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日本人初のハリウッドスターである早川雪洲の渋い大佐役が印象的だった『戦場にかける橋』

【個人的な満足度】

「午前十時の映画祭14」で面白かった順位:20/23
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:The Bridge on the River Kwai
  製作年:1957年
  製作国:アメリカ
   配給:コロムビア映画
 上映時間:161分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:小説『The Bridge on the River Kwai』(1952)
公式サイト:https://asa10.eiga.com/2024/cinema/1313/

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
1943年、ビルマ。ニコルソン大佐(アレック・ギネス)率いる英国軍捕虜が収容所に移送されてきた。

所長の斉藤大佐(早川雪洲)は、彼らに米軍捕虜のシアーズ中佐(ウィリアム・ホールデン)らと共にクワイ河に架ける橋の建設現場で働くことを強要する。

捕虜たちに生き甲斐を与えようと考えていたニコルソンはこれを承諾、工事は着々と進んでいたが、収容所を脱走したシアーズの手引きによって、連合軍による橋の爆破計画が進行していた。

【感想】

※以下、敬称略。「午前十時の映画祭14」にて。1957年のアメリカ映画。第30回アカデミー賞で作品賞を含む7賞を受賞した名作です。

<尺は長いけど実在した橋を舞台にした物語は興味深い>

この映画、不朽の名作として名高く面白くはあったんですが、個人的にはそこまで刺さりませんでした。理由は、単純に尺が長かったからです(笑)長くてもジェットコースターのようなストーリー展開なら楽しめるんですが、この映画の場合は割と淡々と進行していくので体感時間も長く感じられましたね。

そうは言っても、描かれている内容はとても興味深いものです。フィクションではあるものの、元ネタは「泰緬鉄道」の建設。タイトルの『戦場にかける橋』とは、タイのクウェー川鉄橋のことを指し、第二次世界大戦中に旧日本軍が大量の捕虜を使って作らせたものです。なお、作中では最後に爆破されるものの、実際は今でも残っているようですね(戦時中は何度か爆撃はされているらしいですが、完全撃破には至らなかった模様)。

<日本人初のハリウッドスターをとくと観よ>

この映画で見どころなのは、斉藤大佐を演じた早川雪洲でしょう。彼、アジア人で初めて(つまり日本人で初めて)ハリウッドで活躍した人物なのです。この映画ではキャリアも後期になってきていますが、1907年に21歳の若さで単身渡米し、徐々に不動の人気を得ていったそうです。日本人なんてまったく相手にされない時代に、アメリカ人女性を虜にしていたとか。現代の感覚からすると二枚目という感じはしないものの、東洋らしいエキゾチックな顔立ちがメチャクチャ受けたみたいですね。お城のような邸宅に住み、女性関係も派手という、まさにスターらしい生活だったそうだけど、「世界のミフネ」の前にこんな人がいたとは。今、そんなことができる日本人いるんでしょうか。

<敵国の大佐もデキる人物>

そんな早川雪洲が演じた斉藤大佐が、ニコルソン大佐(アレック・ギネス)とお互い一歩も譲らない駆け引きをするシーンは面白いです。旧日本軍は橋の建設を進めてはいるものの、ノウハウがなく、工期が遅れに遅れている状況でした。それを見て、ニコルソン大佐は「こちらに指揮をさせればうまくやってやる」と言うんです。斉藤大佐からすれば、それを受け入れてしまっては捕虜に屈した形にもなるし、そんなの当時の日本男児が許すはずがありません。でも、背に腹は代えられず、最終的には工事の指揮をニコルソン大佐に渡すことになります。このとき悔しさのあまりむせび泣く斉藤大佐の姿を見て、さぞ辛かっただろうなと思いました。

で、このニコルソン大佐もなかなかにできる人物なんですよ。敵からの命令なので橋なんて適当に作ればいいのに、ものすごく丁寧に頑丈に作ろうとして、捕虜となっている部下たちに目的を与えてモチベーションを上げ、うまくマネジメントするんですね。「後世にこの橋を渡る人々は思うだろう。これを作ったイギリス軍は、囚われの身でも奴隷に身を落とさなかったことを」と言っていることから、自分たちの名誉と栄光のために敵の利益になることでも全力でやるような人物だとわかるんですが、まさにどんな状況下においても人間の持つ誇りと尊厳を守ろうとした尊敬すべき大佐だと感じました。

<戦争の虚しさがすべてを無にする>

とはいえ、最終的にこの橋は連合国軍によって爆破されてしまいます。それは、現場の実情を知らない連合国軍が、橋が完成したら日本軍がイギリス領インド帝国へ進軍するかもしれないということで、それを阻止するためでした。ニコルソン大佐からしたら、あれだけ苦労して指揮権をもらってちゃんとした橋を完成させたのに何とも虚しい話です。最後に「私は何のために?」って言ってましたが、これまでの労力がすべて水の泡になってしまったやるせなさといったらなかったですよ。でも、橋をあのままにしていたらイギリス自体がピンチに陥るかもしれないし、、、難しいですね。。。自分たちの名誉のために橋を作ったのに、自分たちの国を守るために橋を爆破される、、、改めて戦争の虚しさを感じました。

<そんなわけで>

やや淡々とした内容ではあるものの、戦時中における人間の誇りと尊厳や戦争の虚しさを感じる映画でした。今の日本人の多くは知らないでしょうが、早川雪洲の渋さも一見の価値ありです。あのカタコトのジャパニーズ・イングリッシュは早川雪洲自身が本当にあんな感じらしいですが、それゆえに斉藤大佐にリアルさがありました。

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