#6 発達障がいグレーの息子が、大人になった話
LiD/APD(聞き取り困難症/聴覚情報処理障害)②
返事は一か八か
「そうそう、俺もいつもこんな感じや」
LiD/APDを取り上げた漫画を、息子がSNSで見つけて教えてくれました。
そこにはコンビニの店員さんとの、レジでのやり取りが描かれています。
「お弁当は温めますか?」
「レジ袋は必要ですか?」
どちらもコンビニでよく聞かれる鉄板の質問ですが、聞き取り困難症の人は、雑音の中ではどちらを言われたかが分からないことが多く、その場合、なんとなくのニュアンスで、どちらの返答をするか決めるそうです。
特に、うつむいたままとか、急に話し始めたりされると、「~~は~~ですか?」のようにしか聞こえず、疑問形であることは分かっても、肝心の部分がボヤけてしまうのです。なので、彼らにとって、返事はいつも一か八かの賭けなのだそう。
これは息子と私の会話でもよく起こり
「なに言うてんの?そんなこと訊いてへんで?」
「あ~、そっちやったか~。」
なんてことがしょっちゅうあります。
いわゆる「賭け」に負けるわけですね(笑)
親子の間では、今や笑い話になっていますが、息子はこの障害に気付かないまま就職したことで、大変な思いをします。
現在の職に就くまでに、いくつかの転職を経験していますが、その中には心を病んでしまうほどの仕事もありました。
もともとの職場環境が悪かったのも原因ですが、やはり彼には「どう頑張っても出来ないこと」があるのです。
「聞き取り困難症」という障害をを知った今、改めて「LiD/APDが絶対に就いてはいけない仕事」があることがわかりました。
雑音の中での指示は聞こえない
息子が最初に就職したのは、地方での畜産関係の仕事でした。
その土地や動物が好きで、希望を持って就いた仕事でした。肉体労働ですが、若いし力もあるので、体は動きます。作業は問題なくできるのに、指示が聞き取れません。給餌や搾乳のための機械音が響く中、遠く離れた場所から上司が言う指示が聞き取れないのです。
一度は聞き返すものの、それ以上は訊けないため、後は勘だけでやることになります。
「賭け」は当たる時もありますが、外れることの方が多く、その度に怒られて馬鹿にされる…それが日常だったと言います。
相手側からすれば、聞こえてるはずなのに、指示と違うことをするのですから、苛立って当然なのも分かります。
でも、指示(のようなもの)を聞いた瞬間
「なんやろ?なんやろ?アレかな?コレかな?」
と、頭の中をフル回転させて必死に考えていた息子の姿を想像すると、なんとも切なく、胸がキューっと痛くなりました。