SBT(Science Based Target)の話。
カーボンニュートラルへの道は
「知って 減らして オフセット」
でしたね。
その「知って」の部分で避けて通れないScope1、Scope2、Scope3。これを前回と前々回に記事にしました。
まずは自分の立ち位置を明らかにして、そこから削減しましょうという話でした。しかしScope3という領域はいきなり着手するのはちょっと…というぐらいの労力が必要です。なのでとりあえずScope1とScope2からやってみてはいかがですかと結びました。
ここまでは「知る」工程です。
「じゃあ次はいよいよ削減だな!」
「よーし手当たり次第省エネじゃ!」
「削減!削減!とっとと削減!」
逸る気持ちもわかりますが、ここでやったほうがいいことは何ですか?
そうです。計画や目標を設定することです。
例えばあなたの会社のScope1は200トン。Scope2は300トン。合計で500トンの温室効果ガスを排出していたとしましょう。
もちろんこいつを0(ゼロ)にすることが一番いいのですが、いきなりそれってできますか?
そりゃあ金にモノを言わせて、大規模発電設備投資をぶっ込んで自家発電で全てを賄ったり、クレジットを買って相殺したりすれば、0(ゼロ)になります。
以前、記事にしました。
カーボンニュートラルにはお金がかかります。
金の力を使えばいくらでも0にできます。
費用対効果的にその方が戻りがいいっていうんでしたら、さっさとそれを実行すればいいんですが、まぁなかなかそんな大胆な方法をとれる事業者さんはないでしょう。
一般的な事業者さんは温室効果ガスの可視化をした結果、こう思うと思います。
「ここからどうやって、どれだけ削減していけば世間的に合格なんだろう」
「その合格ラインがあるとしたら、それを指標に計画が立てられるのに」
PDCAってありますね。
計画→実行→測定→改善
最近はPDCAは古い!OODAだ!とおっしゃる方もいらっしゃいますが。メソッドには適性というものがあります。
目まぐるしく変化する外的要因の影響を常に受ける経営といったシーン。競争の現場である営業。製品やサービスの開発。そこいらはOODAループを回すのはいいと思います。
ですが社内統治とか内製的なことなど、一貫した流れを大切にする業務については、PDCAはまだ有用でないかと思います。
何れにせよほとんどの事業者さんは、この温室効果ガスの削減についてはじめての話です。そこに一定の指標を設けるのは、これからの取組みの具体性を持たせるために極めて重要であると思います。
前置きが長くなりました。
非常に有用な指標があります。
それがSBT(Science Based Target)です。
SBTはその名の通り、科学的根拠に基づく目標です。
?
か が く て き こ ん き ょ ?
?
こんな難しい文言が出てくると急にやる気を無くしてしまうのは私です。
なのでこういうときに私は自分で理解できるように言葉を変換するようにしています。
簡単に言いましょう。
SBTは根拠のある目標です。
その根拠というのがパリ協定が求める水準です。
以下環境省にSBTの説明文がありましたので、引用します。
はい。出てきました。パリ協定です。
私の苦手な日常とかけ離れた世界を感じる用語です。(このあたりの私の用語アレルギーについては下記記事を参照ください)
パリ協定で採択されたことはいろいろあるんですが、カーボンニュートラルに関してこれだけは抑えておきましょうというのがこちら。
世界はなぜカーボンニュートラルを目指すのかと言えば、気候変動問題をなんとかしたいからです。気候変動は地球温暖化が原因であるといわれています。なので温暖化を食い止める必要がある。そのためにその主要因であると思われる温室効果ガスを削減するんですね。
ここで大事なのはどれだけ温室効果ガスを削減すれば、地球の温暖化を食い止められるのかということです。
このパリ協定は明確な指針を示しています。
世界の気温上昇を2℃未満に抑えましょう。
そしてできれば1.5℃未満に抑えましょう。
世界が求める温室効果ガス排出量削減の水準はこういったものです。
「ではこの水準を満たすための排出量削減目標を立てれば良いんだな?」
はいその通りです。そこでようやくSBTの出番です。
SBTでは上記の1.5℃目標を達成するには事業者はScope1とScope2において、基準年から年4.2%以上削減しなければならないとされています。
なのでカーボンニュートラルに取り組む事業者さんは、まずこの指標を参考に計画を作ってください。
この場合、Scope1を8.4トン、Scope2を12.6トンをそれぞれ削減していけば良いと言うことになりますね。
2年目にはその倍の16.8トンと25.2トン。10年後には84トンと126トンって具合です。
この指標を無視して、まずはできることからと言ってちょっとの削減しかしていないと、時を経て気がついたら「到底無理だ!」なんて事態になってしまうかもしれません。そこは計画的にいきましょう。
後々大きな投資が必要となっては負担が大きすぎます。少しずつ取り組むことで着実に地球温暖化問題解決へ貢献ができます。
で、その着実な計画と取り組みをせっかくだから国際的な組織に認めてもらいたいじゃないですか。
カーボンニュートラルなんて人類史上誰もやってきていない未知の分野。
ここに取り組む関係者のご苦労と言ったら心中察しても察しきれないところがあります。
孤軍奮闘、僑軍孤進。ときには孤立無援となり四面楚歌となることもあるでしょう。
そんな中で
「あんた、ちゃんとやってるよ。」
こう言って背中を押してくれる存在がないと心が折れてしまいそうです。
大丈夫。そこにSBTがあります。
CDP・UNGC・WRI・WWFといった国際的なの4つの機関が共同で運営しているSBT。(アルファベットばっかりで正直しんどい…)
ここがあなたの真面目な取り組みと目標にエールを送ってくれます。
次回はSBTの手続き関係を簡単に記事にできればと思います。
今回もこの記事を最後までお読みいただきありがとうございました。