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振り切った世界観と演出に彩られた中で輝くオスカルは漫画史上最も器が広く思慮深い女性だと感じた『ベルサイユのばら』
【個人的な満足度】
2025年日本公開映画で面白かった順位:5/11
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★★
映像:★★★★★
音楽:★★★★★
映画館で観たい:★★★★★
【作品情報】
原題:-
製作年:2025年
製作国:日本
配給:TOHO NEXT、エイベックス・ピクチャーズ
上映時間:113分
ジャンル:アニメ、ミュージカル、ラブストーリー
元ネタなど:漫画『ベルサイユのばら』(1972-1973)
公式サイト:https://verbara-movie.jp/
【あらすじ】
※公式サイトより引用。
将軍家の跡取りで、“息子”として育てられた男装の麗人オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ。
隣国オーストリアから嫁いできた気高く優美な王妃マリー・アントワネット。
オスカルの従者で幼なじみの平民アンドレ・グランディエ。
容姿端麗で知性的なスウェーデンの伯爵ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン。
彼らは栄華を誇る18世紀後半のフランス・ベルサイユで出会い、時代に翻弄されながらも、それぞれの運命を美しく生きる。
これは、フランス革命という激動の時代の中で、それぞれの人生を懸命に生き抜いた「愛と運命の物語」。
【感想】
実は原作漫画もアニメも観たことがない『ベルばら』。昔よくやっていた「懐かしアニメ特集」みたいな特番で必ずと言っていいほど取り上げられるので、なんとなくの知識は持ち合わせていたものの、ちゃんと観たのは今回が初めてでした。なにこれ、メッチャ面白いじゃん。原作10巻分を2時間に収めているので話自体は飛び飛びであったとは思うんですが、初見でも充分に楽しめたし、最後はちゃっかり泣きました。
<常軌を逸した世界観と演出の虜に>
この映画でまず伝えたいのは、世界観と演出が振り切りすぎているということです。メインキャラクターの目は瞳の中に星が輝いていてキラッキラしている上に、まつ毛ボーン!で、「こんな目あるかよ!」とツッコミたくなるぐらい圧倒的な目ヂカラにやられました。また、本作はミュージカル仕立てになっているんですが、その演出が花や宝石を散りばめた光り輝くエフェクトが多く、全方位的にお花畑な雰囲気なんです。当時のフランス国民は貧困と飢えで苦しんでいる中で、ベルサイユ宮殿の中だけは別世界。パステルカラーを基調とした明るく鮮やかな色合いに彩られた中で優雅に生活しており、国民との対比がメチャクチャ印象的ですね。『レミゼ』と同じ時代なのに、全然違うユニバースみたいです(笑)その常軌を逸した世界観と演出に引き込まれます。
<できた人間、オスカル>
そんな中で貴族の出でありながら、誰よりも国のことを考えるオスカルにとても感銘を受けました。国の財政難のことを考えてマリー・アントワネットからの昇給の提示を断ったり、「国民を知らねば」と貴族出身者だけで固められた近衛連隊を抜け、一般市民から成るフランス衛兵隊へ入隊したりと、他の貴族とは一線を画す人間性の持ち主です。彼女こそ、漫画史上最も器が広く思慮深い女性キャラクターではないかと思いましたね。いやー、こんな女性の上司がほしいです(笑)
そんなオスカルは今まで男性として育てられてきたわけですが、マリー・アントワネットとの交流を通じて自分の中にある女性としての恋心に気づくなど、なかなか切ない一面もあります。フォン・フェルゼンやアンドレを巡る恋心の移ろいは実に甘酸っぱいですよ。ラストのアンドレとのやり取りは見事に泣かされました。。。
<ルイ16世とマリー・アントワネットは悪い人だったのか?>
僕は世界史には明るくないので、あくまでもこの作品を通じての印象になりますけど、ルイ16世もマリー・アントワネットも処刑されたものの、別に性根が腐った悪い人ではなさそうだなと感じました。ルイ16世は自己肯定感が低く、絶世の美女である妻のマリー・アントワネットの浮気も「自分に魅力がないから」と致し方なしとしていました。「僕がもっとスマートだったら、彼女に愛していると言えるのに」とひとりつぶやく姿は哀愁漂っていましたね。マリー・アントワネットも贅沢の限りを尽くしてはいたものの、彼女の場合は深く考えない世間知らずなお嬢様って感じなので、悪気なくただ無邪気にお金を使ってしまっていた様子。まあ、それ国民からの税金ですからね、国のトップに立つ者としてダメですし、そりゃ国民からの反感も買うわっていう話ではあるんですが、いわゆる悪代官みたいなずる賢さは感じられなかったという意味で悪人ではなかったのかなと(史実は知りませんw)。
<そんなわけで>
オスカルを取り巻く色恋沙汰を中心にしたストーリーと、華やかで眩しい演出の数々に見とれてしまう映画でした。フランス革命そのものにも興味が湧きます。映画を観た後に漫画の1巻とアニメの1話だけ観ましたけど、本作は登場人物の恋路に絞って、それ以外の要素はすべて削ぎ落としていたようです。でも、初見にはそれぐらいの方がわかりやすくてちょうどよかったかもしれません。なので、今まで『ベルばら』に触れてこなかった人にこそオススメです!