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2025/2/2 南岸低気圧演算 離岸傾向への変化

※本記事は1/29に作成しています。現時点で南岸低気圧通過前ですので、実際にどのような結果になるかは現在分かりません。
数日前から2/2に南岸低気圧通過の演算が現れ、気象界隈は盛り上がりを見せていますが、最新の演算では低気圧がより関東の南を通過し、降水域が十分にかからない演算に近づいています。上空の風の場から、この演算変化は理にかなったものと言えます。今回はそれぞれの演算を比較していきます。


1. 1/26 21時初期値の演算

Fig.1.  2/2 15時の前3h降水量・海面更生気圧
1/26 21時初期値
Fig.2.  2/2 15時の500hPa高度・850hPa気温
1/26 21時初期値

まずは多くのモデルで関東の陸地近くを通過する演算(以後,接岸演算)であった1/26 21時初期値の大気場を見ていきます。演算によって低気圧の経度方向の位置が異なりますが、500hPa面の高度より、南岸低気圧が存在する位置付近では、正の曲率(トラフ型の曲率)が見られ、南西-北東方向に等高度線が向いています。地衡風の関係により、この地域では南西風が吹いていると考えられます。低気圧がこの地衡風にのって北東方向に流されるため、接岸演算となったモデルが多くなりました。
これを基準として、最新の演算を見ていきます。

2. 1/28 21時初期値の演算

Fig.3.  2/2 12時の前3h降水量・海面更生気圧
1/29 9時初期値
Fig.4.  2/2 12時の500hPa高度・850hPa気温
1/29 9時初期値

1/29 9時の演算では、関東の南を離れて通過する演算(以後,離岸演算)が多くなり、ICONというモデルでは降水域が沿岸部しかかからない状態となっています。1/26 21時初期値の場合と同様に、500hPa面の高度にちゃくもします。Fig.2.と比べるとその差は一目瞭然です。等高度線がスーーーーーッと真っ直ぐに引かれている演算が大半を占めます。GFSやCA GDPSでは、むしろやや北西-南東方向へ伸びています。先ほどの地衡風の関係で言えば、ほぼ真東の風(これを気象用語でゾーナル,zonalと言います)が吹いていることになります。これでは、低気圧が北側に進されるはずもありません。
九州沖における低気圧の南北位置には大きな変化はありません(やや1/29 9時初期値の方が南へ下がっている)。その後の風の流れが低気圧の進路に影響していたということです。なぜこのような変化が起きたのでしょうか。Fig.2.のGFSとECMWFに表した赤円内を見ると、北側にはトラフ中心部分の一部が確認できますが、Fig.4.では不明瞭になっています(特にGFSで顕著)。このことから、トラフの南側への張り出しが弱くなった、もしくはトラフ張り出しのタイミングが遅れたことがこの演算変化のバックグラウンドとして考えられます。

3. まとめ・感想

南岸低気圧好きの皆さんとしては泣きそうになる演算変化ですが、不自然な演算などではなく、しっかりの理にかなった変化であることがお分かりかと思います。
ここからまた接岸演算に戻すには、またトラフの張り出しが明瞭になり、北東方向の地衡風が吹かなければなりません。再びこの変化が起こることは考えにくいので、このまま離岸演算になるのではないかと個人的には思います。
奇数年くんの影は確実に近づいております。

※本記事の図にはWeather Models(https://weather-models.info/index.html)を使用しました。


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