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ロシア革命に翻弄される医師であり詩人でもあるジバゴの恋路は壮大でロマンチックだけど、「結局勝ったのは愛人かい」って思ったのと、本妻の対応が大人すぎて泣けてくる『ドクトル・ジバゴ』
【個人的な満足度】
「午前十時の映画祭14」で面白かった順位:8/24
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★★
【作品情報】
原題:Doctor Zhivago
製作年:1965年
製作国:イタリア・アメリカ合作
配給:MGM
上映時間:200分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
元ネタなど:小説『Doctor Zhivago』(1957)
公式サイト:https://asa10.eiga.com/2024/cinema/1316/
【あらすじ】
※公式サイトより引用。
19世紀末のロシア。医学を学ぶユーリ・ジバゴ(オマー・シャリフ)は、詩人としても知られていた。
1914年、第一次大戦が勃発。野戦病院に赴任したジバゴは、かつてモスクワで知り合った女性ラーラ(ジュリー・クリスティ)と再会する。看護師のラーラは革命に情熱を燃やす学生パーシャ(トム・コートネイ)と結婚していた。
二人は懸命に兵士の手当に取り組むが、妻トーニャ(ジェラルディン・チャップリン)がいる身でありながら、ジバゴの心は次第にラーラに傾いていく。
【感想】
「午前十時の映画祭14」にて。1965年のイタリア・アメリカ映画。2016年に「午前十時の映画祭7」で観て以来約9年ぶりの鑑賞でした。当時は尺が長くてあまり面白さを感じられなかったのですが、あれからたくさんの映画を観たことで印象が大きく変わりましたね。これはロシア革命に翻弄されながらも道ならぬ恋に燃え上がる男女を描いた壮大な叙事詩ですよ。
<波乱万丈のW不倫>
この映画、妻子ある身のジバゴ(オマー・シャリフ)が、同じく夫と子供がいるラーラ(ジュリー・クリスティ)との恋路を描いたW不倫の話です。そう書くと一気に下世話な印象を与えてしまうかもしれませんが、そこに至る経緯が波乱万丈すぎて、決して不倫をよしとするわけではないですけど、ロマンチック甚だしい内容になっています。
<暗い過去を背負うジバゴとラーラ>
ジバゴは幼い頃に両親を失い、親戚の家に引き取られました。大人になってそこの娘であったトーニャ(ジェラルディン・チャップリン、あのチャールズ・チャップリンの長女)と結婚して子供を授かるも、医師という身分のため、第一次世界大戦のときは野戦病院に赴任していました。そこで看護師として働いていたラーラと半年いっしょにいるうちに、ジバゴは彼女に想いを寄せるようになります。いつ命を落とすかもわからない場所で半年過ごしたら、そこに強い絆が生まれるのは理解できますね。
一方、ラーラはと言うと、彼女もまた壮絶な過去をもった人物です。父親がおらず、母にパトロンである弁護士のヴィクトル(ロッド・スタイガー)がついていたんだけど、そのおっさんがラーラにも手を出しちゃったんですよね。当時のラーラは劇中で17歳の設定で、ヴィクトルは40代か50代ぐらいでしょうか。処女を奪われ、口論した際には強姦までされるなど、ヴィクトルの非人道的な行いには怒りがこみ上げてきます。ラーラにはパーシャ(トム・コートネイ)という革命に入れ込む恋人がいましたが、彼から預かった銃を持ち出し、ラーラはとあるパーティー会場でヴィクトルに発砲します。彼の見下した態度や行いが許せなかったんでしょう。実はその場にジバゴとトーニャもいたんですが、そのときはお互いに絡みはありませんでした。
<会えたかと思えば離れ離れになり、でもまた会っての繰り返し>
先の野戦病院でジバゴはそれとなくラーラに気があるそぶりを見せるんですが、ラーラもまんざらでもなかったものの、モラルを守ってやんわりと断りました。が、しばらくしてジバゴ一家が疎開した先で、ジバゴとラーラは再会することになります。そこで2人は愛し合うのですが、ジバゴには2人目の子供が生まれることもあり、彼の方から関係を断つことを決め、ラーラもそれに従いました。不倫してる時点でアウトではあるんですが、ジバゴもまあまだ分別がある方かなとは思いました。
ところが、ジバゴはその後パルチザンに拉致されてしまい、2年間、彼らの元で医師として前線に立たされることになります。何とかパルチザンから脱走したジバゴですが、たまたまたどり着いた場所がラーラの家の近くだったもんで、しばらく彼女の家で厄介になることに。ちなみに、ジバゴが拉致された後に、彼の妻トーニャがラーラを訪ねて手紙を託すんですよね。当時は連絡手段も限られていますし、戦時中ということもあって、いつまで経っても帰らない夫の身を案じるとともに、「どこにいるか」というのを人づてに聞いてラーラの元にたどり着いたんでしょう。手紙はロシアから追放されてフランスに行きますって内容なんですけど、冒頭で「この手紙をラーラさんに託します。生きていれば彼女を訪ねるでしょうから」って書かれていて、もう妻には全部バレてたんだなって思いました。それでもトーニャはそのことを咎めることは一切せず、最後に「ラーラさんは素晴らしい方でした」と締めくくります。なんて大人な対応なんでしょうか。本当はいろいろ問い詰めたいこともあったでしょうに。。。
最終的にジバゴはラーラとも離れ離れになってしまうんですが、終盤のシーンは切なかったですね。たまたま街でジバゴはラーラを見つけて追いかけるんですが、持病の心臓発作が起きて、あと数メートルってところで……ね。
<そんなわけで>
とても壮大なラブストーリーでした。200分というかなりの長尺ではありますし、ゆーても不倫の話なんでしょーもなさはあるんですが、戦時中いつ何が起きてもおかしくないときに巡り巡って再会し、愛を貫くジバゴとラーラの関係はロマンチックではありました。なお、この映画はジバゴの兄イエブグラフ(アレック・ギネス)の回想という形式で話が進んでいくんですが、ラストのグッとくる終わり方もよかったです。