスタンド、文庫本・・・、ポーチ、薬の説明書、空になったティッシュ箱、ティッシュ箱、ペーパータオルが散乱していた。
「んっもー」と言いつつ、「ドン」と放り投げるようにキャリーバックを部屋のど真ん中に置いた。そして、エアコンのリモコンを探す。
しかし、、、見つからない。
「おーいリモコン。り・も・こ・ん」
「はぁ~、んも!しょうがないな~」
「では、リモコン、リモコン、リモコン、リ・モ・コ・ン、リモコン、リモコン、リモコンさん~」と歌ってみる。
歌ったところで、「はいよ!」って出てくるはずもなく・・・。
室内のデジタル温度計は 31.5 度を表示していた。
額から汗が垂れ、Tシャツの首元は汗でびっしょり濡れていた。背中を汗が滑り降りる。今にもTシャツが透けてしまいそう。
「ないな~、って事は~、たぶんこの辺に!っと」
「バサ、ドン、ポイ」
と机に散乱している埃まみれの物体たちを退かしていく、
「パサパサパサ」と重なったマスクを漁った時、
「はっけ~ン!」と呟くと同時に慌てて手にする。
「白の下に白!そりゃわかんないや、保護色だ!」
エアコンのリモコンを右手で取る。左手は腰に、肩幅に脚を開き、直立し、
ミサイルを発射するかの如く、体ごとエアコンに照準を合わせる。
エアコンから「ピピ」と合図が返ってくる。「ウィーン」と、エアコンの吹き出し口のルーバーが開く。まだ、冷たい風は出てこない。
「はぁ、もう、どんな意地悪やねん!」
夏の日差しと吹き抜ける風、
「ミィーン、ミィーン。ざわわ、ざわわ。」
「キュ、キュ、キュ、」
「はぁ、はぁ、はぁ」
「よっこいしょっと」
「チャリチャリ~、ザザザー、くぅぃ、カチャ、」カギを開け、「キィー」ドアノブを回す。
「ギィー、キュー、ギュィー。」扉を開け、部屋に入る。
後ろから「ギュィーン、ドン、ガタ、ガチャーン」と鉄の扉が閉まった。
シェルターは築 40 年のコンクリート製のアパートの最上階にある。
独特な形の階段を上る。階段を登り終えると、扉が 5 個ある。最初の扉が「シェルター」への入り口だ。
「シェルター」とは父の住むアパートの 1 室だ。
父と母は私が 1 歳になる前に離婚している。父はずっと遠くの都会で暮らしていた。
数年前に突然、「ははは、病気で会社辞めたから、15 年ぶりに地元に戻って来た」と笑いながら、この部屋に引っ越してきた。
いつも父親は突然現れる。
久々に父親へ会いに行くとそこには奇妙な生き物が一緒にいた。足は 2 つあるが、トカゲのようだし、口は変な形で、「クチバシ?」と言う。
「嘴」こんなこともなければ、絶対覚えることない漢字を覚えた。
眼は鋭く、翼は鋭利な刃物にも思えた。大きさは手のひらぐらいだ。
でも、私には 1.5ℓのペットボトルと同じぐらい大きく感じた。
その生物は、父親の肩の上から、静かに私を観察している。
私もその生物を観察している。
次の瞬間、
その奇妙な生物は「ピィー、ぴぃー、ピピ」と鳴く、私は「ビクッ」と肩が大きく弾んだ。
心臓のBPMはどんどん上昇する。耳の奥から「ドク、ドックン、ドク、ドックン」と音が響いてくる。
目が合った瞬間、ペットボトルが飛んできた。からだが動かない。
身構える私、、、慌てて、目を閉じる。体全身に力が入る、鳥肌が駆け抜ける。
「はいはい、てんちゃんどうしたとね?大丈夫よ~」と聞き覚えのある父親の優しい言葉が流れてくる。
私は恐る恐る目を開ける。父親を見る。
奇妙な生き物はごきげんで何かをしゃべっていた。
「てんちゃん、てんちゃん・きた!」と、言っている。
「え、ニホンゴデスカ?話せると?」と思った瞬間、再び、何かが向かってきた。私の頭の上を通過する。
今度は声が出せた。「いやー、ちょっと!」と大声が出ていた。
奇妙な生き物は父親の肩に帰還していた。
父親は大きな口を開けて「わははは!」と笑っていた。
私の・・・頭は・・・思考が・・・停止・・・した。
人生で初めて「フリーズ」を体験した瞬間だった。
敗北?恐怖?苦手?嫌い?怖い?嫌い?むかつく?嫌悪?意地悪?性悪?
言葉を探してみたが、何とも言えない感情が沸きだしていた。
一緒にいた生物は「セキセインコ」と言う鳥の仲間だった。
ただ、「病気」と言う父親の姿は、元気そのものに見えていた。
今、父親は入院いている。セキセイインコ はおばあちゃんのところで預かっていると言っていた。
1週間自由に使って良いとは言っていたが・・・
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