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トランプ大統領の知られざる過去。気弱な青年が強欲な弁護士によって怪物へと変えられていく様子が興味深かった『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』

【個人的な満足度】

2025年日本公開映画で面白かった順位:6/10
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:The Apprentice
  製作年:2024年
  製作国:アメリカ
   配給:キノフィルムズ
 上映時間:123分
 ジャンル:伝記、ヒューマンドラマ
元ネタなど:第45代、47代アメリカ合衆国大統領「ドナルド・トランプ」(1946-)
公式サイト:https://www.trump-movie.jp/

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
20代のドナルド・トランプ(セバスチャン・スタン)は危機に瀕していた。
不動産業を営む父の会社が政府に訴えられ、破産寸前まで追い込まれていたのだ。

そんな中、トランプは政財界の実力者が集まる高級クラブで、悪名高き辣腕弁護士ロイ・コーン(ジェレミー・ストロング)と出会う。
大統領を含む大物顧客を抱え、勝つためには人の道に外れた手段を平気で選ぶ冷酷な男だ。そんなコーンが“ナイーブなお坊ちゃん”だったトランプを気に入り、〈勝つための3つのルール〉を伝授し洗練された人物へと仕立てあげる。

やがてトランプは数々の大事業を成功させ、コーンさえ思いもよらない怪物へと変貌していく……。

【感想】

先日、再びアメリカ大統領へと就任したドナルド・トランプ。そんな彼の知られざる過去を描いたのが本作ですが、本人がバリバリ元気に生きているのにもう伝記的な映画を作ってしまうのがすごいなと思いました。「トランプが上映阻止に動いた問題作」というのも頷けるほど、なかなかにセンセーショナルな内容でしたから。

<昔のトランプは気弱だった?!>

堂々としすぎている態度と強い物言いが印象的なドナルド・トランプ。でも、最初からそうだったかというと実はそうではなかったというのがこの映画の面白いところです。本作は、トランプ(セバスチャン・スタン)が父親の会社の副社長だったときから話が始まります。このときのトランプはそれなりの金と地位を持っていることに一定の自尊心を持っているようには見えたけど、普段テレビで目にする強気な態度は微塵も感じられませんでした。

<トランプをトランプ足らしめた男>

当時、トランプのいた会社は黒人に部屋を貸さなかったとかで公民権侵害の疑いで訴えられていて、もし示談なんかしようものならその額で会社は破産するほど。どうしたものかとトランプが頭を悩ませていたときに出会ったのがロイ・コーン(ジェレミー・ストロング)です。有力者たちが集う高級クラブで一際存在感を放っていたコーンですが、彼の方が今のトランプに近い雰囲気を感じましたね。コーンの一切笑っていない目と外道なやり方は弁護士というよりヤクザみたいなんですが、何はともあれその出会いがトランプを変えました。

コーンは勝つための3つのルールを徹底し、トランプにもそれに従うよう強く言いつけます。

①攻撃、攻撃、攻撃(攻めの姿勢を崩さないこと)
②自分の非を絶対に認めないこと
③どんなに劣勢でも勝利を主張し続けること

もちろん、何も考えずに他人に噛みついたり虚勢を張るわけではありません。コーンは上記3つを実行すべく、常にいろんな人と関わりを持ち、そして弱みを握っていました。「球技では人ではなくボールを追えと教わるが、実際は逆だ。人を追え」とコーンは言っていましたが、結局何をやるにしてもその主体は「人」なのだから、人と繋がりを持ち、情報を押さえておくことには改めてその通りだなと感じましたね。結局、コーンは交渉相手や障害となる相手には弱みをチラつかせたり、貸し借りを持ち出したりして様々なトラブルを解決してきました。まあ、脅迫やら盗聴やら、仕事をしていく上で円満な人間関係を構築していくやり方とは程遠い感じでしたけど。映画って本当に喧嘩腰というか、今後も継続したやり取りが発生する人に対しても平気で脅したりするけど、そんなんで気持ちよく仕事できるんですかね(笑)ただ、そのおかげでトランプは政府からの訴えの取り下げに成功し、その後も自身が建てるホテルの税金を免除されたりと、通常じゃ考えられない見返りを得ていくわけですが。

<大切なのは野心>

そんなコーンといっしょにいるうちに、トランプも次第に独善的・攻撃的になっていき、いつしかコーンを食うようになっていきます。コーンの言うことは聞かず、妻のイヴァナには豊胸させ、アルツハイマーの症状が出てきた父親をも騙そうとし、とにかく自らの野望を叶えるために攻めて攻めて攻めまくっていましたね。終盤でコーンはエイズにかかり、前半で見せたようなヤクザのような威厳は失われてしまいましたが、逆に彼に金魚のフンのようにくっついていたトランプがその座についたのです。この2人の対比と逆転劇は実に印象的でした。

性格的に自分は絶対トランプのようなやり方は真似できませんが、この攻めの姿勢はちょっとは見習いたいものです。トランプを観ていて思ったのが、人間大事なのは情熱とか野心とか気持ちの部分かもなということです。それがなければ行動に移せませんから。足りないスキルとかはそれができる人を雇えばいいんですよ。トランプは若い頃から大きなホテルを作ってニューヨークを生まれ変わらせるという野心を抱いていました。そういった野心家な部分があったからこそ、コーンもトランプを気に入ったんでしょうね。トランプは体も大きいですから、より一層まわりに対して威圧感を与えやすいので、普通の人がやるよりも優位に立つハードルは低いかもしれません(うらやましいw)。

<ラストの真相は?>

最後の部分だけちょっとわかりませんでした。エイズになったコーンの誕生日会を開いたトランプですが、それは本当に彼の誕生日を祝いたかったのか、それとも別の意味があるのか。忙しい身なのでわざわざ嫌がらせするために時間を割くような方ではないとは思いますが、その前のシーンでコーンを邪険に扱っていたので真意がわかりかねます。そして、トランプは彼にティファニーのダイヤ付きのカフスをプレゼントするんですが、イヴァナが「偽物よ」ってこっそりコーンに耳打ちするんですよね。本当に偽物だったのか、それともダイヤは本物だけどイヴァナがちょっといたずらしたかったのか(彼女はトランプとの結婚に際してコーンにしてやられた過去があったのでその仕打ち、、、?)。どっちとも取れるのがモヤりました。

<そんなわけで>

トランプが今テレビなどで目にするような人間性になる経緯がわかるとても有意義な映画でした。正直、トランプというよりもロイの伝記映画のようにも見えますけどね(笑)いやー、なんかもうトランプって大統領にはなるべくしてなった感じがしますね。もともと裕福な家庭なので、そもそものスタートが一般人とは大きく違うってのはありますが、やっぱり情熱とか野心ってのは大事だなって思いました。そういうのって教育や環境によって培われていくんでしょうか。あと、セバスチャン・スタンの見た目が本当にトランプ本人に近くてびっくりします。金髪で横に流す髪型にするだけであそこまで似るとは。

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