10.「ううぅぅぅ、、、
大会当日、いつもより早く目が覚める。
大会は毎年、市にある総合競技場で行われる。球場や体育館や大きなプールが集まっているところだ。朝9時に現地集合だ。
家を出る前に、家族から軽く
「頑張れ!」
のエールをもらった。自転車で競技場まで向かう。一回戦は山中工業高校とあたる。実力的には全然と言っていいほど向こうの方が上だ。
言葉では確認したりは一切ないが、僕たち3年は最後の大会だ。気合がみなぎる。
しっかりと声を出しながらウォーミングアップを済ませた。そして、スターティングメンバーが先生から発表される。
自分の名前を待つが呼ばれなかった。出たかったとは思うが、今はショックという気持ちはない。いや、ショックだったが、何故か少し安心していた。だが、必ず試合に出たい。
高まっていた緊張が一旦収まった。フミもまた、僕と同じでベンチスタートだ。
相手チームも気を張っているようだ。全体的に見た目は、背が比較的に高く、髪の毛がチャラっとしたような見た目だ。全体的にだ。絶対に負けたくない。
相手チームからのキックオフで試合が始まった。
乗っけから両チームとも、果敢に攻め合う。
やはり、向こうの方がレベルが上。何度も攻め込まれるが、こっち側も負けじと食らいつく。ピンチになる度に、心の中でふつふつと闘志が湧き上がる。
スタメンに選ばれなかった時には、何故か少し安心していた自分が紛れもなくいた。試合に出たくなかったのではない。ただビビっていたのだ。
スロースタートではあるが本当に気合が入ってきた。多分、他の人とは共感できない感覚だろう。そして、前半終了間際に相手チームに得点を許した時には、試合に出たくて勝手にウォーミングアップを始めそうになっていた。
体から、火が吹きそうな感覚だ。もし試合に出たとして、活躍する根拠なんてどこにもないしチームに対して保証ができない。でも、この場面で僕が、誰でもない僕が動きたかった。
ベンチの隣にいたフミに言われるまで気づかなかったが、僕が無意識に
「うぅぅ、、うぅぅぅ、、。」
と唸っていたらしい。無意識だ。それくらい体が疼いていた。
するとフミが、
「マジで早く出して欲しい、、、。」
と呟く。
「うぅぅっぅ、、。」
と返す。前半が終わった。1-0だ。
ベンチで先生の言葉を聞く。その間に先生に対して、『試合に出してください!』アピールを目で訴えかける。
がそれも虚しくメンバーの変更はなかった。その頃には、発狂してしまいそうな悔しさを胸の中で押し殺した。先生の目の届かないところで、小さく最小限に暴れた。
つづく
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