腸が動き出さない
腸閉塞で、イレウスチューブを入れたけど良くならなかった話です。
前回の続きですが、特に読み返さなくても大丈夫です。
そんなこんなで、開腹手術をしたわけですが、開腹手術さえすれば全部終わると思っていたら大間違いでした。
手術は何とか無事に終わったものの、私の腸は動くことを始めませんでした。
なんでも、あまりにも長いこと腸閉塞を繰り返しすぎて、腸がガッチガチに固まってしまっていたそうです。
ワラスボみたいにグニャグニャちゃうんかい。
通常であれば腸は数日で自然に蠕動運動を始めるそうなのですが、私の腸は時間がかかるよ、と言われました。
「まあそんなもんかな」「盲腸の手術はウン年前の学生のときだから、ウン年物のガチガチだからな」と思っていました。
結果として、腸が動き出すまで一ヶ月半かかりました。
長すぎ。あまりにも長すぎ。
そして、同じような経験した方いなさすぎ。
「たくさん歩くと腸の蠕動運動にいいですよ」と言われ、毎日毎日病院の廊下を朝昼晩一万歩近く歩いていた私。
蠕動運動を促す薬と栄養の入ったでっけえパックの点滴と、イレウスチューブのこれまたでっけぇタンクをゴロゴロ転がしながら廊下を何度も往復していました。
そんな患者はあまりいなかったので、受け持ちの看護師さん以外にも顔を覚えられるほどでした。そんなに歩いたのに、私の腸はウンともスンとも言わなかったのです。
本来なら腸が動き始めて、飲み物が飲めるようになって、流動食が始まって、重湯になって、お粥になって、という頃なのに、私はまだ水すら飲めていませんでした。
一万歩歩いてはレントゲンを撮り、検査技師の方と担当医の顔を曇らせ続ける生活が2週間目に突入したあたりで、「あれ、、これ、、もう動き出さないとかってことある、、?」とかなり不安になり始めた私は、Twitterやらnoteやら色んなものから先人の経験談を探そうとしました。
同じように、長くかかったけど治った方の話が聞きたかったのです。
でも、こうした腸閉塞の経験談ブログってあまりないんですね。
癌サバイバーの方や、クローン病と闘っている方の体験談はたくさんありました。
私はすがる思いで、病気問わずいろんな方の体験談を読みました。
病気こそ違えど、そうした方たちの経験談にはとても共感するところと、励まされるところがありました。
その頃には既に入院2ヶ月になろうかとしていた私は、家族や友人に「辛いよね」「きっとよくなるよ」と言われると無性に腹が立っていました。
「なったことがないくせに」「お前の腸は動いてるくせに」「良くなるかどうかなんてわかるわけないだろ」と強く思っていました。
わかりあえるのは(一方的に)、入院経験者だけだと思っていました。
そして泣きながらまたネットの体験談を読み耽りました。
時には看護師さんに「同じように、腸が動き出さなかった人はこれまでいましたか」とも聞いてみました。
「2人だけいたけど、重度の身体障害のある子と、80代のおじいちゃんだけ」と言われました。それも、おじいちゃんは私の先である、飲料の摂取までは進んでいたというのです。
いよいよ私は絶望し、ベッドの上で泣き暮らし、一万歩歩くこともやめました。
その頃にはどの担当医も、歩くことが蠕動運動に良いとは言わなくなりました。
そして、「こうした腸閉塞に劇的に効くものはない」という言い方に変わりました。
何がきっかけになったかはわかりませんが、そうして歩くのも辞め、ベッドの上で泣き暮らし、このまま病院で点滴に繋がれて一生暮らすのかと諦めた頃に、腸は急に動き出しました。
諦めたことが、よかったのかもしれません。
そこからも腸はかなりゆっくりしか動かなかったためなかなか先のステップに進まず、飲み物を飲んではレントゲンを撮り、飲み物に食物繊維が入ってはレントゲンを撮り、という生活をしばらく続けました。
退院の日まで重湯だったけど、今日のご飯はカフェラテとパンです。
なので、もし、腸閉塞の手術をして、腸が動き出さなくて、私と同じように経験談を調べている人がいるなら、私は2ヶ月以上かかったけど動き出しました、とお伝えしたい。
たった数ヶ月の入院で、世の中にはもっと辛い人もいるけど、今同じ気持ちで腸閉塞で苦しんでいる人がいたら、わかりますとネット越しに肩をさすってあげたいです。私は入院中、先が見えないことが本当に怖くて辛かったので。
腸閉塞に完治はないので今も正直再発が怖いです。次にまた同じ思いをしたら、私は毎日生きていることを選び続けられるかわかりません。
腸閉塞ごときで申し訳ないのですが、それくらいしんどかった。
なので、自分の備忘録のためにも残します。
同じ腸閉塞の方も、そうじゃない病気の方も、みんな辛いけど、頑張って生きていきましょう。
※病院での説明や症状、進行具合については個人差がかなりあるかと思います。
あくまで私一個人としての体験談なので、そんな人もいたのねと参考程度にしていただけたら。