ペーパークリップ
先日他大の学生寮に行ったら、中庭に大きなペーパークリップのオブジェがあった。 クリップにまつわる小話を思い出したので、それについて書こうと思う。
12月のとある週末、オスロの民俗博物館で開かれていたクリスマスマーケットに足を運んだ。この民俗博物館、1500年くらいから現在までのノルウェーの住宅が地域ごとに野外展示してある。夏に行った時には、博物館のスタッフさんたちが体を張って昔の暮らしぶりを再現していて、かなり楽しめた。あの日は気温が18度くらいあったのに、この日はマイナス12度。寒さで身体の芯まで冷えていく。
ちなみにクリスマスマーケットの入場料に2000円くらい取られるのだけど、ノルウェー人の友人に無料のチケットをおすそ分けしてもらえたのでラッキー。
民俗博物館というだけあって、ノルウェーの伝統的な食べ物、編み物、おもちゃが並ぶ。一緒に行った友人たちが果敢に販売員と交渉して試食するので、私もそれにあやかって色々つまみながら歩いた。スモークサーモンの食べ比べ、ヘラジカやトナカイの生ハム・ソーセージ、リコリスエキス入りのホットワインは THE ノルウェーという感じがした。
リコリスは、スペインカンゾウというハーブの根。これを甘く煮詰めて炭で着色した真っ黒いグミを、北欧をはじめとするヨーロッパではよく見かける。好き嫌いはかなり人を選ぶと思う。ポルトガル人のフラットメイトはその日の気分でいける日といけない日があるらしい。気分の問題なのか。
所狭しとテントが並ぶ中、不意に一つのテーブルに視線が吸い込まれていった。いかにも大事そうに陳列されたペーパークリップ。しかも明らかにジュエリーの見かけである。ちなみに上の写真はブレスレット。1つ850ノック、日本円だと1万1千円くらいする。一番右端のにいたっては2万5千円。いくらなんでも高すぎる。このペーパークリップは一体何なのか。気になって友人に聞いてみた。
「レジスタンスのシンボルよ。」
第二次世界大戦中、ナチの占領下にあったノルウェー。現在私が留学しているオスロ大学の学生が、”抵抗” ”団結" ”愛国心”を象徴するものとしてペーパークリップを身に付けたのがはじまりだそう。紙を一つに束ねるクリップは、仲間との結束を意味する。ペーパークリップの発明者がノルウェー人(諸説あり)というのも関係しているらしい。人とのつながりに重きを置くノルウェー人らしいなと感心した。しかも、余程の想像力がないとペーパークリップからレジスタンスを連想するのは難しいだろう。ひそかにナチへの抵抗を続け、苦難に耐えた当時のノルウェー人は、厳しい冬を生き抜く現在のノルウェー人たちと容易に結びついた。
何の変哲もないただのペーパークリップだったはずが、また一つ豆知識が増えた。