“ほんものの美しさ”を引き出すメイクの魔法
メイク講師として活躍されている宮本めぐみさん(以下、めぐさん)にインタビューを行いました。メイクアップ教室「Colori」を主宰し、ウェディング業界でも専属のヘアメイクアーティストとして活動しています。めぐさんのこれまでのキャリアについて、仕事を通して得たもの、ワーママとしての生活についてお話を伺いました。
「可愛い」に惹かれ、ウェディング業界へ
ーー今日は、めぐさんにこれまでのお話を伺います。
なんかドキドキしますね。あんまり自分の人生って振り返ったことないから(笑)。よろしくお願いします。
ーーめぐさんは、ヘアメイクの仕事をされてどれくらいですか?
もう25年になります。ずっと憧れがあって、高校生の時にIPSA(イプサ)の美容部員のお姉さんに「どうしたらなれますか?」って聞いたら、「Be-STAFF」っていうメイク専門の学校を教えてくださったんです。それでそのまま進学しました。昔からなんでも知りたがりで、いろんな人に話を聞きに行っていましたね。
ーーめぐさんは、子供の頃から「メイク」というものに興味を持っていたのですか?
もともと自分の眉毛やくせ毛に悩むことが多くて、それがきっかけでヘアメイクに興味を持つようになりました。サラサラの髪を持つ可愛い友達に憧れて「私もそんなふうになりたい」と思うようになったんです。
ーーその後、どんなふうに経験を積まれたんですか?
メイクの学校で先生について現場に行かせてもらったり、シューティング(作品撮り)をしながら学びました。成人式やスタジオ撮影に同行するオーディションもあって、選ばれないと経験が積めなかったので、チャレンジしました。それとは別に自分で経験になる仕事を探したりもしました。
ーー先生の同行も選ばれないと行けないんですね。
そうなんです。当時、何のメイクさんになりたいのかわからなかったので、とにかくいろんな現場に行きました。その中の一つが結婚式場のバイトです。
そしたら、ここだ!!と。なんて可愛い花嫁さんがいっぱいいるんだー!って感動して。
ヘアメイクで更に幸せなオーラを作っているのかな?と思い惹かれました。
ーーちなみにブライダルのヘアメイクは結婚式場専属ですか?
うん、そうなりますね。
大きいホテルは美容室が3つくらいあって、そこに直属になるというかたち。そんなシステムも、その世界に入るまで知らなくって。
(一般的にホテル内美容室で働くヘアメイクは)本来なら美容師免許が必要なので、また学校に入り直して資格を取る必要があったんですが、Felicia(フェリシア)のオーナー夫妻と出会い、相談する中で「うちで働くなら美容師さんと一緒に働いて、経験を積んでメイクさんになりなさい。メイクやりたいんでしょ?」と言ってくださって。やった!!と。
メイク出来るなら何でもがんばろうと決心しました。
平日は結婚式がほとんどないので、実際はメイク以外にも式場内のセッティングや接客、プランニングなど広く学ばせてもらいながらやってました。
『NO!!(エヌオー)』という熊本のストリートスナップを紹介する雑誌があったんですよね。そこのカメラマンが友達だったということもあって、浴衣特集などのヘアメイクの仕事もしていました。
出会ったカメラマンや美容師さん達と作品撮りをして、ファイルに貯めるっていうのをこっそり続けていましたね。
ーーそうなんですね。ウェディングの現場で働き始めて、最初はどんな気持ちでしたか?
想像以上に楽しくて幸せでした!
ウェディングの仕事は本当に特別で、花嫁さんの大切な一日を支える責任感に最初は緊張しましたが、その分やりがいもすごく大きかったです。花嫁さんの顔をメイクで引き立たせ、その笑顔を見る瞬間が大好きでした。まさに一期一会ですし、一つ一つの結婚式がユニークで、その人らしさを引き出すメイクを心がけています。
「ふたりの世界」をワンチームでつくる
ーーめぐさんが働かれているFeliciaでの仕事について教えてください。
私達の仕事はその方が最高の姿で、結婚式を自信を持って過ごせるよう素敵にする事です。めちゃ大変ですが、悩みをカバーしながらヘアー&メイクを作りあげていく事にやりがいと幸せを感じています。
ーー社長から大きな信頼を得て、早くから責任ある立場を任されたんですね。
すぐに結婚式の担当を美容師さんと二人で任されました。社長夫人は美容師オーナーでもあったので少しずつメイクをさせてくださり、信頼してくださりました。
Feliciaの社長は「結婚式は毎回新しく、依頼主様の個性を引き出したい」と常に考えていて、私たちスタッフも毎回新しい挑戦を楽しんでいます。例えば、パン屋さんを夢見る新郎新婦がいれば、式の準備段階でパンを焼いたり、会場のデコレーションもすべてパンをテーマにしてしまうんです(笑)。そのようにチーム一丸となって、ふたりの世界をつくりあげています。
とても人を信頼してださる方で、だからこそ周りも社長についていくみたいな、そんな良い雰囲気がチームにはありました。
大好きな京都で奇跡的な出会い
ーーその後、京都での修行に行かれたと聞きましたが、なぜ京都を選ばれたんですか?
22歳の頃、一つの現場しか知らないことが不安で、自分の幅を広げたくて県外で働きたいと思ったんです。Feliciaに相談したら「辞めるのは反対だけど、好きな京都で頑張るなら行っておいで」と快く送り出してもらいました。
毎年行く位に好きな京都でなら、何でも努力できると思い、旅館「幾松」でバイトをした後、エステの会社へ入社しました。
ーー京都ではどんな経験をされましたか?
京都では、ただメイクの技術を学んだだけではなく、「美」をトータルで提供する姿勢を学びました。実は、エステの施術を行っていた時、偶然にもメイク部門を新しく立ち上げようとされていた美容師さんと運命的な出会いをさせていただきました。
その方と出会ってから話は進み、BALビルという歴史あるファッションビルの中にある美容室の新設メイク部門を任されました。
必要なメイク一式もすべてこちらの希望通り用意してくださったり、お客様に良いこと・必要だと思うおもてなしはすべてやってほしいと。
とても厳しい先生方でしたが、とにかく任せてくださっていました。
同じBALビルにあった紅茶専門店「マリアージュ・フレール」さんにお茶の淹れ方を教えてもらい、美容室内で振る舞うなど新しいアイディアも採用してくださいました。
ーーめぐさんが自分のことを運が良いとおっしゃいますが、運だけではないと思います。めぐさんのお人柄と、しっかりと自分の熱意を相手に伝えられていたのではないでしょうか。
え、そうですか?(照)ありがとうございます。私はメイクが大好きで、メイクの力を信じているからこそ、自然とそんな話になってしまうのかもしれません。
でも、美容室でメイクもお願いするとなるとちょっとハードルが高いと思っていて。まずは私やお店をもっと信用していただくために、メイクだけではなく、どうすればお客様にとって喜んでもらえるか、お客様との関わり方など、全体を大切にすることが何より重要だと感じました。
アットホームな接客で、少しずつお客様からご依頼もいただけるようになり、今度は高校生の娘さんなどご家族のメイクを頼んでいただけたりするようになりました。
場所柄、有名な舞妓さんや置屋さんのお母さまもお客様にいらっしゃって、何度かお会いして信用してもらってから、突然、大きなお仕事をいただくこともあり、毎回ドキドキしました。
また、どこかの化粧品会社に属しているわけでもなかったので、本音で良いものをお客様にお勧めすることができたので、それは強みでした。
クセ強の美容師さんやネイリスト達と夜遅くまで切磋琢磨できたのも青春でした♡
ーーなるほど。その後は、いつ熊本に戻られたんでしょうか。
25歳の頃ですね。本当は京都大好きだし、京都に身を埋めたいと思っていましたが(笑)。
京都で、そのお客様のライフスタイルに合ったメイク法やコスメ紹介を学び続けてきて、それが熊本でもできたら最高じゃん、と思ったんですね。
お客様からこんな話をよく聞いていたんですね。化粧品を買いに行ったら、その店のお勧めをたくさん買っちゃって、本当に自分に必要だったのかなって。
流行りのメイクを勧められるけど、本当に似合うのはなんだろうと相談してくださって。
そこをフォローできる仕事がしたいと、野心がメラメラしました。
手探りで始めたメイク教室
ーーメラメラ燃えてたんですね。
はい、なので熊本に戻った後は、Feliciaでまた働かせてもらいながら、美容を一緒に学んだ親友に声をかけて週末起業でメイク教室を始めました。
でもなかなか軌道には乗らない中、企業さん向けの新人教育の一貫でメイクレッスンをご提供したり、OLさんの夜の習い事として楽しんでもらったり、周知や集客に懸命でした。Feliciaでも、大きなメイクイベントをさせてもらって講師業を学んでいきました。でも、その後結婚、妊娠とライフスタイルが変わって。一旦、事業内容を見直して、教室のかたちを変えようとなりました。
ーーその後はどうなったんですか?
子どもを出産して1年後、Feliciaのヘアメイクのお仕事も再開したんですね。「今度はネイルの資格を最上級まで取って、第2の人生スタートしよう!」と意気込んでいましたら、そこから個人のメイクレッスンご依頼も多くいただくようになって、現在に至ります(笑)。わからないものですね。
ーーメイクレッスンってどんな内容なんですか?
公民館や自宅で教室を開催したり、ご自宅に伺ってお手持ちのコスメを活用して実践中心で教えています。イメージは「まちの近所のメイクやさん」みたいな。自分らしいメイク法を相談できる相手がいたら、もっと楽しくなるじゃないですか。そんな思いでやっています。
ワーママとしての生活とバランス
ーーお仕事と子育ての両立はどうですか?
もちろん大変な部分もありますが、子供がいるからこそ、メイクで日常を明るくすることの大切さを再認識しました。例えば、忙しい朝でも、簡単なメイクをするだけで家族の気分も変わるんですよ。私自身も育児で時間がない中で、眉だけ描いたり、リップを塗るだけで自然と笑顔になりました。そのちょっとした工夫を他のママたちにも教えたいと思っています。
ーー出産後、メイクに手が回らなくなるという声もよく聞きますが、どう工夫されていますか?
私も一度「裸族」みたいになっちゃったんですよ(笑)。でも、キッチンやリビング、車の中などにスキンケアやメイク道具を分けて置いて、ちょっとの時間でもできるように工夫しています。ママでも、少し手をかけるだけで全然変わるんですよ。「可愛いママ」でいることで、相手も自分もいい気分になりますし、未来の自分の為にコツコツ美容は続けてほしいです。
ホンネでその人の「似合う」を提案したい
ーーこれから、めぐさんの今後の目標を教えてください。
夢ですが、もっと日常的にメイクを楽しめる空間を作りたいと思っています。例えば、カフェみたいに気軽に立ち寄れるメイクスポット、少人数制のワークショップを開いたり。メイクって特別じゃなくて、日常に自分で取り入れてこそ、その人の魅力が自然に引き出されると思っています。「お悩み相談室」みたいな場所を作って、皆さんが気軽にメイクを楽しめるような場にしたいですね。
ーー今の仕事において、何を大切にされていますか?
私は、商品を売るのではなく、技術や知識をシェアすることに重きを置いています。お客様の顔を見て、その人に本当に合うメイクを提案したいという思いが強いんです。雑誌に載っているテクニックを実際に体験してもらえるような場所にしていきたいと思っています。
メイクは表面だけじゃなく、その人の内側の魅力を引き出すための手段なんですよね。
その人が持っている美しさを一緒に引き出していきたいです。
ーーありがとうございました!
その場の雰囲気を柔らかくする、温かい笑顔が印象的なめぐみさん。その笑顔の奥には、メイクを通じて人をもっと美しくしたいという強い信念が感じられました。そのギャップがとても魅力的で、どこにいても自然と人を引き付けてしまうお人柄なのだろうと思います。今後のご活躍がますます楽しみです。
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