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【ネタバレあり】結末が胸糞すぎて泣く。監督自身の身に起きた例の事件を乗り越えてのこの展開なのだからもう言葉が出ない『チャイナタウン』

【個人的な満足度】

「午前十時の映画祭14」で面白かった順位:14/19
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:Chinatown
  製作年:1974年
  製作国:アメリカ
   配給:CIC
 上映時間:131分
 ジャンル:ミステリー
元ネタなど:事件「オーエンズ・バレーレイプ事件」(1933)
公式サイト:https://asa10.eiga.com/2024/cinema/1314/

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
第二次大戦前の南カリフォルニア。私立探偵ジェイク・ギテス(ジャック・ニコルソン)は、モーレイ夫人と名乗る女性から市の水道局に勤める夫の浮気調査を依頼される。だがその夫は貯水池で溺死体として発見される。

後日、ギテスは再び夫人の訪問を受けるが、その女性こそが真のモーレイ夫人、イヴリン(フェイ・ダナウェイ)だった。あらためてイヴリンに雇われたギテスは、事件の背後にロサンゼルスの水道利権を巡る陰謀を嗅ぎつける。

【感想】

午前十時の映画祭14」にて。1974年のアメリカ映画。1930年代のカリフォルニア州における水利権をめぐる水不足問題をベースにしているんですが、内容は秀逸なミステリー映画で、特に結末が衝撃的な映画でした。

<設定自体はちょっと複雑>

本作は、私立探偵のギテス(ジャック・ニコルソン)がモーレイ夫人と名乗る女性から夫であるホリス(ダレル・ツワーリング)の浮気調査を依頼されるところからすべてが始まります。調査をしていく上で、その夫が水道局の部長だったことがわかり、水利権を巡って影の有力者であるノア・クロス(ジョン・ヒューストン)と対立し、殺されてしまったことが判明します。しかも、最初にモーレイ夫人としてやったきた女性は偽物で、本物のモーレイ夫人(フェイ・ダナウェイ)は別にいることもわかるんですが、彼女はノア・クロスの実の娘と言うじゃありませんか。まあ、親子関係にあるってだけでモーレイ夫人がトラブルの元凶っていうわけではないんですけど、ここらへんの複雑な事情がストーリーをやや難解に感じさせている部分はありましたね。

<黒幕のえげつなさに吐き気>

結論から言ってしまいますと、このノア・クロスっていうじーさんが金儲けのためにすべて仕組んだわけですが、これまたそのじーさんがとてつもなくえげつないんですよね。。。最初に偽物のモーレイ夫人が夫のホリスの浮気調査を頼んだと書きましたが、そのときホリスといっしょにいるところを撮られたのがイヴリンの妹であり娘のキャサリン(ベリンダ・パルマー)です。妹であり娘ってどういうことなんでしょうか。実は、イヴリンは若い頃に父親と何かあって彼の子供を身籠ってしまったんです(ノアからしたらキャサリンは娘であり孫っていうことになりますね)。レイプだと思うんですけど、そう尋ねるギテスにイヴリンは首を横に振っていたので、それ以上のおぞましいことがあったのかもしれません。で、イヴリンは14~15歳のときにメキシコに逃げてホリスと出会ったわけです。だから、劇中で明言はされていませんでしたが、ホリスはイヴリンの過去を知っていたんじゃないかなって思うんですよね。浮気っていうのも単にキャサリンの面倒を見ていただけな気もします。

<数ある映画の中でもトップクラスの胸糞悪さ>

そんな状況を踏まえての衝撃のラストです。ノアに捕まったギテスは彼をイヴリンとキャサリンの元へと案内します。そこはかつてギテスが警察官だった頃に働いていたチャイナタウン(タイトルもここからきています)。知り合いの刑事に事情を説明するも聞き入れてもらえず、ノアから逃げようと車を走らせたイヴリンは後ろから左目を撃ち抜かれて即死。ああ、もし刑事が話を聞いてくれていたらこんなことにはならなかったかもしれないのに。。。刑事の立場的には、悠長に話なんか聞いていられなかったってことなんでしょうが、彼と部下の早まった行動が悲劇に繋がりましたね。

結局、何も悪くない、むしろ若い頃に身も心も傷ついたイヴリンが亡くなるというこの結末は本当に胸糞悪い。。。ラストはハッピーエンドにするかバッドエンドにするか、監督のロマン・ポランスキーと脚本のロバート・タウンの間でかなり揉めたそうです。結果的にバッドエンドで映画としてすごく印象には残りましたが、、、ロマン・ポランスキー監督の精神力がすごいなと思いましたね。というのも、彼はマンソン事件(1969)で妻のシャロン・テート(1943-1969)と妊娠8ヶ月の我が子を惨殺された過去があります。だから、胸糞悪い結末には抵抗がなかったとも言えないと思うんですよね。それなのに、ハッピーエンドでは凡庸な映画になってしまうと譲らず、このような形にしたと。

<そんなわけで>

ストーリーはやや難解ですが、徐々に真犯人に近づいていく流れと衝撃のラストがとてもインパクトの強い映画でした。ちなみに、ノア・クロスを演じたジョン・ヒューストンは『アダムス・ファミリー』シリーズ(1991-1993)のモーティシア役で有名なアンジェリカ・ヒューストンの父親です。しかも、当時ジャック・ニコルソンはアンジェリカ・ヒューストンと交際していたそうなので、劇中のノアの「娘と寝たのか?」というセリフはなかなかにシュールですよね(笑)あと、ギテスの鼻を切った小柄なチンピラはロマン・ポランスキー監督本人だそうなので、ちょっと注意して観てみてください。

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