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人魚のメグとドラゴン
人魚のメグとドラゴン」
「間もなく…だわ」
夕日が沈んだあとの水平線をみつめて、人魚のメグは、つぶやきました。
トパーズ色に輝く水平線の上には、もう星が瞬きはじめています。
メグは、「ふぅ~ッ」と大きく息を吐くと、身を翻し洞窟へ向かって泳ぎました。
岬の端の岩壁には、波に洗われて、洞窟ができていました。
その洞窟のひとつで、人目を避けるように、メグは暮らしています。
洞窟の奥では、「くぅ~ン」と甘える声がメグを待っていました。
「ゴメンゴメン、ひとりにしちゃって」
メグが声をかけると、真紅のドラゴンが姿を現し、器用にしっぽでメグを抱き抱えるのでした。
「大きくなったわね。
ずいぶんとたくましくなった。
これ以上育つと、ここから出られなくなっちゃうわね」
(どうしたの?何が悲しいの?)
はじめて会った時から、メグとドラゴンの間に言葉は、いりませんでした。
「あ、うん、あまりにも夕日が美しかったから感動しちゃったのよ。
さぁ、星が綺麗よ。
外に出ましょ。」
メグは、ドラゴンを促して洞窟の外に出ました。
ドラゴンは、一度ググーッと全身を伸ばし、次に背中の翼にパワーを送り、エイッとばかりに飛び上がりました。
満天の星の下を、悠々と飛んでいるドラゴンを見ているのが、メグは大好きでした。
こうやって飛んでいる姿は、まぎれもなくドラゴンなのに、ちょっと目の色が違うとか、翼を広げるのが遅いってだけで、仲間ハズレにされてたのよね。
私も、髪の色が白すぎるって、白は目立つから攻撃されるって、無理やり黒くさせらせて…。
だから、一緒に逃げ出した。
ふたりは、年に2回の時空の扉が開く時、その“時の狭間”をすり抜けて、やってきたのでした。
岬に暮らすふたりを、村人たちは、快く受け入れ、それとはなしに、気にかけてくれました。
村人たちの心に触れ、メグとドラゴンの心も癒えていきました。
毎夜、ドラゴンの飛ぶ練習を見守りながら、メグの中に、ひとつの決意が芽生えていました。
「よし、帰ろう。
次の新月、月下美人の咲く夜に、
再び時空の扉が開く。その時に」
ふたりでなら、どんな事でも乗り越えていける。
今の姿を、みんなにも見せてやろうじゃないの。
自分の意思で、運命を選ぶのよ。
メグの想いは、もちろんドラゴンにも伝わっています。
いつもより大きく輪を描くドラゴンは、微笑んでいるように思えました。
新月は、いよいよ、明日です。