実録 SMFT2024 Ver'まる 前編

全員が先を目指しているはずなのに、自分の方向にライトの光が向かって近づいてきた。それも複数で。スタッフさんの交代かな?と思った。

崩落したみたいです。
スタッフから戸隠まで徒歩で戻れと指示がありました。

対面した彼はそう告げながら私の横をすり抜け下山していった。

山の上には下山してくる20くらいのライトの列が見える。
私も仕方なく踵を返し下山の列に加わった。

コース上の瑪瑙山山頂まで標高であと50mいや30mといった場所での出来事だった。

正確な状況は誰もわからない中で不安とため息の混じった言葉が聞こえてくる。

この後の展開を冷静に考えてみる。
 レースは戸隠でカット。関門までに戸隠エイドinで完走扱い順位をつけるとすれば…
 林道や登山道をつないで再開…ありえない
 一般道を…各種行政手続きや警備体制が間に合わない
やはりカットと考えるの妥当だろう。では、戸隠からの移動手段は?そんなことを考えながら足を進めた。

あれだけ降り続けた雨はほとんど止んでおり、そこで初めてレースは中止となったと聞いた。
吹き曝しの中レース中止に揺れる戸隠エイドで寒さに震えながら雑踏に紛れバスを待った。

ご縁をいただく

信越五岳トレイルランニングレース。
正確に覚えていないけど、ここにはかなりの回数足を運んでいる。

手元に残っているだけでこんなに…何回出てるんだよ

ここを走った翌週に当時UTMFと呼ばれていた大会に出場したなんて年もあった。けど、理由はともかくゴールテープを切ったことはほとんどない。それどころかここ数年はDNFが続いていた。昨年は5分足りなくて涙を流した。

もういいかなと思っていたけど、
今年はご縁をいただいてエントリーさせていただいた。
長年お世話になっているところに不義理をしてまでのエントリー。
もちろん各所にお詫びの連絡を入れた。
お祭りの一言で片づけられない今年の信越五岳だった。

安定の最後尾スタート

カッコつけている訳でもなければ、ネタでもない。何より実力がないので途中からスタートの列に割り込むなんてことは許されることでない。
特に今回はトイレのタイミングが狂ってしまい、外に出たら集団の中盤に並ぶなどできる状態ではなかった。
少し離れたところにONTAKEでモチベーションを与えてくれたN氏が、やや前方に一緒に高尾界隈で練習したB氏がいた。軽く挨拶を交わしているうちにレースはスタートした。

後ろの方でワチャワチャしています

ゲートを潜る頃、先頭はすでにかなり先にいた。
ゲート脇で参加者を見送る石川弘樹氏に挨拶する。「再来週ガタケで!」信越五岳の直後には地元仙台で石川氏がプロデューサーを務めるレースがあり、信越→ガタケは毎年のルーティンである。
舗装路から最初のゲレンデ登りはパレードと割り切りつつも集団の隙間を縫うように小走りをして最後尾を抜け出した。
START 00:01:25  739位(ドンケツ集団)

淡々と

ケガも故障もしたことのない右脚の違和感がひどい。特別痛むわけではないけど左右がチグハグとした動き。
何人かと言葉を交わす。
皆、調子がよさそうで羨ましい。
ゲレンデの裏側に出て林道を下る頃になると、違和感は痛みに変わっていた。

清々しい朝。この空がまさかの

「まるさん出てたんですね?」とT氏から声をかけられる。T氏は地元が一緒で彼の職場は私のジョグコース上にあるので、時々彼の出勤時に会うことがある。
指標はともかくとして、彼の方が間違いなく強いランナーだと私は思っている。
いくつか言葉を交わすと「今日は自分のことだけ考えて淡々と走って落ちてくるランナーを拾っていきます」と。「私は気晴らしに落ちているゴミを拾っていきます」と返すと返事はなく先行されてしまった。

今日の1枚

斑尾山のピークを越え下りに入ると木々の隙間から左手に野尻湖が見えてくる。
よく開けた場所で立哨をしていたスタッフさんに声をかけた。
「写真撮りますよ」と言葉を返され、よく顔を見ると友人のS氏だった。
携帯を渡しポーズをとりフレームに収まる。

ハット似合わないな…

一言二言を交わしていると写真を撮って欲しいと言わんばかりの数名が近寄ってきた。潮時とばかり握手を交わすとポンと腰を叩かれる。

そろそろギアを上げていけと背中を押されたような気分になり数キロ先のバンフを目指して斜面を下った。
バンフIN 2:53:31  237位(500人抜いてるわ)

ホスピタリティとは

下り基調のコースを進むと程なく100mileの赤池エイド跡(すでに撤収されているし110kでは使用しない)にでた。
見覚えのあるクルマが見える。その陰から何か道具を持って石川弘樹氏が現れて作業を始めていた。

いかん。気がつかれたw
まるさん走らないとと。

スタッフもボランティアも限りがある中で配置しているのだろうから、動けるものが動けばいいということだと察するものの、そういう彼の後ろ姿を見ているからスタッフや関係者がこのレースを作り上げているのかと改めて納得した。
・・・この辺りから軽いアップダウンを繰り返し袴岳に向け標高を上げていく。地味にツライ区間である。いや袴岳を越えると熊坂まで長い下りが始まる。
いつものことながらとにかく走らされるコースであるw
兼俣林道入口 4:37:23  189位

数ヶ月分の・・・

長い下りを黙々と進む。右脚は痛みに変わる前兆なのか痺れてきたけど無視。
エイドに続く直線に出るとM女史が待っていてくれた。日傘をさしていてかわいい。私のためでなくパートナーさんの追っかけをしているのはわかっていたけどやはり嬉しい。
エイドではこの先の関川の登りのためにこれでもかというほど水をかけてもらう。ここでも友人がスタッフとして迎えてくれた。こんな凡人に声をかけてくれるのだからありがたい限りチカラが湧いてくるような気がした。
名物?のトマトが冷えていた。礼を言いながら都合2個頬張った。

旨い。冷たい。まー普段は食べないけど

普段トマトはほとんど食べない。食べても付け合わせに乗ってるのを一切れくらいだからこのエイドで数ヶ月分のリコピンを摂取したことになる。
しつこいと思われそうだけど、もう一度長々と水をかけてもらいエイドを後にする。
もちろん「お世話になりました」とテント内に響くように声を上げ頭を下げる。なんだコイツ?というランナーの視線は気にしない。

新設。かぶり水スポット

例年のような照りつける太陽はなかったけどやはり暑い。首元に冷やしタオルを巻いたが気休め程度にしかならない。
毎年この区間は序盤の疲れが出てくるのもあり、ダラダラと歩いてしまう。案の定数名のランナーが抜いていった。
慌てて追おうとするが、その背中は一瞬で小さくなっていく。順位を争っているつもりはないけど焦る気持ちの割に脚が動かない。
関川の終了地点にある宴会隊エイドまでは熊坂から8km弱。全歩きで2時間は避けたかったので目標地点まで走ったら歩くを繰り返す。
今年から新設された水かぶりポイントは橋脚の下にあったと思う。おまけで工業用扇風機まで置いてあったから、自分も含めてこの辺りがネックとなる人が多いのだろう。ホースで水をかけてくれるのだが欲しいところにかけてもらえないのがもどかしい。
涼しいとは言わないけど今年の状況なら無くてもギリギリ平気だったかなと。

ガンバふんば

突然、コースの右側から人が湧いてきた。100mileの参加者と合流する。つまり関川沿いの道は終わるということで、つまりは宴会隊エイドで紫蘇ジュースがいただけるということことだ。
紫蘇ジュースは毎年楽しみにしているが今年は氷もあった。
が、驚いたのはその直前にガンバふんば隊がいてあのポーズを取らされたwことだ。勿論ちょーしに乗って何度もポーズを取ったのはいうまでもない。

ガンバふんばー♪

ここから黒姫まではウンザリする登りと平坦な林道というイメージだったけど、今年はコースも変わり思ったより早く黒姫エイドに到着する
黒姫IN 7:08:28  153位

ロン毛の水かけおじさん

エイドに入るとすぐに見慣れた人においでおいでされる。しかし名前が出てこないw
おお!と挨拶すると傍らの女性ボラさんに「コイツ俺の弟」と私を紹介し頭に水をかけてくれた。元気そうだからハヨ行きなよと先を急がされるが、果物中心に補給を摂る。胃腸トラブルはないけどMAGMAをもらったお湯で流し込む。ふとサポートエリアに目をやると見知った顔があったので、わざわざ出向き失笑を買う。ついでに聖の先生に挨拶をして再度水をかぶり黒姫を後にした
黒姫OUT 7:15:18  145位

10−20(テン-トゥエンティ)

昨年までだとリフト脇の斜面をのぼっていたけど今年はトレイルを登り林道に出た。ここから長い登りとなる。走れないまでもこういうセクションをうまく繋いでいかないとタイムは縮まらない。いつの間にか右脚の痛みは消えていた。それどころか軽いといえるくらい好調であった。
パワーウォークを使い時には走った。しばらくして前方にリズムよく登っている二人組を見つけた。そっと近づくとペーサーゼッケンをつけ、例のシルクプリントの施されたパンツ履き「ないっすー」と声をかけていた。間違いない・・・

ネタ振りと信じて本名で呼んだら怒られるの巻

後ろから「Oさんですよね」と敢えて本名で声掛けをする。選手の方に紹介してもらい言葉を交わした後、脚に余裕のあった私はペースを上げつつエールを送りその場を後にした。「ないっすー」と手を挙げた。
この頃から雨は本降りになってきた。

吊り橋はプチ渋滞

林道を登り切るとコースは突然降り出す。
登りを飛ばしすぎたのか下りに走りが切り替えられない。仕方なくトボトボ進むと本格的な下りのトレイルに入り先の方を見ると雨でぬかるんだのか滑りやすいトレイルに苦労しているのか進みの悪いパックが前方にいた。
さほど進まずにそのパックにつく形になたったが、狭く滑りやすいトレイルでは譲ってもらえるスペースもなかったのでプレッシャーをかけないよう少し距離を置いてのんびりと下ることとした。
想定よりは遅いけど慌てる時間帯ではない。
吊り橋手前で思いがけなくプチ渋滞が発生(吊り橋は一人づつ渡らなければいけない)していてレインを着ていなかった私には少し寒かったが、初参加という方にこの後のコースレイアウトを説明していると私が渡る順番がやってきた。

ボランティアさん雨の中ありがとうございます

笹ヶ峰は近いけどわらび餅を補給して、その後の登りを一気に登り切る笹ヶ峰エイドに向かうトレイルを駆け抜けた。
・・・え?ここで走れるって近年稀に見る好調でないのか?
笹ヶ峰グリーンハウスIN 9::22:01 132位

後半に続く

リツィート

後日、見て改めて悔しさがこみあげてきた😭
この人ホントいい人なんだよ。

以下引用

毎年毎年参加できるやつばっかりちゃうからな
それぞれ色んな事情あって
やっとの想いで立てたスタートライン
仕事をガッツリやって
家の事もしっかりやって
睡眠時間切り詰めてトレーニングしたのに短縮レースになった時の悔しさは想像せんでも理解できるやろ
次はないんやからな




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