文学館コラボについて考える
上記のツイートがきっかけで、(この方自体には本当に悪意があるとは思っていないが)共有されている文章での「文豪ストレイドッグス」の扱いがとっても気になった。
そもそも、二次元コンテンツと文学館(というより、広義の博物館)コラボは、「文豪ストレイドッグス」が嚆矢である。上記の書き方だと、文ストも文学館コラボやってますよ、というくらいの軽さで書かれているが、併記されている「啄木鳥探偵處」は2020年にアニメ化の際のタイアップなので、2014年に最初に文学館コラボしたものと並列表記にするものではない。
余談だが、この時、私個人は訪れていないのだけれど、描きおろし絵がお気に入りである。文スト太宰治の描きおろし絵には坂口安吾の後ろ姿が入っているが、これは元の写真にはあったがポスターなどで活用されるときにトリミングされている部分を描いたものである。
話を戻して。上記の引用部分が、神奈川近代文学館のwebアーカイブでは古すぎたのか掘り起こせなかったため、プレスリリースを引用しておく。書店でのコラボポスターの掲示もまた、文学館訪問に寄与したと推測するのはたやすい。
第二回の文ストコラボの際に、前回の数字を概算で発表してまでの人気っぷりを書いているのだから、よほどの反響だったのだろう。
また、「文豪とアルケミスト」と母体が同じだったゲーム「刀剣乱舞」は、2015年に博物館コラボを果たしている。
広く「二次元コンテンツの博物館コラボ」という意味では、現在ではコラボで圧倒的経済効果を生む「刀剣乱舞」すらも先じてのコラボ企画を果たしているのが「文豪ストレイドッグス」である。
おそらく、文アルのコラボ初出は2017年の武者小路実篤記念館。
ちなみに、コンテンツの開始年で比較すると、
・文豪ストレイドッグス(2013年~)【文学館】
・月に吠えらんねえ(2013年~)【文学館】
・刀剣乱舞(2015年~)【博物館・科学館】
・文豪とアルケミスト(2016年~)【文学館】
という時系列になる。
という、前述の経緯を理解した上で、下記のツイートを見ていただきたい。
(やるとは言ってない) そうなので、とりあえず私が事実関係だけは整理させていただきました。
ふつうに考えるのならば、文アルよりはるか前に2013年にコンテンツが始まっている『文豪ストレイドッグス』や『月に吠えらんねえ』からの文学館来訪者が「定着した」のが、「文豪とアルケミスト」のコラボとのあたり、と推察してもいいくらいである。だのに、「文アルコラボによる集客の質的変化」という表現を用いる。
文ストはアニメ化時期に集中的に文学館コラボをするし、『月に吠えらんねえ』に関しては月刊誌連載が終わっているので、コラボの機会自体は文アルの方が設定しやすいのは間違いない。しかし、コラボ時期は文ストが最初であるし、そこから文学館に通うようになれば、自然と文アルコラボの時期に足を運ぶことになる。文アルと文ストは共通して登場する文豪が極めて多いからである。
そもそも、文豪ストレイドッグスとはタイアップしていない文学館も多い。文アルとコラボする文学館に足を運べば、「文アルありがとう! 文ストと全然違っていい!」と言い続ける文学関係者の声が大きいのであれば、これからは来館時きちんと毎度アンケートに「文ストからのファンです」としつこく書いていかないと、蔑視されてしまうのだろうか、と心が苦しくなる。
KADOKAWAがサイバーテロ状態のため、きちんとしたwebページを参照できないのが残念だが、出版IPで現在においても「文豪ストレイドッグス」はかなりの割合を占めている。そもそもファン人口が明らかに違うのである。「統計的な資料があるわけではない」とは言いたくないので、今後追記させていただきたい。
もともとの論文誌の文章の書き手の方、2019年にさいたま文学館で働くようになったそうだけど、そもそも2017年に文ストとコラボしているのに、ちょっと失礼ではないでしょうか……?