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シシリアンキッス
シシリアンキッス!
このワードだけ聞いて、一体何なのか分かる方。
きっとお酒がお好きですね?
そう、カクテルの名前なのです。
私がこのシシリアンキッスを知ったのは高校生の頃。
当時から大好きだった作家、江國香織の『神様のボート』という作品の冒頭で出てくる飲み物です。
勿論カクテルなんて飲めないし、存在も知らないあの頃。
物語の中で感じたシシリアンキッスの味は、ドロドロに甘くて、とにかく甘美な味だった。
カクテルも飲める年齢になってから暫くシシリアンキッスのことは頭から消えていた。
それがある時、渋谷のとあるカフェバーで提供されていることを知った。
それも、神様のボートに出てくる飲み物として!
居ても立っても居られなくなり、すぐにお店へ向かった。
ドキドキしながらオーダーをし、いよいよ対面を果たしたシシリアンキッス。
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期待を裏切らない色!
これはもうルックスから期待しか生まれなかった。
高校時代に想像した味。
物語から感じた味。
強烈に愛している作品だからこそ、少しの怖さもあった。
裏切られたくない、そんな気持ちだった。
はたして飲んでみた結果は?
何と裏切らない味!!甘くて、なのにとびっきりアルコールを感じる!
ドロドロに甘くて、だけど強い。
江國ワールドを裏切らない、むしろその為のような味!
これこそ『神様のボート』で感じた味だった。
シシリアンキッスを飲めたことも、
物語から感じた味を裏切らなかったことも、
全て嬉しかった。
けれども同時に、10代のあの頃の私には知りようもなかった味を、世界を、
今の私は実体験として感じられることに、
少し寂寥感を感じたことも、また事実だった。
江國香織。
私はこの人の紡ぐ言葉が、世界が大好きだ。
江國愛を語ると止まらなくなるので、いつか卒業論文の内容も絡めて、
今の私が見る江國香織の世界について書いてみたいと思う。