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ドラマ版を観た人は特に観てほしい。たったひとつの証言を求めた果てに、鏑木と関わった人全員が救われることとなった『正体』
【個人的な満足度】
2024年日本公開映画で面白かった順位:60/134
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★★
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★
【作品情報】
原題:-
製作年:2024年
製作国:日本
配給:松竹
上映時間:120分
ジャンル:サスペンス、ヒューマンドラマ
元ネタなど:小説『正体』(2020)
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/shotai-movie/
【あらすじ】
※公式サイトより引用。
日本中を震撼させた凶悪な殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた鏑木(横浜流星)が脱走した。
潜伏し逃走を続ける鏑木と日本各地で出会った沙耶香(吉岡里帆)、和也(森本慎太郎)、舞(山田杏奈)そして彼を追う刑事・又貫(山田孝之)。又貫は沙耶香らを取り調べるが、それぞれ出会った鏑木はまったく別人のような姿だった。
間一髪の逃走を繰り返す343日間。彼の正体とは?そして顔を変えながら日本を縦断する鏑木の【真の目的】とは。
【感想】
※以下、敬称略。
原作小説は未読ですが、2022年に放送されたWOWOWのドラマ版は鑑賞。今回の映画はドラマ版と大まかな流れは同じですが、構成やキャラ設定などはけっこう異なります。ドラマ版がすごく面白かったからハードルが上がっていましたが、映画は映画でとても面白かったのでオススメです。
<映画版とドラマ版の一番の違い>
直前にドラマ版を観たこともあって、感想はそれとの比較が多くなってしまいますが、今回の映画の一番大きなポイントは鏑木(横浜流星/ドラマ版は亀梨和也)と関わった人全員が「救われた」ことかなと思いました。殺人事件の容疑者として逮捕された鏑木は、「俺はやってない」と言い張り、真実を求めて事件現場にいた唯一の生存者に会いに行きます。とはいえ、追われる身ではあるので日本各地を転々としながら、そこで出会った人々との交流も後に大きな意味を持つことになるんですが。
ドラマ版は全4話構成で、鏑木が逃げた場所1つにつき1話みたいな形になっているんですが、鏑木はそこで困っている人を助ける救世主のような面も持っているんですよね。それはお金目的でも人助けをしている自分に酔っているわけでもなく、単純に彼の誠実な性格ゆえなんですが、人徳って言うんですかね、それが最後に鏑木に希望をもたらすことになります。
今回の映画は尺が限られていることもあって、ひとつひとつのエピソードに割く時間はドラマ版よりも短いです。鏑木による人助けの要素が減り、水産工場(ドラマ版でいうパン工場)のシーンはほとんどありませんでした。ただ、今回の映画においても鏑木の誠実な人柄という本質は変わらず、彼の真面目でまっすぐな生き方に触発されたのか、彼と関わった人々全員に大きな心境変化が訪れていたのが大きな違いだと感じました。沙耶香(吉岡里帆/ドラマ版は貫地谷しほり)はより鏑木に寄り添って彼の未来を生きる権利を守り、和也(森本慎太郎/ドラマ版は市原隼人)は新しい道を進むことを決意し、舞(山田杏奈/ドラマ版は堀田真由)は自分の生き方を見つめ直すきっかけとなりました。ドラマ版のように鏑木に助けられた恩を返すだけでなく、それぞれ自分の人生をよりよい方向へ変えていこうとしていたのが印象深いです。
<注目してほしいのが刑事の又貫>
中でも最も大きな違いは、鏑木を追う刑事の又貫(山田孝之/ドラマ版は音尾琢真)です。ドラマ版では鏑木が犯人だということも1ミリも疑わず、彼を捕まえることだけに執念を燃やす人物でしたが、映画版では大きく異なります。今回は新しく又貫の上司の川田(松重豊)も出てきて、ドラマ版で僕が又貫に感じた苛立ちを向ける矛先がどちらかと言えばその川田に替わった印象を受けました。じゃあ又貫はどういう立ち位置だったのかと言うと、当初は鏑木を捕まえることに躍起になっていたところは同じですが、次第にそのことに疑問を持ち始める設定になっていたんです。ラストでの又貫の行動には驚かされたけど、正しいと思うことを正しいと言えた彼もまた、鏑木によって「救われた」と思います。
<そんなわけで>
ドラマ版も面白かったですが、映画版もすごく面白かったです。死刑判決が出ていた鏑木のあきらめずに真実を追い求める姿と、そんな彼と関わることで人生が変わっていく人たちの感動のサスペンス、いや、もうこれはヒューマンドラマと言った方がいいかもしれません。みんなが出会う鏑木は姿は違えども、中身はどれも同じ。誠実でまっすぐで、それこそが彼の正体だと思いました。観終わった後、ドラマ版以上に心が晴れやかになりますね。ちなみに、ドラマ版の最後で裁判長役を演じた信太昌之が、映画版では鏑木を詰める検察役だったのもちょっとしたポイントです(笑)