七月大歌舞伎@大阪松竹座で幸四郎さんに度肝を抜かれた話
昼の部と夜の部を通しで観劇したので疲れました…。しかしめちゃくちゃ楽しかった!!
いつも思いますけど、観ているのでさえこんなに疲れるのに、演じておられる役者さん方の疲労は如何程なのか。想像を巡らせることしかできませんが、並大抵のご苦労ではないですよね。
今回仁左衛門さんが休演ということで、残念な気持ちもあったんですけど、いやいや本当この暑さですし、ご無理はなさらないよう、体調が万全になって復帰されるときをお待ちしております…。と念を送っております。
ちなみに今日の大阪の気温は34°Cです!暑いよ!!先日よりマシだけど真夏日!!
今回の七月大歌舞伎、とっても楽しかったので、備忘録のために、ツイートした内容を加筆修正しためちゃくちゃ長い感想を書いておきます。本当に長いので適当に興味のあるところだけお読みください。
さてこの七月大歌舞伎、昼の部・夜の部とも、近松門左衛門(以下ちかえもんと呼びます…NHKの某ドラマより)と新作の二本立て。
ちかえもん原作は、昼の部:八重桐廓噺、夜の部:堀川波の鼓。
この2つはイヤホンガイドあった方がよかったです。
昼の部:浮かれ心中、夜の部:祇園恋づくし
の二作品は新作だし、台詞も展開もわかりやすいので、なくても話の筋は追えます。
以下、演目ごとに目次をつけております。
1.「八重桐廓噺」
あらすじとしては、とある経緯で夫が目の前で切腹、その血を飲んだ女性が神通力を手に入れ、山姥になって悪者相手に無双するという、ちょっとよくわからないお話なのです。
ちかえもん、こんな意味不明な歴史二次創作も書いてるのかよ!(主人公の八重桐が坂田金時の母という設定)心中ものとかのバッドエンド大好きおじさんかと思ってたぞ(めちゃくちゃ失礼)!!
なお、夜の部の「堀川波の鼓」は実在の事件を元にした姦通物のバドエンなのでちかえもんの面目躍如やなという。あくまでも個人の印象です。夜の部については後ほど語ります。
「八重桐廓噺」の主人公である八重桐は、行方不明の夫を探して旅をしていて、ようやく夫を探し当てます。しかし夫はろくでもない煙草屋姿で、お姫様やお女中が集まる御殿で三味線を弾いていました。何をしているんだと八重桐は嘆きます。まあそりゃそうだ。
しかし夫にも言い分はあって、親の仇討ちのために出奔し、情報を集めるために煙草屋姿になってて屋敷の主人に近づこうとしていた?らしいんですけど、仇討ち自体は夫の妹がもう済ませた後、という衝撃的展開。
で、夫はせめて切腹することで汚名を濯ごうとし、八重桐は腹を切った夫の血を飲み神通力を得て、悪人たち相手に無双を繰り広げ、その身に宿した子を養育するために、神通力で空を足利山まで飛んでいく…という。
八重桐、夫に死なれてるから悲劇のヒロインなのか?いや無双してるし。山姥になるし。つよい。
私なんか展開についていけなくてぽかんとしてました。
そんな役どころを孝太郎さんが見事に演じておられていて、役者さんってすごいな…と改めて思います。
えっ…こんな意味不明な役どころを…全く違和感なく演じられるのか…すごい…すごいとしか言いようがない…。
他に印象的だったのが八重桐の義理の妹(見事仇討ちを成し遂げた夫の妹)の白菊。壱太郎さんが演じておられました。柔和な所作の中に芯の強さを感じさせるお芝居が光っていたと思います。
2.「浮かれ心中」
井上ひさしの直木賞受賞作が原作だそうです。知らなかった。読みます。
もともと勘三郎さんが演じて好評だった演目らしく、それを受け継いで演じられている勘九郎お兄ちゃん(七之助さんのお兄さんだから勝手に勘九郎お兄ちゃんって呼んでますスミマセン)のサービス精神がすごい。
中村屋の巡業のときなんかも思うんだけど、勘九郎お兄ちゃん、エンターテイナー精神に溢れすぎてません???拝見していて毎回毎回頭が下がる思いで、まさしく勘三郎さん譲りだなと思います。
「ちゅう乗り」ってなんだよ!宙乗りじゃないのか!と思ってたら、ネズミに乗るからちゅう乗りだそうで。宙乗りは宙乗りだったけど!
今回の七月大歌舞伎、仁左衛門さん目当てで席を押さえ、中村屋のお二人が出演されることを後から知ったんですけど、勘九郎お兄ちゃんのお芝居が観れて本当良かったです…!!
勘九郎お兄ちゃん演じる主人公は、絵草子作者として名を知られたくて売名行為を仕掛けまくるんだけど、その阿呆ぶりが憎めなくて、むしろ名を上げるための徹底ぶりが感心するレベル。
大店の息子なのに貧乏な絵草子屋に期間限定で婿入りし、祝言の時まで嫁の顔も見てなかったんですが、おすずという名のその女房(演じるのは七之助さん)がえらい美しくて気立もよくて、期間限定の夫婦のはずがすっかり仲睦まじい夫婦になっちゃうんです。
しかし二人仲良しなのに、あるとき、近所に知れ渡るくらい派手な夫婦喧嘩をわざとして、ご近所の話題になろうという話になり、
その時の七之助さん演じるおすずさんが、最初は戸惑って小さな声しか出さないんだけど、途中から覚悟を決めて、えらいドスの効いた声で主人公を怒鳴りつけるという場面があったりします。
みんな笑ってたけどアレ結構怖かったよ!?実は素でやってたりしませんかね七之助さん(・・;)
途中、七之助さんが花魁姿で登場するんですけど(おすずとの二役)、客席からざわめきが起こってて、それにちょっとびっくりしました。
まあなるほど美しいけどねえ…と思ったけど、私はいっぺん赤坂で見てるから耐性ついてたのかもしれませんが。
赤坂のときは花魁浦里が美しすぎてビビりまくって、オペグラを持つ手がめちゃくちゃ震えていましたが、今ではいい思い出ですネ。
そのあとも主人公は色々名を知らしめる行為を試し、仕上げに狂言の心中を企てるんですよね。しかし思わぬことが起こり、彼だけ本当にしんじゃう。
そこでネズミが冥土に導いてくれ、ちゅう乗りのラストへ。
夢の国にネズミが導くから最後はイッツアスモールワールドで幕という笑える演出。デ○ズニーかよ!?と盛大にツッコミ入れたくなる。最高である。ちゅう乗りしている勘九郎お兄ちゃんがめちゃくちゃ楽しそう。
この時に、歌舞伎座では澤瀉屋さんが馬で宙乗りを…ってネタも喋ってくれて、思わず笑いながら膝を打ってしまった。第一部で猿之助さんと笑也さんがされてますよね。そちらも行きたかったです…。
3.「堀川波の鼓」
仁左さま残念…と思ってたんだけど、代役の勘九郎お兄ちゃんと隼人さんがめっちゃめちゃ良かったです!!
勘九郎お兄ちゃんが、愛する妻の不貞を処断しないといけないお武家様(仁左さまの代役)をされてるんですけど、いよいよ妻を手打ちにするというところの緊迫感、もう息ができないくらいの重々しさなんですよ!!
さっき阿呆な絵草子作者を演じていらしたお兄様は一体どこへ…!?と言いたいくらい迫力があった…すごすぎた…
隼人さんは町人(今回の鼓のお師匠とか、他の演目では手代や大工)を演じようが、若いお武家さまを演じようが、いつ何時もイケメンすぎてすごいな…と。
しかもそのイケメンぶりが役にちゃんとフィットしてるんですよね。手代なら町人なりの若干なよっとした感じで、若いお武家さまならシャキッとしたカッコよさ。安定感が素晴らしいし、見ていて毎回清々しい感じがします。
4.「祇園恋づくし」
祇園祭のお囃子が聞こえる七月の京都が舞台で、まさに上方の夏!って演目でめちゃ良かったです。
で、この祇園恋づくし、祇園の芸妓で染香って女の人が出てくるんですよ。
今回不覚にもオペラグラスを忘れて、しかも一階席だけど後ろの方でした。
知ってる役者さんなら顔はギリギリ判別できるけど、染香さんわからんな?それにしても美しさと可愛らしさが絶妙なバランスというか、これまで見たことないタイプの女方の役者さんやな?どなたはんやろ?って思ってました。
その方、芸妓さんの女性ならではの艶やかさが、可愛らしさとうまい具合に中和されてて、上方の女性らしさがめちゃ綺麗なんですよ。うわーこの方ノーマークだったな?と思いまして、終演後、帰りの電車の中でそっとチラシを取り出して見ました。
こっ…こっ…幸四郎さんんんんんん!?!?!?
いやもうその時、座れててよかったよ。立ってたら本当腰抜かしてたよ。
思えば染香さんの初登場時、客席がざわめいてたんですよ。
あのざわめきは「えっアレが幸四郎さん!?マジで!?めちゃめちゃ美しいんやけど!?」というざわめきやったんか…私はぜんぜん分かってへんかったぞ…。
今回の七月大歌舞伎、役名は確認せずに役者さんのお名前だけざっと目を通して行ったんです。誰がどのお役かは分からず行ったという。で、幸四郎さんが祇園に来たチャキチャキの江戸っ子というのは登場時からわかりやすかったんですが。ちなみに江戸っ子としての登場の方が先なので、染香さんとのギャップが余計すごいですネ。
分かりにくいかと思うので一応書いておくと、幸四郎さんが二役早替わりで、指物師の江戸っ子の留五郎さんと、祇園の芸妓さんの染香さんを二役早替わりで演じておられました。私なんかほんっと、染香さんが幸四郎さんだと最後まで気づかなかったんですよー。いや私が鈍いのかもしれませんけど。未だに信じられないです。
もう本当にすごいから皆様観に行かれてください。来月になれば配信あるんでしょうか?
他の役者さんの早替わりもすごいけど、幸四郎さんのは雰囲気から所作から喋りから何からマジで別人すぎて、未だに信じられないレベルでした。
私もお金があったらもう一度観たいもの…!!!!
いやぁ今回もえらいもんを見てしまった。
歌舞伎、観に行くたびに「私は一体何を観ていたんだ…」という気分にさせてくれるから、なんかもう、好きです。