2024ONTAKE100~ネガティブな視点から~
結果から先に
13時間33分で完走しました。
数年前に比べると難易度が高くなった言われているONTAKEで天候に恵まれました。
雨はうれしくありませんが、結果的に雨に助けられたと言えると思います。
来年以降のレギュレーションに変更がなければ、100マイルに挑戦する権利を獲得することができましたが、いまのところ、来年以降100マイルに挑戦するつもりは今現在ありません。
トレーニングと調整
それらしいことはほとんどしていません。2週間前に体調を大きく崩したので、全てリカバリーに振っただけで、調整はしていないので参考にならないと思いますので端折ります。
会場への移動など
大会の開催される、松原スポーツ公園までですが、往復の長距離運転や渋滞で心身ともに消耗とか考えただけでもウンザリなので、今回は、居住地(仙台)→新幹線(東京)→特急あずさ(塩尻)→レンタカー(王滝往復)→以下逆回りとしました。
実際に、交通費+レンタカー(燃料費)+etc…となると結構な出費ですが、前泊で宿を抑えても仮眠だけですし、今回レンタルしたハイエースですと、荷物を置いたうえで、174cmとチビな私でも手足を伸ばして眠るスペースが確保できる上、概ね計画通りのペースで動くことができるのはメリットと言えます。もちろんデメリットも少なくありませんが、この場合、個人的にはメリットが勝ると思っています。
蛇足となりますが、移動中に食事や水などの購入を予定される方が多いと思いますが、塩尻方面から王滝に向かう国道19号線沿いのコンビニは、同じく王滝を目指す連中によって、高確率で弁当やおにぎり・パンなどが買い漁られてしまい欠品していることが多いです。
ちょっと回り道でも、市街地にいるうちにスーパーなど(長野に行くとツルヤがデフォのは私だけでしょうか?)に寄ったほうが良いと思います。
ついでに言うと、高速で渋滞に巻き込まれたりすると、高速降りて慌てて王滝を目指しちゃうからドツボにはまる可能性高いです
…あくまで個人の感想です。配達のタイミングに当たって商品満載でも当方は責任を取りません。
できれば引き篭もっていたい
実は、特にここ数年の私は走ることが嫌いです。
あえて言えば、7年ほど前に目標の一部を達成してから、積極的に走る意欲がなくなりました。出かけるのも必要最低限に留めたいし、走ることは時間を浪費しその他の行動意欲すら奪うのでは?走らないことで、限られた時間をもっと有意義に使うことが…なんて思っています。
では、なぜ細々でも走り続けているのか?なぜONTAKEに来たのか?
プチコミュ障のくせに友人・知人と交流したかったから?
稀に、自身の中でギアがかみ合うことがあり、それが楽しいから?
黙々と林道を進むことでなにかを思い出すことができる気がしたから?
…このあたりの話は、いつか機会がありましたら、その時に
誰ですか?酒飲む言い訳にきまってるだろと思っている人は?
この景色を見たかったのか?
デポバックは、やる気が出たときのご褒美を保冷材で包んで詰めた保冷バックを入れるとパンパンだった。補給や着替えも入れてあるから少々重い。
バック受付で、対応してくれたスタッフの女性は私と以前会ったことがあると告ると、ボランティアが楽しくて堪らないといった笑顔で「がんばってくださいね」と声をかけてくれた。
いつ?だれ?などと思いつつ、人の流れに任せて偶然たどり着いたポジションでスタートを待つ。後ろにいるランナーはそれほど多くなかったと思う。
スタートを待つ間、何人かに話しかけてもらったけど、どちらかというとコミュニケーションが苦手な私は会話をうまく続けられずに、その場から移動するわけでもなくボーっと前方のスタート地点の方向を眺めている。
「○時間切り」「絶対ゴール」みたいな目標や執着がないので、このままスタートしていいのかすらわからない自分に場違い感を感じる。
「いずい」※仙台弁で「居心地が悪い」の意味
スタートの合図は、そんな気持ちが最高潮に達した頃だった気がする。
1300人近くの人が一斉に動き出す。思うように動けるはずもないが、後ろからも「早くいけ」というような圧を感じるが、慌てず流されるままに重たい歩を進める。
手元の時計を動かすことも忘れるくらいだから我ながらやる気がない。
気を紛らわすために、群衆の後姿を撮影しX(旧Twitter)にポストする。
…自分はONTAKEに出てるよ!承認欲求を満たしたので、あとは適当に言い訳してDNFすればいいや。
ゲートをくぐったのは約2分後でした(ゴール後、速報で確認)
松原スポーツ公園の坂を下り橋を渡る。松原湖畔に出て少しすると、
はるか前方の先頭から続くライトの列が竜のごとく見えた。
ヲタなおっさんらしいファンタジーな感覚である。
恥ずかしいやら気持ち悪いやらな妄想が浮かんでは消える。
ふと周囲を見回すと撮影をする姿も見える。皆、自分と同レベルの妄想でもしたのか?
後で見ても絶対に伝わらない画像になるな…私はスマホを取り出すよりもペースをキープして機械的に前に進むことを選んだ。
この時のペースは、感覚的にキロ6分30秒くらいだったと思う。
(ログ見たら6分15秒でほぼ巡行してました)
DNFという病
どうせ林道で傷むからと、捨てる前提で履きつぶしたシューズを選んだのは失敗だったかもしれない。
まだスタートして30分程度しか経過していないのに、左足裏と左ひざが早くも痛みを訴えだした。
この間体調崩して寝込んだばかりじゃん…
痛みが強くなる前に辞めちゃえよ…
松原に戻ればビールが飲めるよ…
これがアニメなら、敵方から精神汚染攻撃を受けているということになるのか?心身がネガティブな思考に支配されていく。脚もカラダも重いけど、とにかくココロが重くふさがっていくような感覚。
追い討ちをかけるかの如く、耳元の骨伝導イヤフォンから流れてきた男性歌手は「USA」と連呼している(古っ)。
「USA! USA!」という歌詞のところが、脳内で自動変換され「DNF! DNF!」と聞こえてきて、さらにはその部分だけ脳内パワープレイされてしまったのだから、自分自身でDNFを煽っているようなものである。
この感覚を振り払おうとバタバタと手を振ったり頭を叩いたり…
練習不足はいつものことだけど、心身ともにこんな調子では、選択肢はDNF(途中棄権)に向かってまっしぐらな状況と言っても過言ではないだろう。
あとでわかったことだけど、この頃すぐ近くにXでつながりのある方が私の周辺に数名いたようだ。
声をかけてもらえなかったのは、私がよほど挙動不審だったか関わるほどのことでなかったということなのだろう。
闇の底から
長いロード区間はそろそろ終わるのか、林道に近づいたのか路面は少しづつ荒れだした。上がらないココロとのまま、コースは上り基調と変化していく。
木々は頭上を覆い尽くしこれまでと違う暗闇が拡がりだしたが、この時の私はまだヘッドライトを点灯させていない。
あと3時間もすれば夜が明けるのだからバッテリー残量を気にしていたわけではなく、周囲は他のランナーのライトで十分明るいと感じたからだ。
なにより、この期に及んで未だゴールを目指すという気持ちにスイッチが入っていないのだから、ライトの点灯以前の話である。
自分のペースが下がったのか周りのペースが上がったのか、徐々にライトの数は減り視界が闇に包まれていく。
さすがに足元が見にくくなってきた。※老眼です
勾配が少しきつくなり下を向いたその時のことだった。
足元の見えない暗闇のなかで、唐突にこれまでと全く違う気持ちが沸き上がってきた。
「何時間かけてもいいから松原までは戻ろう」※一周は耐えよう
少しだけ明るい気持ちが芽生え顔を上げてみるが、暗闇は暗闇のままで先が見通せない。
まだ点灯していなかったヘッドライトを慌てて点灯すると、あれだけ深く感じた暗闇は消え去った。
少しまぶしいヘッドライトの光量を抑える操作をし、改めてコースの先を照らすと、アタマの中にこびりついていたあの歌は聞こえなくなっていた。
いまどのあたりのポジションなの
白河小川のエイドの記憶がほとんどない。
ここではB女史が作業に従事しつつ、ランナーに喝入れをしていてくれているはずだけど見当たらなかった。
忙しく裏方作業しているのだろうと、あまり気にも留めずに、ほとんど手を付けていないボトルに減った分の水を足し、
目の前にいたボランティアさんにお礼を言ったのはなんとなく覚えている。
滞在時間はせいぜい1~2分といったところだろう。
前に進む気持ちは変わらないが、ポジティブとはいいがたい考えが浮かんでは消えていくなか、
「苦しくはないけど長く会話を続けるのはつらいかも」くらいのウォーキングより少し早いペースですすむ。
スタート位置が後ろよりだったのに、次々に抜かれていく。
「どうせ置いて行かれちゃう」「遅いからレース中は会えませんね」と声をかけてくれた方々に遭遇した記憶がない。
実力がないことは自認しているので、先行されてもいて仕方ないけど、さすがにこのいちとは程があると、ちょっとだけ自尊心みたいな感情も顔を出してきた。せっかくなのでギアをひとつあげてみる。
(ウォーク⇒パワーウォークくらい)
御岳で八丈島の光るキノコと邂逅す
少しずつペースが上がってきた(と思う)。ごぼう抜きとはいかないけど抜く人数が増えてきた。
そのうちヘッドライトが前方にシイノトモシビダケを思わせる、蛍光グリーンの物体を照らしだした。
靴だった。私のようなボロ靴で走っている人も見ないけど、なかなか衝撃的なカラーリングである。
「あ!」と、無言で後ろについてゼッケンを確認する。「深〇恭子さんですか?」と声をかけるつもりでいたのに、発せられたのは何故か「人の肉ってどんな味ですか?」だった。
あまりの意味不明な言葉にその場は凍り付いた気がするスベったなんてものではない。
転倒してケガ人が出なかったのは不幸中の幸いだったと思う。
いたたまれなくなった私は、お茶を濁すかのように彼女と二言三言やり取りをすると「じゃぁまた後で」と先行した。
…しかし、その後5分と経過しないうちに、シイノトモシビダケの後塵を拝することになる。
困ったときのお天気談義
遅いながらに歩を進めていくと、夜のは終わり朝が訪れた。
晴天であればグラデーションのように刻々と色を変える空を嬉々と受け止めエネルギーに変えていたかもしれない。
残念ながら見渡す限りの曇天(晴天であれば灼熱におびえるのだけど)であり、お世辞にもさわやかな朝とはいいがたい。
「降らなくてよかったですね」夜間もポツリポツリと感じるときはあったが、レインウェアを出すほどではなかった。
「昨夜の予報ですけど7時ころ(このペースだと林道が終わるころ?)から本降りになるみたいですよ」
降られなかった喜びを共有しようと声掛けしてくれたのに、我ながらひどい応答である。
その後、道すがら他の人とも似たようなやり取りを幾度かしていると、聞いたことのある声が後ろからした。
「なに遊んでるの?」
「スイッチは入りきらないし、下りで足腰痛いし…」と言い訳する私の横を、声の主はを軽々と駆け抜けるとその姿はほどなく見えなくなった。
せっかく下りなのにリズムに乗れない私をあざ笑うかのように、またあの歌が脳内を駆け巡りだした。
時計壊れた?
松原スポーツ公園に向かう橋を渡る。2週目である滝越コースに向かうランナーとすれ違う。
皆やる気に満ちた顔をしているような気がする。
松原に戻ってくることが目標としていたので、私はすでに一定の達成感を感じている。悪いイメージを持ちたくないので、ここまで時計は確認していなかった。
坂道を歩きながら時計を確認する。6時35分を少し回っていたと思う。
「あれ?」8時間は近くかかっていると思っていたので少し驚いた。
DNFするつもりでいたけど、この時間で戻ってきたことに、困惑とともに欲が出たというのが正直なところだった。
坂を駆け下りる集団から私を呼ぶ声がする。Tさん。少し後にNさん。
手を振り彼らにエールを送る。※陰キャでもこの程度の応対はできます
私自身は「ああみんなすごいな」とペースをあげるわけでもなく、1週目の終わりの近づく坂道をトボトボと歩いていた。
軽口と沈黙
駐車場を左手に見ながらゲート目指す。気が付くと前方に再びシイノトモシビタケがみえた。日中なので発光はしていなかった。
少しだけ加速して追いつき話しかけると、どちらともなくDNFしたいという言葉が漏れる。
「もーさ、みんなゴールするくらいまで手をつないで昼寝しちゃおうか」とセクハラまがいの言葉をかけ、加速した勢いのまま1週目のゲートをくぐった。
意外にメンタルは上昇している…のか?
なお、彼女がDNFしたのかゴールまでやり切ったのか…その後顔を見ていません
(1週目終了タイム 6時間41分 総合310位:公式リザルトより)
雨音はDNFの調べ
想定よりもかなり早く戻ってきたのはいいけど、予想より早く振り出した雨は、想像していたより意外に強く病む気配はない。
デポバックを受け取り、ヘッドランプを外すと、タオルで髪と体をぬぐいながら、バックから豆乳を取り出し一気に飲むと、続けて楽しみにしていた杏仁豆腐をたべた。杏仁豆腐はまだ冷たさを保っており灼熱のレースであれば、鋭気を養うのに役立ったと思う。※雨が降っています。
雨に濡れて冷えたのか、下腹部に違和感を感じる。
そそくさとトイレに向かい、テント下へ戻ると下痢止め薬を口に含み、ザックに補給を入れ替えた。
かなり強烈な腹痛に襲われ、もう一度トイレへ…濡れたインナーが体に張り付いて下がらない…焦る。
幸いセーフではあったけど、この時点で2週目という気持ちは萎えた。
「もういいでしょう」
体内から水分が出たためか、寒気を感じながら会場の屋根の下に戻る。
「あ・・・あれ?」
DNFを決めたはずなのに、ウェアを変えたりレインを出したり…なにをしているんだ?
次回予告
降り続ける雨
滞留25分
回復しない腹痛
52km先のゴールを目指しゲートをくぐった、おっさんの目に映るものは!
次回「おっさんの決意」