おとな
誕生日おめでとう。
この言葉からはじめよう。
君は20歳になるんだ、成人してしまうんだね。
だけど、君はずっと大人だった。成人してしまうよりもずっと。成長を恐れないし、変化にも果敢に順応しようとする、そんなとても強い人だった。
成人してしまう、と私が言ってしまうのは未だに私が子どもだから。子どものままでいたいと思うくらいには子どもだから。
君とくだらない話をして私たちで飽和した真夜中の空が白むのを確認しあった日、君とくだらなくない話をして言葉の糸が空回った真夜中の冷たくなってしまったコーヒーを飲んだ日。それらの日からもうしばらく経つというのに私はまだここにいる。
いつだってかっこよかった君が、これからも燦々と世界の一点を眩いほどに照らすようになるまで、好きでいる。君が先に行ってしまった。ずっともう届かないほど遠く、先に。
いつになるか分からないけど、君はきっとそれを知ることは無いのだけれど、いつか私も追いつくから、そして追い抜くから。
誕生日おめでとう。
これまでありがとう。
そんな言葉でおわろう。
(2021/4/2)