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娘の家出のお話 (父が娘の気持ちを文章にしてみた)
それは1か月前の出来事。
「ですから、E判定が出ているので、志望校は変更するべきですよ。
お母さんはどう考えていますか?誰でも志望校に行ける訳ではありませんし、母子家庭でもあるので、遠くの大学へ進学するよりも地元の大学でどうですか?
数学や生物が得意なようですので、農学部とか工学部、要は理系ですよ!
その方が良いと思います。今だって、理系クラスにいるのですから、心理士、ってカウンセラーでしょ?
それよりも地元大学のほうが将来有望だと思いますし、実家から通えるので、ぜひ、地元大学に変更しましょう?ね、ね、その方がいいでしょう?」
学校の教師から毎回言われる。
母親は何も言わない? いや、言えないが正しいと思う。
昔からそうだった。
私は・・・学校が嫌いではない。
私は・・・他人と一緒でなくても大丈夫なヒト。
記憶を遡る。
中学生になったころ、「父親のススメ」から「薬剤師」を目指していた。
私は・・・負けず嫌い。正義感が強い。論理的な話し方をする。
私は・・・珍しいものが好き。人を応援することが好き。好奇心が強い。調べることが好き。
私は・・・人間以外の生物が大嫌い。血を見ることができない。
「薬剤師が良いと思う。弁護士とか他にも職業はあると思う。しかし、君は正義感がとても強い。だから、弁護士とか、看護師も良いと思うし、企業経営者や監査人もぴったりと思う。世の中は広いから、自分で調べて、決めたらいい。薬剤師になれるだけの能力があれば、何にでもなれるよ!だから、見つからないうちは薬剤師ってことで!」
と如何にも父親らしいセリフで私は納得させられていた。
今回の件を父に相談すると、
「君の考え方、調べ方、計画性、説明する能力、責任感、経済観念どれも間違っていない。堂々と反抗していいよ!」
「自分を遠慮なく表現しなさい。最後はお父さんが「申し訳ございませ~ん」って最低な父親を演じて、先生たちに謝罪すれば済むから大丈夫!」
と相変わらずの父親だった。
次の日、
「私のHPは3」になっていた。学校までバスで 1 時間。通う気力がなくなってしまった。
その次の日、
「私のHP」は全く回復しない。「回復の呪文」を「母親の魔法」で無効化された。
その次の、次の日、
「私のHPとMP」が1になった。
さすがに「ヤバい」。よし、逃げる!スマホを手に取り、LINEを開く、友達リストから「父親」を選ぶ、
「パパ、明日から泊まりに行ってもいい?」とメッセージを送る。
ダサいスタンプが返ってきた「OK です」と。
私は、急いで荷造りをする。二泊ぐらいの外泊は慣れたものだった。
返信から三十分ほどして、父親から電話がきた。
「もしもし、お父さんさ、今、入院してるから、勝手に使ってね~。鳥ちゃんたちは、ばあちゃん家で預かってもらってるから安心して。足りんもんがあると思うから、近くのコンビニで買っといて~」と相変わらずな父。
私はさほど心配してはいなかったが、
「どのくらい入院になったと?」と聞いてみた。
「たぶん二か月ぐらい」と元気な父親の声が返ってきた。
翌朝、キャリーバックに詰め込んだ荷物を持って、母親が夜勤から戻ってくる前に家を出た。
母親は今もLINEができない。
私は「ちょっとパパのところに二日ぐらいいってくる」とメールを送る。
返信はいつも無い。
父親の住んでいるアパートの一室は、私にとっての「シェルター」だ。
父親のいびきと奇妙な生物を除けば・・・。
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