「わかる」とは「感じる」ことだから厄介だ
『「わかる」とはどういうことか』で、著者・山鳥重(やまどりあつし)さんは言う。
「説明がうまくつながれば“わかった”と、感じられるのです」
山鳥さんは、脳の損傷を原因とする障害治療の専門家。
『「わかる」とはどういうことか』は、哲学者ではなく医師の目線で書かれた本だ。
「わかる」とは、「感じる」ことだから厄介だ。
「どうして、分からないんだ」
「これだけ説明して、分からないほうがどうかしてる」
子どもの頃に、よく「そう言われた」けど……
感じられないのだから、仕方ない。
「少数と少数をかけ算するとなぜ、数が減るのか?」
小学生以来、ぼくはずっと分からなかった。
「分からなかった」という過去形なのは……
AIに聞いてみたら、かさぶたが落ちるようにスルッと「分かった」ような気になったのだ。
AIは言う。
「かけ算とは、“拡大・縮小の操作”。1より大きい数を掛けると元の数は拡大されて大きくなる。1より小さい数(少数)を書けると元の数は縮小されて小さくなる」
かけ算は、複雑になった(繰りかえされる)足し算を、簡潔にしたもの。ぼくは小学生以来、ずっと「そう思っていた」。
間違いじゃないけど、説明として正確ではなかったのだ。
調子に乗ってAIに「どうして“ルネサンス”と書くのに、“ルネッサンス”と発音するのか?」と聞いてみたら、相手(AI)の説明は自分の中でつながらなかった。
中学生以来の「ルネサンスのなぞ」は、持ち越しだ。でも「ルネサンスのなぞ」は、どうでもいい疑問のような気もする。
しかし「インフレのなぞ」は、どうでもいい疑問ではない気がする。
「どうして、通貨の発行量が増えると物価は上昇するのか?」これが、ぼくの言う「インフレのなぞ」だ。
「実際に出回っている商品が変わらないのに、通貨の流通量が増えたら商品の値段が上がるのは当然じゃないか」
勇気を出して、頭の良さそうな数学教師に聞いたら、「そんなことが、なぜ分からないんだ?」と、不快な表情で言われて以来、「インフレのなぞ」を人に聞いてみたことはない。
そこで、AIに聞いてみた。すると……
「通貨の供給量が増えると、消費者の購買力が増えるため、商品やサービスへの需要が増加します。需要が供給を上回ると、価格が上昇する傾向にあります」
という答えが返ってきた。そこで、次のように質問を繰りかえした。
「通貨の供給量が増えたからといって、賃金が上昇するわけではない。通貨の供給量が増えることと、消費者の購買力が増えることの因果関係を教えてください」
AIの回答は、次のようなものだった。ぼくにとって「インフレのなぞ」は、なぞのままだ。
「通貨の供給量が増えると、物価が上昇する可能性があります。物価が上昇すると、同じ量の通貨で購入できる商品やサービスの量が減少します。これは、実質的な購買力の低下を意味します。したがって、名目的な購買力(通貨の量)が増えても、実質的な購買力が増えるとは限らないということを理解することが重要です。この点を考慮に入れると、「通貨の供給量が増えること」と「消費者の購買力が増えること」の間の関係は、必ずしも直接的で単純なものではないと言えます。経済全体の状況や他の多くの要素を考慮に入れる必要があります。この点を理解することが重要です。
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