嫌われるとか、好かれるとか⑧
「嫌われるとか、好かれるとか」について。
今日で最終回。
不安定な愛着を持つAちゃんのおはなし
不安定な愛着を持つ人(仮にAちゃんとする)は、自分が安心するために、最新の注意を払って、他者と「両思い」にならないように振る舞う。
Aちゃんは、Bくんに好意を寄せていた。
Bくんも、Aちゃんに好意を寄せていた。
しかし、Aちゃんはいつものように、Bくんとの関係において「片思い」の状態を作り出そうとする。
最初はAちゃんに好意を寄せていたBくんだったけれど、Aちゃんの振る舞いを受けて、BくんはAちゃんから離れて行ったり、無視したり、嫌いになったりした。
そうして、Aちゃんは、傷つきながらも、心の底では安心するのであった。
なぜならそれが、Aちゃんが安心する関係性のあり方だから。
そんなAちゃんの前にCくんが現れた。
AちゃんはCくんに好意を寄せていた。
CくんもAちゃんに好意を寄せていた。
Aちゃんはいつものように、Cくんとの関係において「片思い」の状態を作り出そうとする。
Aちゃんは、Cくんに嫌われるように振る舞った。
しかし、Cくんは変わらず、Aちゃんに好意を向け続けた。
Aちゃんは、安心するいつものパターンの関係性に落ち着くことができず、Cくんとの関係に居心地の悪さを感じる。
Aちゃんの方からCくんの元を離れようとしたり、Cくんへの攻撃が始まったりした。
それでもCくんはAちゃんに好意を寄せ続けた。
次第に、Aちゃんは、自分の好意に対して、世界から好意が返ってくることの心地よさに気づいていくようになる。
そうして、Aちゃんの不安定な愛着の形は、少しずつ変化していった。
とまあ、理論的には、このような感じかもしれないけれど、ただAちゃんも全身全霊をかけて、自分が安心するために、必死に「片思い」の状態を作り出そうとするわけであって、それに耐えながら好意を寄せ続けるCくんのような人は、そんなに多くはない。
だから、愛着の形が変化する人は全体の3割くらいにとどまるのであって、そんな人に出会えた人は幸せだといえるかもしれない。
不安定な愛着を持つ人と
『他者(世界)に嫌われる方が安心』という関係の持ち方をしている人に対して、私はCくんのように、その人の世界に存在することができるだろうか。
目の前から離れたり、無視したりせずに、ただ、存在し続けることができるだろうか。
嫌いという気持ちが出てきてしまうことは仕方がないにしても、その感情を自覚しながら、ただ、その人の世界に存在し続ける。
どんなに攻撃を受けても、その人の世界からいなくならずに、無視もせずに、ただそこにいるということ。
そうしてその人の世界に生き残るということが、唯一のその人に届くメッセージだから。
メラニー・クライン先生がそう教えてくれた。
どんなに攻撃を受けても、Aちゃんの前に存在し続けたCくん。
CくんのCは、クライン(Cline)のCに違いない。
Googleで調べてみた。
「メラニー・クライン(Melanie Klein)」
Kでした。