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読書記録2

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この本は、ヨーロッパ封建制度、重商主義の時代から、
民主党政権時代、アベノミクスの初期くらいまでの経済史を
とてもリズミカルに読める、軽妙洒脱な経済史の本である。
何故か民主党政権やオバマ政権時代の箇所を読むと妙に懐かしく感じる。

経済史の流れを掴むことを最優先にしたいならば、
最初から順に読んでいく方が良いのだろうが、
気になる時代、時代で部分読みしても問題無い。
どこからでも、空き時間に気軽に読めるのがいい。
(できれば、この手の本は、新書か文庫サイズがいいけど。)

大学受験で問われる事項もコンパクトにまとめられているので、
受験生にも良書。内容的に勉強の合間に読むとちょうど良い軽さ。

また、この本には、随所に各項目に関連する重要人物の顔写真と、
セリフが付いているのが面白い。
ページを繰りながら、「次は誰が来るかな、誰が来るかな」
と想像しながら楽しめる。しかも、写真とセリフが絶妙にマッチしている。
「みんなのサンドバック」たる森喜朗元首相が無いのだけ残念であるが。
お気に入りは、微妙な表情が哀愁漂うニクソン元大統領。(141項)

蔭山氏のすべての作品に関して言えることだが、
氏の筆の魅力は二つある。一つは「絶妙なアナロジー」。
そして、二つ目は歴史事項の「物語化」である。

アナロジーは、予想外の変化球で、いきなり飛んできたりする。
(TPPの話題にいきなり清原が出てきたりとか。)

なお、姉妹本の『やりなおす戦後史』と若干テイストが異なるので、
読み比べてみても面白いと思う。
これは好みであるが、経済史の方が毒気が強く、
筆者が、色々な意味で「遠慮せず」、伸び伸び書いてる感じがする。
それを好む人は、『戦後史』よりこっちの方がオススメかも。
読者によって合う、合わないがあるだろうが、
ただ、その二つの持ち味があるからこそ、
血の通った内容になっていると思うし、記憶に残る。

特に、国際関係を説明する際の「ヤクザ同士の抗争」の喩えはこの本の主軸だが、
実に言い得て妙である。これはわかりやすいし、使える。
これからの不透明な世界情勢を予測する時にも、
EUを離脱する宣言したイギリスや、
エキセントリックな組長に変わったアメリカに、
見捨てられそうな日本など、この構図で考えると興味深いものがある。

レビューを見ると、学術的な部分で色々文句を言われているものの、
細かいことは置いといて、楽しく(そして実は結構真面目に)
さっくりと経済史の流れをつかむ、という点で良書である。
「木」を見る前に「森」を見るための本だ。

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