顔18
ガミさんは朝一で広報課員のみの会議開催の予定を知らせた。
メールと、朝礼での口頭で。
「例の、密着取材。それに向けての広報課の体制を固めるため。このままだと、営業と企画の人達に旨味を持って行かれそうなので」
会議の目的を、対営業・企画部対策としてガミさんは広報課に呼びかけた。
自分達がそれぞれ世間にアピールしたいこと、興味本位で番組を見たにオウルズ何の感情も抱いていない人が食いつきそうな何かを提示すること。
会議へ向けて、課題も出して朝礼を締めた。
「広報課がアピールすべき、したいと感じることは、日頃の業務とどう違いがあるんでしょう」
女性社員の笹野ちゃんが、ガミさんからの課題に取り組もうとしていた。
広報として特別に何かをアピールせよと命じられても、日頃の業務がまさにそれで頭を抱える。
日頃からアピールを本職としているのならば、自分達は取材でいつもの姿を見せればいいのではないか。
しかしそれで、取材される意味と価値があるのか。
「日常を垂れ流すわけにもいかんという」
「そういうことですよね?やっぱり」
「だとしたら、俺はやっぱり、若手を皆さんにお見せしたいんやけど」
「あ、会議の」
「でも、吉野部長はそういう雰囲気じゃなかったですよね」
川多が不意に首を上げた。
「吉野部長、瀬戸さんに食いついてたし。多分、イケメン達を出して欲しいって言うことですよね」
川多の目には真っ直ぐにクエスチョンマークが浮かんでいる。
川多が抱いた疑問はごもっともで、ついでに吉野部長の狙いを初めから知っていた俺は答えも出した。
「ま、イケメンいうのは、オウルズの営業広報戦略の中では元祖の手札であり、決めの一手だから」
「じゃあ、やっぱりやらないといけないってことに」
「でも、今回の取材では『広報課に密着が入る』と」
「えぇ、はい」
「だとしたら、別にイケメン選手を出す必要はない。広報課が、カメラに映ったらいい」
「そしたらやっぱり、課長の意見を基本に考えていけばいいですか?」
笹野ちゃんが話の輪に戻り、ガミさんからの課題に三人で向き合う。
俺はここに、チームに帯同している二人の広報課員の海藤と関も入れるつもりだった。
ガミさん主催の会議の前に二人に事務所に顔を出してもらわねばならない。
「とにかく、俺は出ない」
あらかじめ、もう一度、俺は後ろに控えていると宣言しておく。
背後の真相と俺の本心も合わせて。
「ほんとに、出ないんすか?瀬戸さん」
川多の首が傾いた。
「俺は、そういうのはもうええ」
「もういい……」
「ええもん。マジで」
ちらりとガミさんを見る。
ガミさんはいつも通り、空咳をして俺を笑っていた。