本当のすき
「ねえ、虹色のイルミネーション綺麗だね」
そうやって微笑む采芽(あやめ)の横で、
「いや、これなら去年の方がだいぶ綺麗だな。ガッカリ。」
采芽は反応に困る。どうしていつも否定的なのだろう。どうやって反応するのが正解なのだろう。
「確かに、去年のも綺麗だったけど今日のも綺麗だよ。連れてきてくれてありがとね」
「こんな場所来なかったら良かった」
褒められて照れているのか、それとも本心なのか。
(18年生きてきた人間のことを1年で理解することなんか出来るはずがないと思っていつも気にせずにいた。でも、仮にこの先も2年、3年とこの人と付き合っていくのかと思うとそうも言ってられない。私たちがこれから2人で歩む年月の長さは、この人が生きてきた年月の長さを抜かすことがないのだから、私がこの人を理解しようとするから逃げてるだけじゃないか。)
「とりあえず落ち着いてご飯でも食べに行こうよ」
「『落ち着いて』ってなんだよ。いちいち発言に腹が立つんだよ。黙っとけよ」
「うん、、いつもごめんね」
私はこの人と合ってないのか、合わせてないのか、どっちなのだろう。そう考えているうちに、
雪が降り始めた。いつもは雪が降るとテンションが上がるのに、今日だけは私から気力を奪い取るように冷たい粒が周りを飛び交っているようだった。
「今日はもう帰ろっか。」
「おう」
「家に入った時の温もりを感じると、昔のあの人を思い出しちゃうな。人って変わっちゃうのかな。私も、もしかしたら変わっちゃったのかな、でも聞にくいよな、重いって思われてるのかな。」
自分の部屋に戻ってそう呟いた。ふと窓の外を見ると、まださっきの雪が降っていた。
「あの人も今同じ雪を眺めてるのかな。」
私はあの人のことが好きだし、いつもLINEの返信を楽しみにしている。でも、日が経つうちに人を好きになる気持ちを忘れていたのかもしれない。依存しているだけなのだろうか、今あの人の尊敬できるところを聞かれても即答できる自信はないし、何が好きなのかも分からない。もっと言うとどうして付き合ったのかも分からない。
「人を好きになるってなんだろう。」
ふと声に出してしまった。
「もう、今日は寝よう」
朝になって起き、大学に行く支度をする。
外を出て目にした街並みはいつもより小さく感じ、太陽の日差しもいつもより弱く感じた。
私って人を好きになったことあるのかな。ずっと人に依存してただけなのかな。
ふと思い出したのは、今の彼氏の1人前の彼氏のことだった。ちょうど大学受験真っ只中の時期だった。連絡は全然取ってなかったし、デートをすることも少なかった。でも、私は彼のことをずっと応援していて、成功を願って、連絡が取れなくても色々な面で彼を信じていた。彼のことを好きだという気持ちを胸に刻んでいた高校3年生の時期、私が塾から帰る時に見る夜景の景色は曇りの日も雨の日も、いつもより輝いている気がした。
後悔はしてないけど、かけがえのない時間をもっと大切にすれば良かったなという気持ちになった。
今の私はどういう感情をあの人に振りまいているのだろう。あの人も気づいているのかな。
「おはよ!昨日はごめんね」
「こちらこそ、ごめんな。」
「ちょっと話があるんだけど、、」
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