『第75回カンヌ国際映画祭』 にコロサレル!
先日終幕した2022カンヌコンペのお話を少し。
まずはコンペの各賞からおさらい。
コンペ部門各賞
<パルムドール>
『Triangle of Sadness』Ruben Östlund(リューベン・オストルンド)【2.5/2.83】
<グランプリ>※ダブル受賞
『Close』Lukas Dhont(ルーカス・ドン)【2.4/3.27】
『Stars at Noon』Claire Denis(クレール・ドニ)【1.9/2.77】
<監督賞>
『Decision to Leave』Park Chan-wook(パク・チャヌク)【3.2/2.83】
<脚本賞>
『Walad Min Al Janna』Tarik Saleh(タリク・サレ) 【2.3/2.67】
<審査員賞>※ダブル受賞
『EO』Jerzy Skolimowski(イエジー・スコリモフスキ)【2.7/4】
『Le otto montagne』Charlotte Vandermeersch(シャルロッテ・ファンデルメールシュ) & Felix Van Groeningen(フェリックス・ヴァン・フルーニンゲン)【2/3.3】
<女優賞>
Zar Amir Ebrahimi(ザル・アミル・エブラヒミ)『Holy Spider』Ali Abbasi(アリ・アッバシ)【2/2.69】
<男優賞>
Song Kang-ho(ソン・ガンホ) 『Broker』 是枝 裕和【1.9/2.43】
<第75回記念賞>
『Tori et Lokita』Jean-Pierre Dardenne(ジャン=ピエール・ダルデンヌ)& Luc Dardenne(リュック・ダルデンヌ)【2.7/2.75】
※名前はカタカナのブレがあるので英語でも表記し、以降はカタカナで表記します。
※【】内は【SCREEN/ICSfilm】という2つの批評家による星取り表(評価)の平均値です。(ちなみにSCREENは4点、ICSfilmは5点満点)
批評家から好評だった作品。
【】内の通り受賞作品の中でイエジー・スコリモフスキとパク・チャヌク以外は批評家からの評価の低い作品ばかりでした。(スコリモフスキ=【6.7】パク・チャヌク=【6.03】で、この2作品以外は2つの合計値が【6】以下。)
ちなみに受賞作以外では、
『RMN』Cristian Mungiu(クリスティアン・ムンジウ)【2.5/3.54】
『Crimes of the Future』David Cronenberg(デヴィッド・クローネンバーグ)【2.6/3.44】
『Pacifiction』Albert Serra(アルベール・セラ)【2.6/3.68】
『Showing Up』Kelly Reichardt(ケリー・ライカート)【2.7/3.64】
あたりが2つの合計値が【6】を超えて批評家からの評価が高水準な作品でした。
今回のカンヌ国際映画祭で感じたこと。
まず前提として私は今回のコンペ作品は一つも観ていないし、もちろんカンヌにも行ってません。その事をご理解の上で読んでください。
日本から参加していた是枝監督の『ベイビー・ブローカー』は見事に男優賞に輝きました!(ちなみにある視点部門の早川千絵 『PLAN75』はカメラドールのスペシャルメンション=新人特別賞に)
昨年カンヌについて書いた時にも少し触れましたがその後のヴェネチア国際映画祭、そして今年のベルリン国際映画祭と3大映画祭である傾向がありました。
それは3映画祭とも“80年代生まれの女性監督”が最高賞を受賞した事。(Julia Ducournauジュリア・デュクルノー、Carla Simónカルラ・シモン、Audrey Diwanオドレイ・ディワン)
これはトレンドとして顕著に出ていたため今回も80年代生まれの女性監督という点でLeonor Serrailleレオノール・セライユやシャルロッテ・ファンデルメールシュ(フェリックス・ヴァン・フルーニンゲンと共同監督)に注目していたのですが、結果は上記の通り。
まーそう簡単にはいきませんね。
しかし相変わらず批評家と審査員の見解はどんどん離れていっているように感じます。
そもそも観るプロである批評家と自分が制作に関わっている審査員(監督や役者)の視点が違うのは当然といえば当然ですし、いろいろな視点があってしかるべきだとも思います。
それでもある批評家の言葉を借りれば、
「受賞結果(審査員の判断)は芸術性や実験性ではなく、映画祭にありがちなわかりやすい社会性や共感に転がりそう。」
批評家からの評価が絶望的に低かった昨年のパルムドール作品『TITAN』があまり肌に合わなかった私からすると今回の受賞作品たちも...(しかし私はリューベン・オストルンドのビッグファンである事はここに書き記しておきます!)
唯一の希望は批評家からの評価が抜群に高く審査員賞を獲得したイエジー・スコリモフスキの『EO』。
「圧倒的な映画体験」と絶賛の嵐だったのでこれは今から非常に期待!
そしてこういう風に自分自身で鑑賞して答え合わせをしていく事こそが映画祭を追う一番の楽しみ方でもあるのです。
また来年のカンヌが終わった頃にでも。
映画にコロサレル!