舞台 グリーンマイル 10/22レポ・感想及び咀嚼のためのメモ

[2017/11/6の記事です]

ラジオにて、難しいと思ってたけどストーリーはわかりました!と寄せられた感想に対して「そんなに難しい話ではない、結構シンプル(ニュアンス)」と返していたシゲアキ。

実際、この”グリーンマイル”という話は、

①コーフィとポールの心の交流を描く:ヒューマンドラマ

②謎解き要素:だれが真犯人か?

③死刑制度を考える

という3つの大きな柱がある。それぞれはわりとシンプルだけど、それらがスティーヴン・キングの巧みなストーリーテリングによって複雑かつ深みのある作品へと仕上がった。

そしてこの話において忘れてはいけないのが、

④新約聖書の現代版としての翻案

という四つ目の柱。

実はスティーヴン・キングは聖書になぞった話を書くのが大好きマンで、この”グリーンマイル”もそのひとつ。キリスト教に馴染みの薄い日本人は気づきにくいけれど、不思議な力を持つジョン・コーフィはイエス・キリスト、コーフィに感染症を治されコーフィの無実を知り長寿を得た看守ポールは聖者ロンギヌス、コーフィに感謝をしつつも処刑をポールに任せ回復祝いに向かう所長は総督ピラト、そして緑の廊下、グリーンマイルはゴルゴダの丘と聖書に重ねられている。

”グリーンマイル”は様々な要素を含んだ、「罪と罰」の話。

なので「授業中ヒマな時は聖書を読んでいた」という加藤シゲアキがどのように演じるのが、とても楽しみだった。

感想は色々あるけど、一番心にキたのはラストシーン。

ポールはコーフィに「力」を与えられ、長寿を得た。コーフィは力だというが、歳を重ねたポールはそれを自分への罰であるととらえる。

映画版では、歳を重ねたポールの傍らに60年以上生き続けるMr.ジングルスがいる。長くて寿命3年のネズミがまだ生きている…その事実から自分のグリーンマイルがまだまだ果てしなく続くという事実を突きつけられる。

映画版に対し、舞台版だとMr.ジングルスは割と早い段階でポールの前から姿を消す。妻、仲間たちを見送って、それでも生き続け、そこでやっと舞台版ポールは与えられた「力」と「罰」に気づく。その頃には彼はひとり。共に歩むMr.ジングルスはそこにはいない。映画版とは異なった底知れぬ絶望と孤独に気づいたとき、背筋が凍った。

でもそんな孤独の中、ラストでコーフィに語り掛けるポールの声はとても優しい。温かい声で、コーフィと再会の約束を交わす姿を見て、これが加藤シゲアキが辿り着いたポールという人間なのだな、と仄暗さのなかに小さな灯を見つけたような気がして安堵した。まだまだ続くグリーンマイル、それは孤独だけど、きっとこのポールなら絶望だけじゃない何かを感じながら歩んでいけそうな気がしたから。

以下、そのほか感じたことをさくさく書いてゆきます。


▽照明・演出がよかった!

あまり物が多くないセットのなか、アナログな演出で色々なものを表現していたのがとてもよかった!

特に照明。これどうやって表現するつもりだろう?というコーフィの奇跡の力はもちろん、独房やグリーンマイルという場所・空間の表現がすばらしかった。独房は本当に独房に見えたもんなあ。

▽涙を煽らない脚本がよかった

物語は静かに進む。やろうと思えばもっと涙!涙!!という流れもできたはずなのに、淡々と進む。でもそのおかげで登場人物の心の動きがよく見えたし、コーフィの処刑も「Eブロックの日常の一コマである」というどうしようもない遣る瀬無さを突きつけられた感じで、静かにじわじわと心を侵食してくるなんとも言えない気持ち悪さがあって良かった。

▽把瑠都の瞳が綺麗

把瑠都の瞳が澄んだ青で、本当に綺麗で…あの瞳を見ただけで「ああ、コーフィだ…」って思ったし、最高のキャスティングだなって思った。

あ、でもポールのキャン玉掴んで抱き上げる時とか、パーシーをヒョイって持ち上げたときは「うおおおぉさすが把瑠都!!」ってびっくり。

▽シゲアキは舞台俳優向き

元々喋りや発声に癖のあるシゲ、舞台映えするな~!!と実感。

そして翻訳劇独特の言い回しもとても似合ってた。ドラマもいいけど私は舞台で芝居する加藤シゲアキが好きだ!また舞台出て欲しい!

▽マウスビル

アドリブが入るというマウスビル。めっちゃ楽しみにしていました!

うろ覚えでしたが、10/22はこんな感じ。

デラクロワ「なんてこった!入場料!入場料はあるのか?」

ブルータス「あるよ。…たしか子供2セント大人10セント。年間パスもあるぞ。年間パスは…10セントだ! そりゃあみんな年間パス買っちゃうよな」 「マウスビルの中に入るとでっかいテントがあってその中にはトイレットペーパーの芯や箱で出来た町があるんだ。…ショボいな。 窓は水晶で出来ていて外からネズミたちの様子を覗くことが出来る」

デラクロア「すごい!すごいじゃないか!」

ブルータス「その中でネズミたちはモーターボートを操縦したり空中ブランコに乗ったりするんだ」

ブルータス「フードコートだってあるぞ!ネズミが経済を回してるんだ!Mr.ジングルスは…糸巻を回すんだ!!」


▽パシ島、アラフォーだってよ。

嘘だろ?!嘘だと言ってよパーシーー!!

パンフ見ておったまげたよ!あの肌ツヤはどう見たって20代だし、あの役は出会う人全てイラつかせるボーイだし、TwitterでのウォートンとのやりとりはOBに気に入られていじられ倒される高校2年生(バスケ部)だろ?!

そうそう、映画だと嫌なヤツ一辺倒悪魔の象徴!みたいに描かれたパーシーだけど、舞台版ではピョコピョコしてたり、仕草が少年ぽかったりして憎いだけじゃないヤツになっててとても興味深かったです。役者さんって凄い。


▽ウォートン、目が離せない

セリフは他キャストに比べて少ないけれど、存在するだけで色々情報量が多くて目が離せない。寝っ転がってるだけなのに、ただ寝っ転がってるだけじゃない。マルチアングル欲しい。ウォートンずっと見ていたい。


激選だろうなー、単騎で申し込んで外れたら諦めよう、と思ってたところにお友達に声をかけてもらって、しかも東京最終日を当ててもらって(私の名義は全滅でした面目ない)感謝!感謝です!!講演後すぐ帰っちゃってごめん!!ビールみんなと飲みながら語りたかった!!!

いやー、本当に良いものを観ました。

残り3公演、無事走り抜けられるよう応援しています。

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