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夕食後にうたた寝をしていたら、こんな夢を見た。


「写真家の男」

旅をしながら写真を撮る写真家の男。時々個展も催す。

ある日、小さな村にやってきた。昭和30年代の田舎。暑い夏。

未舗装の道。錆びた看板。扉が開け放たれた家々や工場。農作物豊富な畑。鎖に繋がれた犬。のら猫。少女が猫にいたずらをして逃げられた。逃げた先は土管の上。写真に収める。パチリ。

ハーモニカを練習する少年。何度も同じところを間違える。みんな『となりのトトロ』のかん太やサツキみたいな格好をしている。自分もぼろぼろのTシャツに草履。

竹林の隙間から見える川。パチリ。工場と工場の間から見える空。パチリ。柵の向こうには中学校。広いグラウンド。勝手に入って外から保健室内を撮る。

写真だけにとどまらず、壊れたトラックやタイヤが乱雑に置かれた工場裏を、鉛筆でスケッチブックに写生する。
白鉛筆で錆びた看板をこすると、元のきれいな看板に戻った。
村人は終始好奇の目で見てくる。

一軒のうどん屋があり、そこで食事をし、野宿した。

翌日、また村のあちらこちらを撮る。

夕方、うどん屋に行ったら女将がいない。
「どこ?」とそこら辺をうろついている子供らに訊く。
「集会所」と答える。
軽トラに乗せてもらって集会所へ行くと、釘がむきだしの木のテーブルに、村民たちが持ち寄ったご馳走が並んでいた。
「看板をきれいにしてくれたから、なんかお礼をしなくちゃな、とみんなで話し合ってな」村の男。
うどん屋の女将がまたいない。子供らに訊く。
「うどん茹でてる」

うどん屋に行き、うどんの入った大きな重たいボウルを子供らと運ぶ。温かいうどんと冷たいうどん。
席につき、みなで「いただきます」の合掌。
ゆでトウモロコシやトマトを頬張っていると、いつの間にか冷たいとろろうどんがなくなりかけている。
「はよ食べないとなくなるよ、写真家さん」と少女が笑う。

食事が済み、日の暮れかかった坂道を被写体を探してぷらぷらと歩く。子供らがまとわりついてくる。

                  終わり

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