0.1mm→620mm

金井大道具にて
注射器片手にふと外を見たら
民家の塀の向こうから、大きさ畳8枚分くらいのピカピカした蟹が、
まるで朝日の様に、後光を背負いながらゆっくりと昇ってきた。
そこへ小学生が自転車に乗って塀の前を通りかかり、立ち止まって、
後ろの方から来る友達をおおごえで呼んでいた。
そうしたら蟹は、あぶくを盛大にぶくぶくと吐き出し、
下にいた小学生は泡だらけになってしまった。
でも、そんなおかしな光景はきっと私以外には見える筈が無いので、
小学生達は何も知らずに去った。

あああと手首が逃げてゆく幻覚と

そういう一年前の今日が、思えば妊娠0週1日で、始まりだったんだ。

(そんな知識無い方の為に‥やった日イコール妊娠1日目、ではなく、
実際そういう行為に及ぶのは、妊娠何週目かの、もっと後の事です。理には適ってるが色々おかしな計算なのです。)

私はあの朝、太陽と同時におきて知らない電車にのってコーヒー飲んで、ハイエースのって作業着無くて花柄のままで遅くまで働いたのだった。帰りは歩いて見知らぬ街探検、と思ったのに、結局は誰かの車にのって、しのちゃんの横にぎゅうぎゅうに詰まって、ヘッドホン耳につけて会話遮断して帰ったのでした。
普通の一日なのにもう生き物の要素が自分の中で成長を狙っていたとは。しかもその極小は外の世界でいまでは人格をもっている
あああおかしい。

2006

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