過去シリーズとは打って変わってシリアスな世界観で繰り広げられる"終わりの始まり"『アンドマン&ワスプ:クアントマニア』
【個人的な満足度】
2023年日本公開映画で面白かった順位:3/22
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★★★★★★★
映像:★★★★★★★★★★
音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★★★★★★★
【作品情報】
原題:Ant-Man and the Wasp: Quantumania
製作年:2023年
製作国:アメリカ
配給:ディズニー
上映時間:125分
ジャンル:アクション、スーパーヒーロー
元ネタなど:シェアード・ユニバース「マーベル・シネマティック・ユニバース」(2008-)
【あらすじ】
最小&最強のアベンジャーズ、アントマン(ポール・ラッド)は、<量子世界>に導く装置を生み出した娘キャシー(キャスリン・ニュートン)たちと共に、 ミクロより小さな世界へ引きずり込まれてしまう。
そこで待ち受けていたのは、過去、現在、未来すべての時を操る能力を持つ、 マーベル史上最凶の敵、征服者カーン(ジョナサン・メジャース)。彼がこの世界から解き放たれたら、全人類に恐るべき危機が迫る…。
果たして、アントマンたちはカーンの野望を阻止することができるのか―。
【感想】
「マーベル・シネマティック・ユニバース」第31作目。『アントマン』シリーズ第3作目。そして、MCUにおけるフェーズ5の幕開けとなる作品。最速上映で0時からキメてきました!いやー、これはまさに"終わりの始まり"といってもいい内容でしたね。
<過去シリーズとはまったく異なる作風>
今作を観た方は、過去の『アントマン』シリーズとはだいぶ雰囲気が異なることに驚かれたのではないでしょうか。これまではかなりコメディ寄りの作風で、現実の市街地を舞台に、体のサイズを小さくしたり大きくしたりして戦うという、これまで観たことのないようなバトルシーンが見どころでした。キャラクターもコミカルで親しみやすさがありましたよね。
ところが、本作の舞台はこれまでのような市街地ではなく量子世界です。前作の『アントマン&ワスプ』(2018)の終盤でも出てきましたが、量子世界というのは10億分の1mという極小サイズの世界で、当然目視はできません。なので、ここはもう自由に描き放題ということになるんですが、まるで『スター・ウォーズ』シリーズ(1977-)と『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』(2022)を足して2で割ったような世界観なんですよ。目の前には地球外の別の惑星のような光景が広がっており、宇宙人を思わせる謎の生命体も多数存在しているような状況で、今まで以上にSFファンタジー感が強かったです。
そこで明かされるジャネット(ミシェル・ファイファー)の秘密。彼女は『アントマン&ワスプ』にて、30年ぶりに量子世界から戻ってきました。しかし、その30年の間に彼女の身に起こったことが、今回の物語の土台になっています。それが征服者カーンとの関わりなんですが、これがまたシリアスかつスリリングで、今までの『アントマン』シリーズからは想像もできない展開に驚きました。
<ラスボスがしょっぱなから出ている衝撃>
この映画で僕がすごいなと思ったのは、2025年公開予定の"アベンジャーズの新作"において、ラスボスとされる征服者カーンがすでに登場していることです。日本のRPGなんかでは、序盤に出てきた敵キャラがラスボスだったという設定は時々見かけますが、それが今回の映画でも取り入れられているんですよね。かつてのサノスだって、エンドクレジット後のおまけ映像でチラッとしか出てきていなかったのに、カーンに関しては今作のヴィランとしてメイン張ってますから。しかも、彼はドラマシリーズの『ロキ』(2021)にて、"在り続ける者"としてすでにお目見えしてるんですよ。だから、この映画を観るに当たっては『アントマン』シリーズだけでなく、『ロキ』も観ておいた方がベターですね。
<征服者カーンの怖さ>
本作の見どころは、あらゆる時間軸を破壊しようとするカーンとの戦いです。強力なテレキネシスやビームを使うだけでなく、格闘スキルも高く、アントマンたちを苦しめます。しかし、彼の怖いところは戦闘能力の高さではありません。詳細は割愛しますが、マルチバースと深い関わりを持つチートじみた設定にあります。観ればわかりますが、「あ、これはもう終わったな」と絶望を感じられるでしょう。これからのカーンとの戦いがどうなっていくのか、まったく予想がつきません。
<既視感のある展開ゆえに新鮮味は薄い>
マーベル・シネマティック・ユニバース全体で考えれば、この映画はとても重要な作品であることに間違いはないでしょう。今回から始まるフェーズ5から次のフェーズ6にかけてのラスボス(の可能性が高い)征服者カーンが本格的に猛威を振るい始めるのですから。
ただ、この映画単体で観るとけっこう好みは分かれるかもしれません。僕自身も「秀逸すぎる作品だ!」と声を大にして言えるかというとちょっと自信ないです(笑)もちろん面白くはあるんですけど、特に大きなピンチもなく、ストーリーがトントン拍子に進みすぎてしまっているのと、『スター・ウォーズ』シリーズや『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)の「アッセンブル!」を彷彿とさせるシーンが既視感強すぎて新鮮味が薄く、思ったほど興奮できませんでしたから。それはそれで悪くはないとは思うものの、これまでコミカル路線だった『アントマン』シリーズに対する期待値の高さゆえに、正直ちょっと違和感ありましたね。カーンも最初は強いかなと思ったんですが、意外とそこまででもなかったですし(笑)まあ、最初からとんでもない強さを出してしまったら、アントマンたちが全滅してそこで話が終わっちゃいますけど(笑)
<そんなわけで>
MCUのフェーズ5の幕開けとしてはふさわしい映画です。まさか、アベンジャーズ後発組のアントマンが、『アベンジャーズ/エンドゲーム』で勝利の糸口を提供し、今度のカーンとの戦いのきっかけを作るとは。。。こんな重要なポジションを担う人物になるとは誰が想像したでしょう。もとはただの泥棒ですよ?(笑)この映画単品としてはけっこう賛否あるようですが、今後もマーベルを追っていくなら見逃せない作品です。毎度ながらエンドクレジット後の映像にもぜひ注目してください!「ここに繋がるのか」とエモい気分に浸れます(笑)