カーボンニュートラルを辛口視点で見てみる【敢えて】
業務上、カーボンニュートラルに関するいろんなアンケート資料を目にします。それらはいわゆるコンサル会社のもので、その内容は大体似たような内容です。(但し私が読んだものに限る)
それらアンケート資料で気候変動問題に関する評価は概ねポジティブなものです。それは下記のとおりです。
気候変動問題は今後大きな市場となる
今後ESGの重要性は更に高まる
実際、サステナブルな買い物と食事への関心は高まっている
気候変動問題に関する関心は高く、それに配慮した商品・サービスに興味がある
一方、ネガティブな評価もあります。
気候変動問題への具体的な行動を実際に起こしている人は少ない
その原因は気候変動問題に関する知識・情報の不足
自分の行動が気候変動問題にプラスの影響を与えるとしても微々たるもので意義を見出せない
サステナブルな選択肢には高価格であることが多く、それが行動を阻害している
大体こんな感じのものが多いです。
カーボンニュートラルに携わってきたマルト株式会社カーボンニュートラルチームとしてもこのアンケートの内容には概ね頷くところです。
ですがちょっと違うんじゃないかと思う点もあるのは事実。
今回は我々が現場の感覚で「うーん」と首を捻っている箇所を正直に記事にしてみようと思います。
ネガティブ面については全て同意しますので論評しません。
ポジティブ面について斬っていきます。(自殺にならない程度に)
「これからはカーボンニュートラルだ!」「脱炭素の時代がやってくる。バスの乗り遅れるな!」
このフレーズいつから聞いているでしょうか。
おそらくこの記事を読んでらっしゃる方の殆どが、2020年10月の菅政権による所信表明でからでしょう。
今は2023年10月。その時から3年の月日が経ちました。
私はTVを見ないので知らないのですが、大手メディアでもカーボンニュートラルという言葉を聞くようになったと人から聞きます。(CMとか広告とか)
ですが、どうも下りてきていない。
なんと言うか偉い人や、意識の高い人達、いわゆる大企業等、社会の上の方で脱炭素、カーボンニュートラルと言っているのですが、それが下々まで下りてきている感じがしないのです。(私は下々です)
3年も経っているのにです。
日本における気候テック勢力図は以前もご紹介した、上記アスエネさんのカオスマップが非常にわかりやすくまとまっています。
CO2の可視化、再エネ電力、太陽光、蓄電池、EV充電、EVシェア、Jクレジット取引、ESG評価、次世代燃料、メディア、素材等…。現段階でも結構な企業、スタートアップが名乗りを上げていますね。
私はカーボンニュートラルって前述のように、上から下へ降りてくるものと考えていたのですが、ひょっとするとそれは誤りかもしれない。どちらかというと盛り上がっているところとそうでないところの二極化が起きているのかもしれませんね。
いや、グラデーションのようになっているのかも。
そうだとしたらカーボンニュートラルのトレンドは生成AIのような爆発的なトレンドとは違う。ジワジワくるトレンドとなります。
ジワるトレンド。
これ先輩がいます。
「あっ…あれでしょ。」とお気づきになった方もいらっしゃるでしょう。
そうですトヨタ自動車のプリウスです。
ここで下記記事をご覧ください。
この記事に下の図がありましたのでご紹介いたします。
プリウスがはじめて市場にお目見えしたときに、ハイブリッドという全く新しい機構を備えた車で燃費も非常に良いと言うことで、話題性が高かった。
しかしそこまで売れた感じがしませんでしたが、上のグラフがそれを正直に示しています。
しかし2代目あたりからプリウスへの評価が変わってきたように思います。それはおそらく燃費という経済的メリットにおいて、優位性を確立したとか、ハイブリッドという技術が市場に浸透したというものがあったのではないでしょうか。
3代目で日本における販売台数は馬鹿みたいに伸びています。そして4代目で失速。私の知り合いにプリウスユーザーがいますが、彼に聞くところ「デザインだよ」と吐き捨てるように言われました。
この辛口の彼は5代目プリウスは速攻でオーダーを入れていました。
n=1なので有用な統計となりませんが、プリウスファンの彼が言うんですからそうだと思います。
燃費と言った経済メリットもさることながら、デザインという部分が消費者の購買行動に大きく影響を及ぼす。人間は非合理的な理由で消費活動を行うのだと改めて思い知らされました。
さて話をカーボンニュートラルに戻します。
気候変動問題に対応するために、全世界が共通して取り組む必要があるカーボンニュートラル。欧州ではガンガン推し進めているのに、ここ日本ではまだまだイマイチ。
前述のアンケート結果に
気候変動問題への具体的な行動を実際に起こしている人は少ない
その原因は気候変動問題に関する知識・情報の不足
とありましたが、これ多分違うと思います。
ちょっとググれば気候変動問題に関する情報はあふれ出るくらいあります。こんな庶人が書くNoteもあれば専門家のブログもあるし、省庁のガイドブックみたいなもの、以前紹介したYouTube動画のようなものも充実しています。
情報があるんです。そこに知恵もあるんです。
ただ関心が薄いんだけなんです。
イケてれば自ずと市場はついてくる。ただしイケているかイケていないかはお上が決めるんではなくて、市場が決めると言うわけです。
こんな文章を書いていて、マルト株式会社カーボンニュートラルチームとしては胃が痛くなってきましたのでここらで終わりにしますw
要は市場にイケてるサービスだね。イケてる会社だね。イケてる製品だね。と思わせた者が抜ける。
そうプリウスのように。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
【捕捉:政府動向について】
2023年5月にGX(グリーントランスフォーメーション)推進法が衆議院本会議で可決しました。
カーボンニュートラル実現に向けた脱炭素社会の実現を後押しする法的整備が進んでいます。
因みにGX推進法の中身は下記のとおりです。
カーボンプライシング(炭素排出への課金)
脱炭素社会に必要な技術開発のための投資支援
2033年度から、二酸化炭素の排出量の多い発電事業者に対して、一部有償で二酸化炭素の排出枠を割り当て、有償枠について、その量に応じた特定事業者負担金を徴収する
GX経済への移行のための投資を行おうとする事業者への債務保証等の支援
カーボンニュートラルに関する社会的基盤整備は着実に進行しています。