Day 2
2日目、初日で移動手段を理解したので、早速Eiji Salonに突撃しようと計画した。
住所のメモを確認して地図にマルを付けた。
叔母には弟子入りしに来たとは言っていない。
ただ観光しに行くとだけ告げていた。
余りに無鉄砲で壮大なプランが恥ずかしくて誰にも話せずにいた。
どこどこのお店が美味しいなど、細やかなアドバイスもくれたが全然頭に入って来なかった。
サロンに早く行きたくて仕方がない僕は、話の長い叔母がトイレ中にこっそりとアパートメントを後にした。
バスを駆使して辿り着いたサロン前。
今でも憶えているけど、不思議と全くもって緊張していなかった。
勢いは勇気をもたらす。
サロンの扉を開くと、すらっと背の高いブロンドヘアで女優のような女性がレセプションに立っていた。
英語を全く喋れない僕は「ミスターエイジ、ミスターエイジ、アイムフロムトーキョー」とだけ繰り返した。
困っているレセプショニストをヘルプしようと、日本人の男性スタイリストが来た。
「日本から来ました、神田と申します。
エイジさんに弟子入りをお願いしたいです。今日、お会い出来ませんか?」
男性は怪訝そうに僕を見て一言。
「無理だと思うよ。アカデミーの生徒なの?」
アカデミーとは、何ですの。
「忙しいから、帰って。」
いや帰れねーよ。
そこから15分くらいエイジエイジと連呼したが誰も取り合ってはくれなかった。
最後、女性スタイリストに追い出される形で、僕の第一回エイジサロン突撃リポートは幕を閉じた。
このやり取りは、延べ3日間に渡り続いた。
3日目に至っては、ドアの中にすら入れてもらえなかった。
世界中から技術習得を志願してアカデミーに入門するスタイリストが絶えない、「NY Dry Cut」
その門を、無礼にもノーアポで叩いた自分を恥じた。
勢いだけでは、どうにもならない。
無計画な自分の阿呆さに殺意さえ感じた。
意気消沈した僕は、3日間何も食べれずにいた。
マンハッタンの街は高層建築がとにかく多い。狭い島内にあれだけの高層建築が並ぶと、圧迫感を感じざるを得ない。
メリットがあるとしたら、スパイダーマンが空中で糸を飛ばして移動し易いことだけだろう。
スパイダーマンはNY以外ではあまり活躍出来ないのではないだろうか。
ビルとビルの隙間から強烈に差し込む光が眩しかった。セントラルパークに逃げても、雄大な敷地に独りポツンといると余計に寂しさは増した。真冬のニューヨークは寒いを超えて痛い。耳が千切れるような寒さの中、パークのベンチで途方に暮れていた。時折りちらつく雪が早く帰れと連呼しているようにも感じた。
言葉も通じない、友人はおろか知り合いさえもいない、唯一頼りにしている叔母には此処に来た本当の理由は言えなかった。
僕は早く帰りたかった。
人種の坩堝と云われるマンハッタン。
極東の島国から意気揚々とNYに乗り込んだ若者は、ただそこで苦しんでいた。
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