見出し画像

#4 発達障がいグレーの息子が、大人になった話

袖まくりを嫌がる子たち

先日、息子と回転寿司屋に行った時の話。
「いただきまーす」と言って腕まくりをする息子を見て、ふと思い出したことがあり、尋ねてみました。

「発達に特性のある子には、時々袖をまくるのを嫌がる子がおるんやけど、なんでかわかる?」
息子は少し笑って
「俺もほんまはイヤやで?もう慣れたけど」
と言います。
「なんでイヤなん?寒いから?」と訊くと
「寒いのもある。急にまくられるのは、突然窓を開けられたのと同じ感覚やから、『おいおい、なんでやねん。』という気持ちで、まくられた袖を下ろす。」
のだそう。
そしてもう一つの理由としては
「まくった時、袖のゴムが、腕を締め付ける感じが窮屈でイヤやから。」
「ゆったりしていた袖が、急に痛くて心地悪い感覚に変わることが耐えられない。」
とのことでした。


繊細で複雑な子ども達の感覚

私は現在、児童発達支援の仕事をしています。
元々は普通の保育士でしたが、縁あって身体障がい児の保育に関わるようになり、その後、現在の職に就くようになりました。
保育士時代を含め、多くの子ども達に接してきたことから、その子によって受け入れ難い感覚があることは理解しています。
ただ、その理由を詳しく知る術はありません。
幼い子ども達が、自分でそれを説明することは難しいからです。
袖まくりに関しては、なんとなく「急に腕が寒くなる感覚が嫌なんだろうな」と捉えていたので
「ゴムの締め付けが不快」
という息子の言葉に少し驚きました。
「なるほど。じゃあ、袖を折るなら大丈夫?」と訊くと
「まあ、そやな」
とにっこりと頷きます。
当事者の気持ちは、本人に訊かないとわからないものだなあと、改めて思いました。
もちろん、不快に思う感覚は、それぞれで少し異なるかもしれませんが「袖口のゴム」が原因とわかり、ちょっと目から鱗の話でした。

回転寿司一択だった子ども時代

実は、今回、回転寿司屋での話をしたのには意味があります。
息子は偏食が激しく、小学生くらいまでは
外食と言えば、ほぼ回転寿司。それもサーモンとマグロと鉄火巻きばっかり(笑)。あとはうどんかな。
今でこそ、色々なネタを楽しんで食べられるようになったものの、当時は「毎回同じ」のルーティンを崩すことはあり得なかったのです。
全く初めてのレストランなどに行くと、息子は「食べられるものがない」と泣き、たとえ空腹であっても食べないことを選択します。
食に対してはそれほど頑なだったのです。

いつ偏食が治った??

今、お子さんの偏食でお悩みの方はそこが気になりますよね?
具体的には、中学校入学後なんですが、きっかけはちょっとしたことだったようです。
私立中学に入学した息子は、一泊二日のオリエンテーションに参加することになります。
夕食後、体育館に集まって親睦を深めるためにゲームなどをし、その後「夜食」として、メロンパンと牛乳が配られたのです。もともと米しか食べない子ですが、さすがに自分だけ食べられないとは言えず、恐る恐る口にすることになります…。
なんと、その時彼は
「すげぇ旨い!」と思ったそう(笑) 
当時、夕食後から就寝までに何かを食べる習慣がなく、夜食が新鮮だったことと、ちょうど小腹が空く時間だったことが幸いして、息子の味覚は衝撃を受けたようでした。
「食べたことない物でも美味しいものがある」
ということを身を持って体験したせいか、それ以降、息子の偏食はどんどん治っていったのです。

これは、「経験」と「タイミング」の絶妙なマッチングが起こした奇跡なのだと思いますが、
「あれだけ食べさせようとしても、パンも甘いものも一切食べなかった子が、まさか菓子パンを食べるようになるなんて」「何がきっかけになるかなんてわからないものだな」と、今でも不思議に思うことのひとつです。




いいなと思ったら応援しよう!