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時の流れがもたらす人生のアップデート。犬とロボットの儚くも切ない友情物語にセリフがなくともラブストーリーのように胸が締めつけられるような気持ちになった『ロボット・ドリームズ』

【個人的な満足度】

2024年日本公開映画で面白かった順位:31/131
  ストーリー:★★★★★★★★★★
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★★☆
     音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★★

【作品情報】

   原題:Robot Dreams
  製作年:2023年
  製作国:スペイン・フランス合作
   配給:クロックワークス
 上映時間:102分
 ジャンル:アニメ、ヒューマンドラマ
元ネタなど:コミック『Robot Dreams』(2007)
公式サイト:https://klockworx-v.com/robotdreams/

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
大都会ニューヨーク。ひとりぼっちのドッグは、孤独感に押しつぶされそうになっていた。そんな物憂げな夜、ドッグはふと目にしたテレビCMに心を動かされる。

数日後、ドッグの元に届けられた大きな箱――それは友達ロボットだった。セントラルパーク、エンパイアステートビル、クイーンズボロ橋……ニューヨークの名所を巡りながら、深い友情を育んでいくドッグとロボット。ふたりの世界はリズミカルに色づき、輝きを増していく。

しかし、夏の終わり、海水浴を楽しんだ帰りにロボットが錆びて動けなくなり、ビーチも翌夏まで閉鎖されてしまう。離れ離れになったドッグとロボットは、再会を心待ちにしながら、それぞれの時を過ごす。

やがてまた巡りくる夏。ふたりを待ち受ける結末とは―― 。

【感想】

映画好きの中で密かに話題となっているアニメ映画。元は2007年に出版された同名のコミックだそうで、そちらは読んでいないんですが、いやー、なんだこれ切なすぎて泣きますわ。すべてが愛おしくて切ないのでマジで観てほしいです。。。

<使い古された話でも主人公を変えるだけで新鮮になる>

この映画、一見すると子供向けの映画のような印象を受けますが、ラストのオチを踏まえると大人でも楽しめる内容だと思います。いや、大人だからこそ「そうくるのかー」っていう展開に胸が痛むかもしれません。孤独な主人公が友達ロボットを買うっていう設定は、斬新かというと正直そういうわけでもないと思います。が、その主人公が人間じゃなくて犬ってなるとまた全然違う作風になりますね。そもそもこの世界には人間がおらず、動物たちだけが住む世界になっているんですが、昔、脚本家養成スクールに通っていたときに教わった中で、「使い古された話でも主人公の性別や年齢を変えると別物になる」っていうものがあり、そのいい例かもしれません。

<友達と過ごす幸せな日々からの急転直下による喪失感はハンパない>

孤独だったドッグはロボットと時間を共にすることで、みるみる日々の生活が彩りで満ちていきます。独りのときはテレビを観て、ゲームで遊ぶしかなかったドッグですが、ロボットが来てからはいっしょに街を歩き、公園へ行き、ローラースケートで遊び、歌に合わせて踊り、プリクラを撮り、海水浴に行くまでアクティブになりました。たったひとりの友達がいるだけで、こんなにまで人生変わるんだっていうぐらいまぶしくも微笑ましい光景でしたね。そのときにバッグで流れるEarth, Wind & Fireの『September』(1978)がまたいいんですよ。すごく映画の世界観とマッチしていました。

でも、そこまで幸せそうな日々を目にしている分、その後に起こる悲劇からの喪失感は凄まじいものがあります。海水浴で海に浸かったドッグとロボットは浜辺でひと眠りしてしまうんですけど、日が落ちて目が覚める頃に、ロボットは体が錆びて動けなくなってしまうんですね。何とかロボットを運び出そうとするドッグですが、このロボットって相当な重さらしく、ドッグだけでは運ぶことができません。しかも、まわりのお客さんもライフセーバーも帰ってしまい、もう誰も残っていないんです。仕方なくロボットを置いて一旦家に帰るドッグ。翌日、修理道具を持ってやって来るんですが、ちょうど海水浴のシーズンが終わってしまい、完全に締め出されてしまいます。次に中に入れるのは1年後。。。

正直、ここにツッコミどころがなかったわけではないです。そもそも、ロボットには水中モードのようなものがあるに錆びるってどういうことよ?とか。錆びるの早くない?とか。いくら海水浴のシーズンが終わっても事情を話せば中に入れるのでは?とか。ただ、その後の展開を踏まえると、そんなことには目をつむりたくなりますね(笑)ロボットを助けたくても助けられないドッグ。再び戻る孤独な日々。ロボットもまた、浜辺で横たわり、ただ独り時が過ぎるのを待っていました。そこで彼は夢を見ます、、、そう、タイトルの通りに。ロボットはいくつか夢を見るんですが、これがまた切ない夢でね。。。内容にはあえて触れませんが、、、辛い、、、辛かった。。。

<時の流れがもたらす変化は果たして幸か不幸か>

この映画の最大のポイントは、時の流れがもたらす人生の変化にあると思います。ドッグもロボットも、1年という時を経る中でちょっとずつ変わっていくんですよね。ドッグは意志ある生き物なので、自分の選択と決断によって新たな道を切り開いていきます。ロボットは意志はありませんが、まわりが彼を変えていきました。結局、自分で動いたとしても、まわりに流されるだけだったとしても、時の流れによって自らの置かれた状況ってのは刻一刻と変化していくんだということがよくわかります。

そして来たる運命のとき。ドッグとロボットがまさかね。。。しかも、そっちからそういうことするのかって。。。きっと本心はそうじゃなかったんじゃないかな。。。でも、お互いにとってのベストがそれだと判断したんでしょうね。。。なんかラブストーリーのような切なさを感じましたね。。。

<そんなわけで>

これは本当にオススメしたい映画です。セリフがない(息使いや叫び声などはある)のに、こんなにまで切なく儚い友情を見せてくれるなんて心が豊かになります。また、ドッグとロボット、この2人の幸せについても考えさせられます。時の流れって残酷のようにも思えますけど、新たな人生も切り開いてくれるので、よくも悪くも「変化」を意識させてくれますよね。果たして、ドッグとロボットはその変化をどう受け取っているのでしょうか。

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