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スーパーパワー


元来、不思議なことが大好きだ。
なんとなく、子供の頃から「自分は人と違いたい」と願っていたふしがある。
ある日突然、スーパーパワーが私にもあれ!と思っていた。
(月に代わってお仕置きできる身体能力が欲しかった。)

数ヶ月前に妹に誘われて占いに行った。
占いが好きなくせに、対面で、いわゆる不思議な力を持つとクチコミだけで広まるような、「商業的ではない」人に「観て」もらうのは初めてだった。
(横浜の中華街で占って貰ったことはある)
(社長になるために生まれてきた人だと別々の店の占い師に言われた)

話が逸れた。
妹が友達から紹介されたからって見て貰いに行くと言いのを、「ガチで不思議な力のある人を生で見てみたい」と言う、興味と怖いもの見たさで、ついていく事にした。
出迎えてくれたその人はどこにでも居そうな風貌で、
爽やかで明るい笑顔の若い男性だった。
なんとなく、そういう方々はそういう雰囲気のある衣装とか着てるのかと思っていたので拍子抜けした。

案内された部屋で妹と二人並んでその人と対面で座ると、さっそく悩み相談が始まった。
妹が悩みを話している間、私はできるだけ気配を消し、瞑想しながら的確な助言をするその人について考えていた。
タロットのようなオリジナルなカードと霊能力を使用して、答えを導く人だった。
何かみえるのなら、どんな見え方なのかと興味津々だった。
(脳裏にイメージなのか、実写なのか…とか)

妹の相談が終わり、妹はなんとなくスッキリ納得し解決出来たような顔になっていた。
心なしか、来た時より表情が明るい。

私の番になり、亡くなった両親の事や、その頃の不運について知りたくて
「悪い憑き物がないかと、守ってくれている人は誰なのかが知りたいです!」
と尋ねた。
妹が横から「それ私も知りたい!」と参加する。

カードを使わず、しばらく目を閉じ妹に向かって
「強い武将だったご先祖さまがおられます。それから金色の龍がいるけど、まだ力を発揮できずにいます。あなたの進みたい方向が定まれば、その龍が力を発揮してくれます」との事。

(えー!うらやまー。龍とかめっちゃかっこいいやん!最強やん!無敵やん!応援してくれるとか最高やん?)
(うちの先祖は農民ばかりかと思ってたけど武将おったんやー!)などと謎のテンションになっていく。

「あ!じゃあ、私にも…?」
と尋ねると、「~にも?」に若干被せるように、
手のひらで私を指しながら「…霊感…ありますよね?」と優しい顔のまままっすぐ見つめられる。

パチパチと瞬きの音が聴こえそうな間のあと、その目を真っ直ぐ見つめ返しながら「ないです。」とキッパリ言うと
「いや、持ってるんですけど開眼というか、覚醒してないみたいです」と微笑む。

(…なんそれ!)

「本当に? 霊感欲しいくらいですけどないです。
あ、じゃ…じゃあ、私、どうしたら開眼…しますか?」
「祈ってください。力があることを知って受け入れてください。否定しているから分からないのだと思います」

(だからなんそれっ!!笑)

驚愕の事実でしかない。
私にもスーバーパワーがあるらしい。
「あの、では、霊感あるないは置いといて…私を守ってくれているご先祖さまとかはどなたでしょう?」とワクワクしながら尋ねた。

(じーちゃんかなぁ?ばーちゃんかな?、あ、ばーちゃんはまだ生きてるわ。笑
妹には武将と金龍よ?霊感あるらしい私にはなんか、こう、すごーいの守ってくれてないかな♪)

「…いないですね…笑←」

(え?)

「ご自身の力で守っていらっしゃいます。笑←」

(ええ?!)

「え?あれ?ちょっと笑ってますよね?笑 私誰も守ってくれてないんですか?笑」つられて笑いながら尋ねると
「そうですね、ご自身の直感がとても優れていらっしゃるので、ご自身で回避というか、守っていらっしゃったようです。」

となりで妹爆笑
(なんか私だけ違うくない?笑)

「…私…まさかのセルフでディフェ~ンス?」
「…そういうことですね笑笑」

(…なぁ~んそれー!?)

守られていたかった…
せめて力はなくとも子供の頃可愛がっていた猫とかチョコンと肩にでも乗ってて欲しかった。
誰か守れよぉ…私の背後がら空きやん
(私にも龍あれよぉ~)

ひとしきり笑ったあと気を取り直して
「あの、両親が私たちに伝えたいことがあれば知りたいです」
と真面目な顔でたずねると、すぐに瞑想するような体勢で妹の方を向き目を閉じたまま、言葉の意図を汲み取るかのように首をかしげ
「…なるようになる…から流れにまかせるように…とお父様が言ってらっしゃいます。お母様は…食事?かな?栄養?を心配されてます」と。

私と妹は息を飲んだ。
さっきまでの私のセルフディフェンスのインパクトのせいで霞んでいたけどこの人、やっぱりホンモノなんや!と思った瞬間だった。

一言も両親の事は話してなかったし、この人の知るはずのない、生前の両親が妹に対してよく言っていた口癖だった。

妹は涙目になって、なんかじわ~っと噛み締めていた。
私も急に両親が恋しくなる。
(お父さん…お母さん…
私のことも心配めっちゃしてるんだろな…)

私も感動で涙目になりかけていた時、今度は私の方を向き、また瞑想を始め、私に対しての両親の言葉を伝えてくれようとしてた

父亡き後、私はわりと大変だった。(と思っている)
仕事の引き継ぎや取引先への挨拶回り、父の分の確定申告とかその他の書類整理…それから後から出てくる父の骨董品や釣り道具を欲しがる知らないおじさん達の対応。ほんと、メンタル落ちるし頭割れそうだったし、今まで自分の生きてきた世界とは違う土俵に立ってしまったから、ほとんど手探りでやらなきゃいけなかった。

それが終わったかと思えばすぐ、愛猫が逝き、翌年また今度は母が逝った。
また、いろんな手続きに追われて、最近やっと落ちついてきたばかりだ。

なので、亡くなった両親からの言葉が聞けるなら
(どんな労いの言葉が…)とうっすら期待した。


「…ん?…んん?…」
瞑想をしながら意図を汲み取るかのように、しばらく右に左に首をかしげる。
何故か眉間に皺がどんどん深くなる。

(うそやん 笑 もう、さっきと様子が違うやん 笑)

「…部屋…部屋?…かな?あ…ですね…掃除…片付け…??」

ブハッ!!
たまらず妹と2人同時に吹き出し笑いだした。
その声で目を開けたその人は、まだ首をかしげながら

「…んと…なんか、部屋の片付けをするように…?との事みたいで…要らないものは処分するようにとおっしゃってます…(なんかわからないですけど…)」

もう、心当たりがありすぎて鳥肌が立った。
それこそが普段から父の私への口癖だったし、両親亡き後、2人の部屋は足場のないほどの物置と化していた。
このままではゴミ屋敷まっしぐらだ、何とかせねばと思っていた。

「お父さ…ん…笑 死んでもなお、私に片付けろって言うんや…笑 感謝とかさ、心配とか、アドバイスとかじゃなくてさ…もう、泣こうかな笑
なんか…散らかしてごめんね…笑」
鳥肌立ちながら泣き笑いだった。
「お母様は…ちょっとニュアンスが汲み取りにくいのですが…もっと自分の力を信じて好きなように進みなさい…的なことを仰ていて、あと、もっと施し…かな?それをしなさいと仰ってます」と言われた。

母っぽい気もするし、伝えてくれたその人もよく理解できないみたいで、イマイチピンとは来ないけど、自分を信じて進め!みたいなことは仕事のことなんだろうなぁと、なんとなく心当たりもあった。

もうひとつ、最後に鳥肌と冷や汗がでたのは、
私をしばらく見ていて、ふとその人が何か気づいたかのように

「あれ?…赤ちゃん…?」と首を傾げる。
「あなたの右手の親指を赤ちゃんの手が握っていますね、供養なさってください」
と突然、何事もないかのように話しだす。
「悪い物ではなくて、あなたを頼ってるみたいですね、血の繋がりのある肉親の水子さんですね」という。

私には3つ心当たりがあり、まだ着床したばかりで亡くした子が2人いる。もう1人は兄だ。
妹はまた私をみて、「ねえ、この人…まじでやべぇよ」の顔をしていた。
私の子は亡くしたあと、水子供養をした。

兄は、両親の最初の子で、臨月だったけどある日突然、心臓が止まってしまってしまって死産だった。
おそらく、当時は死産だと葬式などはせず火葬だけしかしてなかったのか、位牌もないので仏壇には両親しかいない。
母は常に小さなお地蔵さんを側に置いて、線香をあげてよく拝んでいたので、恐らくそれが兄の位牌のようなものだと思う。
両親が続けて亡くなって、お地蔵さんのことをすっかり忘れていた。

「それは、兄…でしょうか?」
と尋ねると、その人は考えるかのように、対面して最初に私が混ぜて引いていたカードをみて「そうみたいですね」と1枚のカードを指す。
「兄弟」の意味があるカードだった。

「ご兄弟…血縁の方なのは間違いないですね。ただ頼ってらっしゃるだけなので、悪いものでは無いので安心されてください。供養はなさってあげてくださいね」と優しく微笑む。

そこでまた急に母の言葉を思い出した。
「施してあげてね…」

「あぁ、そういう事か!」とその人も点と点が繋がったようだった。

ゾゾゾ… 
鳥肌が頭頂から足まで全身立ったのは初めての経験だった。
そういう事だったのね!
お母さんは兄ちゃんの供養のこと言いたかったのかもしれない。

スピリチュアルとはこのご時世、よく聞くコトバだけど、体験すると、とんでもなく人の持つ可能性を感じた。
見えているだけの世界で生きている事は本当は頼りない気さえしている。

なんやかんや、妹も私もテンション上がったり笑ったり、鳥肌がたったりしてとても疲れた日となった。

それからしばらく経った今も、私に霊能力が開花する様子は微塵もなく、兄のお地蔵さんは仏壇(両親)の近くに並べて拝むようにしている。
















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