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不妊治療はつらいよ 前編

日本では夫婦の約5分の1が不妊治療を受けているらしい。
我が家も例外ではなかった。

結果的には、我が家は幸運にも息子に恵まれたわけで、
でも、もっともっと大変な思いをしている人たちもたくさんいるわけで、

「大変だったんだよ!!!」と言いたいわけではないが、
我が家にとって一大事であったことは間違いないのである。

私自身、治療中はいろんな人の体験談を読み漁って、自分に当てはまるところはないか、探すのに必死だった。
これから治療を始める誰かの役に立てばと思って、我が家の経験を記録していきたいと思う。


女医のキャリアと子供との間で悩んでいたころ

結婚して、私たち夫婦はすぐにでも子供ができてもいいなとは思っていた。しかし、その一方でまだまだ初期研修医が終わって間もない時期に、
妊娠・出産を経て、復帰できるのか?
専門医が取れるのか?

そんなことを不安に思っていた自分がいたのも事実である。

その時の私に言いたい。
「とりあえずキャリアはやろうと思えば何とかなるぜ。」

まずは検査へ まだ20代だから?

1年以上妊娠しない場合は不妊というらしい。

どちらかに治療が必要な問題があるかもしれないので、検査へ。
家の近くに、そこそこ有名な不妊治療専門のクリニックがあったので、そこに通うことに決めた。

まず驚いたのは、初診の予約が取れないこと。
自分も一応医師であるから、外来の予約システムの内情はある程度知っていた。でもそんなに混んでる?教授外来くらい取れない。

そして病院も混んでいて、待ち時間が長い。
受付に怒鳴り込んでる夫婦をみながら、
「みんな待ってるんだよ。この人たちよりはやく妊娠しますように。」
と思いながら過ごしていた。
(ごめんなさい。)

卵管造影はすごくビビっていたけれど、私の場合は特に痛みなく終了。

検査の結果、特に異常なし。
つまり「原因不明不妊」だった。

何か異常があって欲しかったわけではないけれど、原因不明といわれると、何をしたらいいか分からず、それはそれでモヤモヤした。
私の生活習慣がわるかった?冷え性だから?仕事で放射線浴びすぎた?

医師からは「まだ20代だから、タイミング法からやってみましょう」といわれ、タイミング法から始めることとなったのだった。

タイミング法、人工授精もうまくいかず

話は変わるが、医師は、医局という、一般の人からすると謎に包まれた組織に所属している人も多い。私もその一員だ。

医局員は医局の命により、希望していない勤務地にも容易に飛ばされるのだが、私も医局に不妊治療のことは伝えていなかったので、タイミング法での治療中に地域医療に貢献するという名目で転勤が決まった。

結婚してるから、とのせめてもの配慮をいただき、
車で2時間半ほどの場所にはなったが、毎日仕事をしながら通うのは難しく、単身赴任となり不妊治療が1年間強制中断されるのであった。

そんなこんなで、人工授精へとステップアップしたころには、
初診から2年が経っていた。

人工授精、合計7回。
「これがダメならそろそろ体外受精に進みたい」
と伝えた5回目で化学流産。
「あと少し頑張ってみよう」と先生に言われ、2回追加したが結果は変わらなかった。

移植まで進めないとは思わなかった

満を持して体外受精へ。
人工授精までとは、通院回数が格段に増えた。
今まで内服薬だけだったのが、自己注射も始まり、職場に頭を下げながら通院する日々。

医師という職業が、担当医の先生にバレていたから、
強がって平気なふりをしていたけれど、採卵は正直怖かった。

1回目で15個採卵。
私の行っていたクリニックでは、胚盤胞での移植を勧めていた。
外で胚盤胞にならないものは、初期で移植してもうまくいかないだろうと。

「何個凍結できるかな?」
なんて呑気なことを考えていたけれど、
結果、10個受精し全て胚盤胞に至らず。

自分としては全く予想していなかった展開で、
そんなの不妊治療長くやってる方達からしたら普通なのかもしれないけど、
正直悲しい、の前に驚いた。

しかも、採卵では排卵誘発剤の影響で腹水が貯まったりして、その後もなかなかしんどい思いをした。
心が少し折れた。

移植までいけないんだ。
1子につき、5回まで保険適用だから6回目からはキツくなるな〜とか考えてたけど、そこじゃないのよ。私。

というわけで、3ヶ月の回復および心折れ期間を経て、ようやく第二回の採卵に至ったのだった。

日常生活では、食生活に気をつけたり、冷えないようにしたり、先生に勧められたコエンザイムQ10のサプリを飲んだりしていた。

第二回、採卵数9個。
受精7個。胚盤胞再びゼロ。


夫との関係性

夫との関係性は、幸いに良好であった。
(と記憶している。)

もちろん、私だけが、仕事を休んだり検査をしなくてはならないことに憤りを覚えることはありつつ、男女の違いがある以上、仕方のない事だなと割り切れていたように思う。

夫も、彼なりに気を使ったのか、本当に思っていたのかは不明だが、
「できたらいいよね、できなくても2人でも楽しいよね」
と言ってくれていたので、闇に落ちすぎることもなく過ごせたのだと思う。

それでも、友達や芸能人の妊娠報告にはモヤっとしたし、なにより素直に喜べない自分が嫌だったりして、時々一人で泣いた。

そして転院へ

採卵2回で転院は早いなと思う人もいるだろう。
ただ、転院を決めた理由は2つある。

1つ目は、家から近いのはいいが、主治医制で予約が取りづらく、とにかく待ち時間が長いこと。
自分のことをよくわかってくれている先生なのはいいが、働きながら通院する私にとって、受診日を制限されることは死活問題だった。
知らない先生でもいいから、10分でも早く見てもらえる方がありがたかった。

2つ目は排卵誘発の薬の副作用がつらかったこと。
多くの卵子を採卵できるのはいいが、薬で体調が悪くなることも多く、体への負担が無視できなかった。
もう少し自然に近い状態で、薬を控えていかないと、体持たんなと思ったからである。

病院を変えることについて医師が思うこと

私は、不妊治療に限らず病院を変えることに賛成派である。
もちろんドクターショッピングのように短い期間で渡り歩いているような人は、こちらも身構えてしまうが、思い立った時に迷う必要はない

医師と患者にも相性というものがあると思う。
全ての人間に好かれる人がいないように、ある人にとっては名医でも、ある人にとってはイマイチなこともある。
これまで現場でそんな話を、嫌というほど聞いてきた。

医師側は患者さんが転院することに対して、あまり深く気にすることはない。治してあげられなかったことを落ち込むこともあるが、お互い納得した上で、治療を進めることより重要なことはないのだ
と私は思う。


長くなってしまったので、後編へ続く。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
後編ではお金のことも詳しく触れてみたいと思います。


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