Appleがカーボンニュートラルを前面に出してきた件
日本時間の9月13日午前2時に恒例のApple新製品発表会がありました。今回はiPhone15とかAppleWatch9とかです。製品の大幅なアップデートはなく、当初の予定通りのものだったのか、市場の反応は冷ややかです。
考えてもみれば、ひとつの会社が常にセンセーショナルな発表を行えるはずもなく、むしろ今回のAppleの発表会は「まぁそうなるよね」といった感じです。
全力deスルーモードの私でしたが、一応どんなもんかとAppleのイベントページをチェックしました。すると下記のページに目につく形でありました。
ズバリ内容はApple社が取り組んでいるカーボンニュートラルに関するものです。
プロダクトのニュースは想定内でしたが、ここまでしっかりと作り込んでカーボンニュートラルを前面に出す広報を行うことは意外でした。
Appleのカーボンニュートラルに関する取り組みは有名です。しかしここまで詳細で外向けにわかりやすい情報を整備されたのは初めて出ないでしょうか。(あくまでも私の感覚です)
なので今回はこのApple社のカーボンニュートラルに関する情報発信をざっくり見てみようと思います。
Apple2030への進捗
今回の発信内容は「Apple2030」と言われるApple社独自の目標への進捗開示、成果報告。AppleWatchにおいてカーボンニュートラルを実現化したことが主なものとなっています。
それぞれの項目に詳細な資料が添付され、その情報量はかなりのものです。流石に全てを読むことはできていませんが、以下ざっくりまとめてみます。
まずはApple2030への進捗として下記5項目に関して端的な進捗報告がなされています。
素材
2022年に出荷した製品に再生素材と再生可能な素材が占める割合はすべての素材の20%。製造
300社以上のサプライヤーが、2030年までにAppleの全製品の製造に100%再生可能電力を使うことを確約。これはAppleの直接製造費支出先の90%以上に相当。輸送
Appleの輸送計画により、HomePod(第2世代)の輸送時の炭素排出量を80%削減。製品の使用
2008年以来、製品による平均エネルギー消費量が70%以上減少。回収
2022年には40,000トンを超える電子廃棄物をリサイクルした。
つまりこれらは、
これまで以上に多くの再生素材を調達することで、将来的に再生素材と再生可能素材のみですべての製品を作ります。
Appleのカーボンフットプリントの大半を占めるのは製品の製造に使われるエネルギーなので、Appleのサプライヤーは、太陽光や風力といった再生可能な資源から生み出される電力への移行を進めています。2030年までには、すべてのApple製品が100%クリーンエネルギーで作られる見込みです。
また鉄道、海上輸送、電気自動車の利用といった炭素排出量の少ない方法を優先的に採用しています。
製品仕様の際の消費電力も減少させ、頑丈で長持ちするように設計されたApple製品はリサイクルにおいても部品や素材を無駄なく再利用しています。
というふうに読み替えることができます。
Appleが作った初めてのカーボンニュートラルな製品
カーボンニュートラルな製品としてAppleは今回発表のAppleWatchを打ち出しています。どういった点がカーボンニュートラルなんでしょうか。下記3点がポイントのようです。見ていきましょう。
新しいスポーツループとペアリングしたアルミニウムケースのApple Watch Series 9またはApple Watch SEと、新しいアルパインループまたはトレイルループとペアリングしたApple Watch Ultra 2のみが対象らしいですが、サプライチェーン上の電力を100%再生可能エネルギーにしたというのは快挙と言っていいでしょう。
Apple社単独でなく、サプライヤもですから。
最後の「予想電力消費量を100%を再生可能エネルギーでまかないます」とありますが、ここの意図するところは正直私にはわかりません。誰か詳しい方がいらっしゃたら教えてください。
製品内で使用された部品を100%再利用するなどして、リサイクル率を上げていますとありますね。スポーツループも再生糸や漁網を使うなど工夫を凝らしているようです。
輸送手段に飛行機を使わず、鉄道や海上輸送を使用しているようです。またパッケージサイズを小さくして輸送効率もガッツリ上げているんですね。
しかしこれらの取り組みを全部足してもカーボンゼロとはなりません。削減しきれない分は質の高いカーボンクレジットを生み出す、自然の力を借りたプロジェクトに投資することでオフセット。実質的にAppleWatchはカーボンニュートラル製品となるんですね。
今回のApple社のカーボンニュートラルに関する取り組みの情報開示は、大変読みやすくかつ理解し易いものです。プロダクトデザインに秀でた会社らしく、その発信資料のデザイン性も非常に高く、ユーザーフレンドリーなものとなっています。
ややもすれば専門的な情報の羅列となってしまいがちなカーボンニュートラルに関する情報開示。それを読み物として昇華しています。
今後も市場から求められるであろう非財務情報開示。今回のApple社のものはお手本としてぴったりだと思います。
もちろんいきなりApple社レベルのものを作れません。ですが誰もが触れて理解しやすい情報の発信。これこそ必要とされる形ではないでしょうか。
そう。iPhoneが支持されたのはその直感的に理解できるUIと思想です。
まさにこのレポートはカーボンニュートラルの情報開示にその思想をもたらす極めて有用な事例となるでしょう。
今回も長文最後までお読みいただきありがとうございました。
追記2023.9.16
Appleのカーボンニュートラルに関するサプライヤについての記事が下記にありましたのでシェアいたします。
追記2023.9.19
WIREDの記事において詳細なものがありましたので、ご紹介致します。