付き添い泊のご家族と過ごす夜

コロナ禍ですが、
終末期の患者さんのご家族に限定して
夜間の付き添いをしていただいています。
先日の夜勤では、患者さんに付き添って
宿泊するご家族がいらっしゃいました。
その患者さんのお部屋に行った後に
先輩から言われたこと。

「お看取りが近い患者さんに
付き添って病院に泊まることに
慣れてるご家族がいると思う?」

そんなこと全然慣れてます、
何回もやってます、
大丈夫です、
なんていう方はいるはずないんです。

私もそうでしたが、
患者に付き添いながら
病院で泊まるのは本当に不安でした。
辛そうに見える、
これからどうなっていくんだろう、
どう過ごしていたらいいんだろう、
慣れない病室で、
しんどそうな家族と過ごす夜。

看護師さんとするちょっとした会話、
聞いて良いかわからない些細な質問に
答えてもらったこと、
これからどうなっていくのか聞けたこと、
不安で不安で仕方がない時に
かけてもらった言葉に
心が軽くなったことが何回もありました。

私は、もちろん患者さんはみていたのですが
自分のやらなければならない仕事に
集中して視野が狭くなり、
自分が経験したはずのご家族の気持ちを
忘れてしまっていました。

夜中の2時に訪室すると
ご家族が起きてらっしゃったのでお話。
もう覚悟はできてるんです。
と落ち着かれていました。

「こんなこと聞いてもいいですか。」

「一昨日と変わらない気がするんです。
どうなっていくんでしょうか。」

「付き添えるのはありがたいんですけど。」

「せん妄ってどういう状態になるんですか。」

日中の面会は15分に限定され、
ご家族には患者さんとのお時間を一番
大切にしていただいているので、
そのご家族と看護師が
お話する機会はあまりありませんでした。
夜勤の時間の中でご家族の質問に
お答えすることができて良かったと思いました。

「付き添っていても僕はここでスマホ見て
本を読んでるだけで。何もしてないですけど。」

何もしてないなんてことないです。

昼間からほぼ寝ている患者さん。
でもこの夜に声を出して
両手を上に突き出していた
ことがありました。
少し混乱されていたのだと思います。
ご家族は「お父さん、ここにいるよ。」と
声を掛けながら手を握っており、
その後しばらくしてから
また患者さんは寝ることができていました。

終末期の患者さんは、
混乱し自分がどこにいるのか
わからなくなることがあります。
目が覚めたら自分がどこにいるかわからない。
それってとっても怖いことです。
私たちも患者さんに説明しますが、
その声が届かないこともあります。
その際に聞き慣れたご家族の声は
すぐに届くんです。
あの時にご家族から声を掛けられて、
手を握ってもらって
患者さんは本当に安心されたと思います、
とお伝えすることができました。

患者さんが話してくださったお仕事のこと、
お孫さんの動画にとても喜んでいたこと、
息子さんや娘さんについてお話されていたこと、
シュークリームを嬉しそうに食べていたこと、
入院中の様子についても
お伝えすることができました。
「そんなこと言ってたんですか。
親父は、よその人にはかっこつけな
ところがあるから。」と。

先輩に言われて気づいたこと、
自分が付き添っていた時に感じたことを
思い出してご家族と過ごした夜でした。


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