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映画史上トップクラスにバグった性癖と貞操観念を目の当たりにして、「人間ってもっとド変態でもいいんだ」と思える『エマニュエル』

【個人的な満足度】

2025年日本公開映画で面白かった順位:3/3
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:Emmanuelle
  製作年:2024年
  製作国:フランス
   配給:ギャガ
 上映時間:105分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:小説『エマニュエル夫人』(1970)
公式サイト:https://gaga.ne.jp/emmanuelle/

【あらすじ】

※映画.comより引用。
ホテルの品質調査の仕事をするエマニュエル(ノエミ・メルラン)はオーナー企業から依頼を受け、香港の高級ホテルに滞在しながら査察をすることに。

サービスも設備もほぼ完璧で最高評価の報告書を提出するエマニュエルだったが、ランキングが落ちたことが許せないオーナーは経営陣のマーゴ(ナオミ・ワッツ)を懲戒解雇できる理由を見つけるよう、エマニュエルにマーゴの粗探しを命じる。

ホテルの裏側を調べはじめたエマニュエルは、怪しげな宿泊客や関係者たちと交流を重ねるなかで、自身の内なる欲望を解放させていく。

【感想】

1974年に公開されたあの『エマニエル夫人』が50年以上の時を経て令和に甦りました!僕はもともと原作小説は読んでいなかったのですが、本作でもエマニュエルの性に対する飽くなき欲求には圧倒されました。

<1974年版を軽くおさらい>

日本でも女性を中心に大ヒットし、配給会社の全社員に給料12か月分だか20か月分だかの臨時ボーナスをもたらしたというた1974年版についても軽く触れておきます。とにかく性癖と貞操観念がバグりまくってて、話の9割はセックスか自慰行為というトンデモ映画なんです(笑)外交官の妻としてバンコクにやってきたエマニエル(シルヴィア・クリステル)。他の駐在妻たちとの会話は下ネタしかありません。もともと夫婦はお互いの性生活を束縛しなかったこともあり、そこで女性同士でちちくりあっているうちに性に目覚めた様子。気に入った人がいた場合、気づいたら上も下も露わになり、場所も性別も人種も人数も問わずパコり出します。女性同士の濃厚な絡みや夫婦で3Pなど、ポルノ映画としてもおかしくない内容ですね。ただ、エマニエル自身は体の重なりを通じて閉塞感の打破や人間的な成長など向上心に溢れていたように見受けられたので、ただの肉欲の限りを尽くす話というよりも、もっと性を神秘的なものへと昇華させた印象があり、それゆえ単なるポルノ映画としての扱いを受けなかったと思いますね。

<令和のエマニュエルは性の追求の動機が弱い?>

さて、今作は新たに映画化されたわけですが、1970年代のシリーズからアップデートされた部分があります。まず、エマニュエルが夫人ではありません。そして、1970年代の専業主婦とは異なり、今回のエマニュエルはホテルウーマンとしてバリバリ働いています。この50年の間に女性の社会進出が進み、結婚や夫婦に対する考えも大きく変わっているので、そういった世相を反映した結果かなと思います。

とはいえ、設定が変わっただけで、パッと見でやってることに大きな違いはありません。飛行機内で男性客を誘惑し、ホテルのバーで知り合ったカップルと3Pを楽しみ、ホテルの常連のアジア人女性客と深い関係になり、こっそりとよろしくやっています。まあ、それはそれでいいんですが、なぜ彼女がそこまでセックスに興じるのかがちょっとわかりませんでした。責任ある仕事も任され、特に現状に不満はないように見えたので、ただ刺激が欲しいだけの性欲が強い人にしか感じられない部分もありました。ただ、ミステリアスな雰囲気を身に纏った常連客のケイ・シノハラ(ウィル・シャープ)との出会いと、会社からのクソみたいな命令に嫌気が刺したのが相まって、新たな世界への扉を開いてみたい好奇心に駆られたようにも見えましたね。

ちなみに、そのケイ・シノハラってのも仙人の領域に達したような人で面白いんです。不能者ではないんですが、なぜかあらゆる欲望が枯渇して、今や迷えるエマニュエルを導く的なポジションです。1974年版のマリオ(アラン・キューニー)にちょっと近いですかね。エマニュエルの他の男性とのセックスで、通訳で同席してるだけの構図は謎すぎて笑えました(笑)

<個人的にはやっぱりシルヴィア・クリステルの方がインパクト大>

本作でエマニュエルを演じたノエミ・メルランも相当な体当たり演技でしたが、やはりインパクトという点においては1970年代のシルヴィア・クリステルの方が個人的には大きかったですね。彼女の174cmの長身と透き通るような白い肌、引き込まれそうなモスグリーンの瞳には神秘的なものを感じましたから。そんな彼女が身も心も露わにしているっていうのはやっぱりすごい衝撃的ですよ。もちろん、今回の映画は昔のようにただひたすらに過激なシーンを盛り込む必要はないという判断だったというのはわかりますが、単純にインパクト勝負で言ったら、断然シルヴィア・クリステルなんですよね。

<そんなわけで>

性癖と貞操観念がバグった大人たちのパコりっぷりがもはやファンタジーさえに思える映画でした。多くの人間が内なる欲望を抑えながら生きていると思うけど、この映画の登場人物のように、そのリミッターを外せたら新しい世界が開そうではあります(笑)

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