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視点

あの人が笑っている。
わたしではない別の人と向かい合って、
嬉しそうに笑っている。
あの人が別の人に向ける笑顔が、
わたしに向けられることはない。
向かいの人はあの人にとって、
どんな相手なのだろう。
わたしにとってあの人は、
どんな相手なのだろう。




僕はあの子が好きだ。
まだ好意は伝えていない。
あの子の話をする僕の表情は気持ちが隠せていないらしい。
それなのに、
あの子を前にすると緊張してしまうんだ。
ドキドキし過ぎて、
でも気持ち悪がられないように、
ちょっと素っ気無くしてしまう。
あの子の表情が思い浮かばない。
あの子はどんな表情をしていただろうか。




二人の視線はお互いを追っている。
けれども視線が交わることはない。
視線が合いそうになると、
ふいと外してしまう。
あんなに愛しそうに目を向けているのに。
あんなに相手の話を嬉しそうに聞かせてくれるのに。
でもごめんね。
わたしは意地悪だから、
背中は押さないよ。
二人のすれ違い、
ここから知らぬふりして観ているね。





最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。

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