わたしは、玩具。
彼のいる浴室に飛び込み、
彼が背を向けて入る浴槽の傍で、
わたしは手早くカラダを洗う。
彼の隣に静かに片足ずつ、
丁寧に、程よい湯の中へ。
彼はするっと手を肩に回し、
目にかかる前髪を払うように、
ごく自然に、
わたしにキスをしてきた。
声が、漏れた。
何万年ぶりかに感じられた、
艶かしいキスは、
わたしの心も体も解いて浴槽の中へ沈ませていく。
彼の指は、
普段話すよりも饒舌で、
浴槽の水にわたしの全てが溶けだしてしまいそうだった。
のぼせそうで、
わたしは先にほてったカラダをタオルで包んで、
ベッドの中へ逃げるようにもぐりこんだ。
彼は後から来て、
「きょうはね、いいもの持ってきましたよ。」
と、
徐に自分の仕事鞄の中から、
大人の玩具をいくつか取り出した。
そう言う玩具を、
見たことはあったけれど、
実際に自分の体に使ったことは無かった。
頭の片隅で、
『え、それを、今日1日カバンに入れたまま仕事をしていたの?
そして、その玩具はわたし以外にも使ったことあるの??』
など、冷静にいろんな疑問がわいてきつつ、
まな板の上の鯉になっちまえ。
と
身を任せることにした。
彼が今まで見せたことの無い、
微笑みを浮かべながら、
わたしを包んでいた布団をはぎ落としてしまった。