エリザベス
どれだけ興味がない男でも諦めずに毎日「おはよう」と言われていたら、初めは無視していても1~2週間もすれば「おはよう」と返したくなる。その前に感じ悪いから挨拶くらい普通に返せよ自分!て感じだが。笑。遠い昔、そんな男の子がいた。全く興味がなかったから、向こうから歩みよって来られても仲良くは出来なかった。変に勘違いされて期待持たせても嫌だし。
でも、途中で考えが変わった。私が無視していても、何も変わらず毎日声をかけてくる。とりあえずしつこく諦めずに私と仲良くなろうとしてくる。段々この人って実はメンタルめちゃくちゃ強いのでは…?と思ってきて、興味が湧いてきた。いやぁ、人間の気持ちって本当に都合よく変わるね!笑。
まぁ仲良くしても実際好きになる事はなかったし、数少ない男女の友情とやらが成り立つ1人にはなった。彼は今でも私に優しい。気遣ってくれるのは分かるし、難しいワガママをいとも簡単に聞いてくれる。彼の諦めないと言う精神は見習いたいものだと思う。勝つまでやる、だから勝つ。と言った感じ。その後、彼は見事に成功した。なんならいつの間にかビジネスの本まで出している。笑。
いつかの私の誕生日。当日になって急に彼に電話をした事がある。「誕生日なの。今日。おめでとうと言ってよ。」確かこんな感じだったと思う。彼は食事に行こうと誘ってくれた。仕事の途中だから、長居は出来ないけどと。私はおめでとうと言って欲しかっただけだったからびっくりした。でも、彼と会って喋りたかったし少しならと行く事にした。
夜景の見える値段のたっかい焼肉屋さんに連れて行かれて彼らしいなと思った。これは私の完全な偏見だけど、成り上がった人はこういう所を好む人が多いと思う。高いお肉はやっぱり美味しかった。美味しかったけど、何か違うと思った。気分はいいのに、何だか悲しくも感じた。上手く説明出来ないけども。
「えりちゃん、本当に誕生日おめでとう。」彼は私のことをまいちゃんと呼ばずにえりちゃんと呼ぶ。前にどうしてなのかと聞いたら、初めて出会った頃私はツンとすましてて僕のことなんか見えてないかのように振る舞っていて、プライドが高そうでまるで女王かのようだったと。笑。女王と言えばエリザベス女王くらいしか思いつかないから、エリザベス。エリザベスは長いし呼びにくいからえりちゃんなんだと。なんじゃそりゃ。笑。
でも私は彼に呼ばれるえりちゃんが何だかんだ気に入ってる。帰り道、彼はベンツの後部座席からでっかい薔薇の花束を渡してきた。あぁ、これも何だか彼らしいなと思った。「ありがとう。」と彼の車が消えるのを見送って、私は当時付き合っていた彼の元へ。そして薔薇の花束は花びらをちぎってその日、彼と一緒に入る湯船の中へ。ロマンティックな演出の出来上がり。笑。
私、家に花を飾るような女じゃないのよ。ごめんなさいね。