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『フリー・ガイFREE GUY』 にコロサレル!

『デッドプール』『ヒットマンズ・ボディガード』によって完全に復活を遂げたRyan Reynoldsライアン・レイノルズの新たな代表作になりそうな今作品。
今作を観て感じた『竜とそばかすの姫』との共通点。
そして細田作品にはなくて今作品にはあった素晴らしい点。
今回はそんな所をつらつらと書いていきたいと思います。

※以下ネタバレしているので未鑑賞の方はご注意ください!

あらすじ。

ルール無用・何でもありのオンライン・ゲーム<フリー・シティ>のモブ(背景)キャラとして、平凡で退屈な毎日を繰り返すガイ。ある日、彼は新しい自分に生まれ変わるため、ゲーム内のプログラムや設定を完全に無視して自分勝手に立ち上がる―。ありえないほど“いい人”すぎるヒーローとして。ゲーム史上最大の危機が迫る中、はたしてガイに世界は救えるのか…!?
ー公式HPより抜粋

何度も観たくなる仕掛け。

本作の監督はNetflixドラマシリーズ『ストレンジャー・シングス』『ナイト・ミュージアム』シリーズのShawn Levyショーン・レヴィ
脚本は『レディプレイヤー1』のZak Pennザック・ペン。という最強タッグ。

エンドロールを見たときにビックリしたのが関わっているスタッフの数の多さ!
そりゃあのVFXやCGを作るには途方もない数の専門スタッフが必要ですよね。
モブやバックグラウンド(背景)をテーマにしているだけあって、車がクラッシュしたり、爆発したり常に背景で何か起こってます。非常に芸が細かい。

今作品のもう一つのお楽しみは様々なパロディ要素。
ゲームを題材にした映画なのでフォートナイトロックマンなどなどゲームからのパロディもたくさんありますが、なんと言っても最大のサプライズはスターウォーズMCUのネタ。
このプランは監督のショーン・レヴィと主演のライアン・レイノルズが20世紀FOX(現:20世紀スタジオ)ディズニーに買収された時に思いつき、ディズニー会長のBob Igerボブ・アイガーに「スターウォーズやMCUの何か使うことは可能でしょうか?」と打診した所「なんでも使っていいよ!」と返答があり実現したとの事です。
20世紀スタジオ、ルーカスフィルムマーベル・スタジオがディズニー傘下だからこそ生まれた奇跡のパロディ(というよりももはやコラボ)。
さらにキャプテン・アメリカの盾が登場するシーンでは本物のキャプテンChris Evansクリス・エヴァンスもカメオ出演。
ここら辺は映画ファンにとっては堪らない演出ですが、本当に小ネタが多すぎて1回観ただけでは把握できない可能性が高いです。

「こんなシーンあったよね!」「○○の△△でてたよね!」と人が人に伝播してまた観たくなる。
これこそ今作品が北米でヒットし続けている理由だと思います。

※ちなみにコロナ禍になってからディズニーやワーナーは公開と同時に配信も実施している作品がアメリカではほとんどで「公開2週目の大幅なダウン」に悩まされてきたが、今作品は「45日間の劇場独占公開」のためヒットしているという見方もあるようです。


ただの傍観者から脱け出せ!

冒頭に書いた『竜とそばかすの姫』との共通点。
それはネットの世界(今作はオープンワールドのオンラインゲーム)を通した脇役でしかなかった主人公の成長物語。
竜とそばかすの姫の主人公・すずは現実世界では冴えない田舎の高校生だったけどネットの世界では誰もがが知っている歌姫ベルになれたし、それが虐待にあっていた兄弟を救う事にも繋がっていました。
そして今作の主人公・ガイ(Ryan Reynoldsライアン・レイノルズ)もただのゲームのNPC(モブキャラ)として毎日同じ事の繰り返しの生活だったけど、ある時そのループから抜け出して一目惚れしたモロトフ・ガール(Jodie Comerジョディ・カマー)のために、さらには世界を救うために奮闘します。
両作品とも「あなたの人生においてはあなたは脇役じゃなくて主役なんだよ」という強いメッセージが込められているのです。

しかし異なる点もあってそれは作品における“脇役”への焦点の当て方。
すずもガイも彼らの彼女らの世界では“脇役”なんだけど、その作品においては“主役”なわけで他に脇役がいるわけじゃないですか。そこの描き方が決定的に違います。
詳しくはnoteに書いてるのでそちらを見て頂きたいのですが、

竜とそばかすの姫では“脇役”はやはり“脇役”であって彼らの物語を生きる事はありません。
ただの“傍観者”です。

しかし今作では作品の“脇役”であるガイの親友で警備員キャラ・バディ(Lil Rel Howeryリル・レル・ハウリー)もカフェ店員キャラ・ミッシー(Britne Oldfordブリトニー・オールドフォード)も美女キャラ・セクシー(Camille Kostekカミール・コステック)も誰もが自分の物語を生きようとします。
“傍観者”だった立場から脱け出して“当事者”として一歩踏み出そうとする姿が描かれます。
たしかに“主役”のガイと比べるとそれは映っている時間も短いし結局は“脇役”でしかないのかもしれない。
でもそれはこの『フリーガイ』というガイの物語に置いてであり、少しでも能動的に動き出した彼ら彼女らはたしかに自分の物語を歩き出したんだと観ている側に強く印象付けられました。

竜とそばかすの姫の中でおそらくこれがメインテーマではなかったのかもしれません。(というか観ていて何がメインテーマなのかわからなかったですが…)
しかし観ていてすず(と母親)以外のすべての登場人物が全編を通して傍観者=受動的であり、そこに大多数の観客がモヤモヤしたのは事実。
細田守の過去作『サマーウォーズ』では“脇役”である陣内家の家族やネットの向こう側にいる世界中の人々が能動的に動いてただの“傍観者”から脱け出していたというのはとてもアイロニックでした…)
対して今作で主人公はもちろんそれ以外のモブキャラも少しだとしても、みんなが一歩踏み出す力強さは観ていてとても爽快に映りました。


AIとの向き合い方。

あるネット空間に突如AIが一つの人格(アカウント)を得て登場するという設定自体は細田守の名作『サマーウォーズ』に近いです。
ただしサマーウォーズのAI“ラブマシーン”がゲーム感覚で人類を滅ぼそうとする悪質でネガティブなAIだったのに対して、今作のAI“ガイ”は優しさで溢れたポジティブなAIでした。(むしろ今作では人間の方が凶暴で野蛮な存在として描かれていました…)

思えばラブマシーンを初めとして映画の世界に出てくるAIはほとんどが人間に対してネガティブな存在として描かれています。
『2001年宇宙の旅』の“HAL”、『ターミネーター』の“スカイネット”、『アイ,ロボット』の“VIKI”、最近だと『ミッチェル家とマシンの反乱』の“PAL”などいつも人間とAIは敵対する関係でした。
だから私たちは自然と頭にインプットされているのかも知れません。
「AIは危険であり、いつか暴走して、人間に害を与える存在である」と。
しかしもしもガイのような人間と共存する事を望むAIが現れるなら、未来は大きく変わるのではないかと思うのです。
そこには私たちが想像するよりもはるかに美しくて、素晴らしい未来が待っているのかも知れないと。


映画にコロサレル!

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