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私には親友のポケモンがいる。
 
ポケットモンスター世代であるにも関わらず、持ち前の要領の悪さからゲームを遂行することが出来す、アニポケのみの知識で渡り歩いてきた。
151匹は知っているので、好きなポケモンを聞かれるとフシギダネと答えている。
爬虫類や両生類が好きなこと、アニメで声を担当している林原めぐみが好きなこと、高校時代に少しだけプレイしたポケモンで、当時付き合っていた恋人の名前をつけて可愛がっていたことなんかがあって思い入れがある。フッシー!ダネダネ!かわいい。
 
私がポケモンから目を逸らした隙に、ポケモンの数は数倍に増えた。若い子に好きなポケモンを聞いてもどんなものなのかわからず、たまに見かけるアニメではサトシが知らないポケモンを連れていた。
 
ある日、私もゲームのポケモンを完走してみたいなと思った。赤緑からはじまり、無数にあるポケットモンスターの中から、何を遊んだらいいか会社の若い子に聞いたところ、ルビー/サファイアをお勧めされたので、3DSのリメイク版を購入し、数億年ぶりに3DSを充電して遊んでみた。
 
さすがに大人になったということ、あとはおそらくリメイク版ということもあり、昔より親切設計になっているのかもしれない。行き詰まることなくサクサクと進めることが出来た。
アチャモのレナちゃん(好きなメイドの女の子の名前を本人の許可をもらって付けさせてもらった)と一緒に、はじめての旅は楽しかった。強くて頼れるレナちゃんに引っ張っていってもらう形で、ゆるゆるとストーリーは進んだ。
 
ある日、ブサイクなウサギがやけに出てくる村にたどり着いた。たしかすごく可愛い猫みたいなのもいて、それも捕まえた気がする。そんな猫がいたから、余計にブスに見えるそのウサギは、いつもオドオドしていて腹が立った。はっきり言え!!!と掴みたくなるような見た目だった。
ウサギはゴニョニョというポケモンだった。名前も腹が立った。
でも、あまりにも目につくので一匹捕まえて連れて歩くことにした。名前はうさきちにした。
 
うさきちは、意外にも役に立った。タイプの相性に疎い私にとって、ノーマルタイプのうさきちはいつも前線に立って戦ってくれた。
あんなにオドオドしているくせに頑張って、なかなか可愛いな、と思い始めたころ、うさきちは進化した。
 
動揺した。どうしちゃったんだうさきち、お前ウサギじゃなかったのか。
あんなにビクビクしていたのに、クラスに一人はいるうるさいバカみたいになってしまった。もこっと垂れていたロップイヤーのような耳は、デカいスピーカーになっていた。バタバタと動き、顔もうるさく、全体的に遠慮がない。口も大きく開けっ放しで下品だ。
 
変わり果てた姿にやや引きつつも、私はうさきちと旅をした。うさきちはどんどん強くなった。格闘タイプのレナちゃんでは立ち行かないバトルで、うさきちのハイパーボイスは何度も私を助けた。
 
あんな見た目で、うさきちはメスだった。あまりにも騒々しいうさきちに、たまには女らしくしたらどうかと、メロメロを覚えさせた。すると多くのオスたちが、うさきちにメロメロになった。
あんなにオドオドして、小さかったうさきちが、堂々と誰よりも大きい声で前に出て、男たちを虜にしていく姿は、なんだかカッコよかった。見た目がアレなところが、より魅力に思えた。
 
うさきちはまた進化した。もう笑っちゃうくらいウサギではなくなった。
四方八方から伸びている管から、地震が起きるくらいの大きな音を出す。うるさすぎて勘弁してほしい。
でもなんだか怪獣みたいな感じで、ちょっとカッコいいよと思えた。
もう男に媚びるのも飽きたと、メロメロをやめてはかいこうせんを覚えさせた。采配が悪い私の指示で死にかけても、パワーでなんとか乗り切ってくれた。
 
なんだかんだ、最後のバトルまで私とうさきちはずっと一緒にいた。
バシャーモのレナちゃんは最後まで美しく、チームのリーダーのような存在でいつでも頼りになったけれど、うさきちと私は同期のような関係だった。
いびつな体も、もう閉まることがなさそうなデカい口も、可愛げのない目つきも大好きだった。
 
ポケットモンスタールビーを最後まで遊んで、私はうさきちという親友が出来た。
正直、ストーリーなんてほとんど覚えていない。でもうさきちとの思い出は、この先もずっと私の宝物だ。
ゴニョニョ、ドゴーム、バクオングはやっぱり人気がないようで、その後のポケモンには登場していないようだ。
またうさきちと旅ができるなら、ポケモンをプレイしたいなあと思う。
ありがとう。また会おうね。

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