風も吹くなり 雲も光るなり 2016.06.16
林芙美子…
長い間、彼女が嫌いでした。
一作品も読んだこともなく、読む気もありませんでした。
その理由は、彼女が色紙に好んで書いたという
「花のいのちはみじかくて 苦しきことのみ多かりき」
この一文のせいです。
一生懸命生きているのに、花咲ける日々は短く苦しいことばかり。
もしかしたら人生は、そういうものかも知れないけれど、
「なんでそれをわざわざ色紙に書かにゃあいけんのんよ。
希望を失くすようなこと書きなさんなや」
そんな気持ちでいました。
そんな彼女が思春期を過ごした広島県尾道市。
尾道商店街の入り口には彼女の銅像があり、「あじさい忌」と呼ばれる、在りし日の彼女を偲ぶイベント等も催されます。(2016年は6月26日日曜日)
尾道は好きな町でよく訪れますが、私はこの銅像に何度となく恨みがましい視線を送ったものです。
半年ほど前、この言葉は詩からの抜粋だと知りました。
そして全文を読んでみたのです。
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風も吹くなり
雲も光るなり
生きてゐる幸福(しあわせ)は
波間の鷗のごとく
漂渺とたゞよひ
生きてゐる幸福は
あなたも知ってゐる
私もよく知ってゐる
花のいのちはみじかくて
苦しきことのみ多かれど
風も吹くなり
雲も光るなり
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ああ、よかった...
苦しいことは多いけれど、風を感じて、雲を光らせる太陽を知ることもできる。
そんな人生も悪くない。生きるって幸せだね。
そう書いてあると感じました。
彼女の書いたものを読んでみようかな、と思い始めています。
先日尾道で、林芙美子の銅像に「いままでゴメンね」と小さく謝ったのは、ここだけの話にしておきましょう。