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野球は髪型で決まるのです
甲子園は、慶応が仙台育英の2連覇を阻止して、107年ぶりの優勝を果たした。
毎年、閉会式の終了とともに、僕の夏も終わる。
このロスな毎日を埋めるために、もう少し、高校野球について考えてみたい。
今年も開催中に野球以外の様々なことが話題になった。
そのいちばんは、猛暑の中でいつまで野球をやらせるのか。
もうひとつは、球児の髪型、と言うよりも、これは慶応の髪型と言った方がいいかもしれない。
慶応のあの応援圧についても騒がれたが、これは今はなにを言ってもひがみにしかならないので、言わない。
さて、慶応の自由な髪型。
それが称賛される一方で、丸刈りが批判されもした。
丸刈りを強制するのは時代遅れだ、野球と髪型は関係ない、野球は髪型でやるもんじゃないと。
確かに、今どき丸刈りの強制なんて時代遅れ、時代錯誤だ。
でも、本当に野球と髪型は関係ないのだろうか。
僕は、野球は髪型でやるものだと思っている。
野球も、と言った方がいいかもしれないが。
誰でも、気に入った髪型にすれば、毎日が楽しくなるだろう。
今日の自分の髪型はいけてると思えば、パフォーマンスだって上がるに違いない。
プレゼンも成功する。
契約も成立する。
野球も同じだ。
プロ野球にロン毛の投手がいるのも、きっと同じ理由だ。
彼らは、その髪型がいちばん実力を発揮できるのだ。
高校球児だって例外ではない。
長髪が良ければ長髪にすればいい。
丸刈りが良ければ丸刈りにすればいい。
気分のいい髪型なら、パワーも出る。
野球は髪型で決まるのだ。
ずっと昔、野球部は坊主頭と相場が決まっていた。
高校球児に限らず、中学野球もそうだった。
僕なんかは、バリカンで刈られていく自分の頭を鏡の中に見て、これで僕も球児の仲間入りだと感慨に耽っていた。
のほほんと生きていた僕は、丸刈りをすることに何の疑いも持たなかった。
そもそも、何故丸刈りだったのだろう。
ひとつは、精神論だ。
野球ひと筋、命を賭けてますという気持ち。
気合い。
でも、これは野球に限らない,
今でも、何かやらかしてお詫びをする時には、丸坊主で現れたりする。
高校球児の丸刈り精神論は批判されるが、何かやらかした芸能人のお詫び会見で、あの髪型はなどとよく炎上するのは、結局はみんな未だに髪型に気合いを求めているのではないか。
僕も、50代の後半、10代以来の丸坊主にした時には、「マー君さん、なにかやらかしましたか」と遠慮がちに尋ねられた。
何もやらかしてはいない。
ただ、禿げを目立たなくしただけだ。
丸刈りにする理由は、他にもあるだろう。
何か悪さをしようとしても、頭を見ただけで野球部とわかる。
昔の野球部は不良が多かった。
丸刈りにすれば、おしゃれをする時間を練習に充てられる。
でもこれは無駄だ。
みんな何ミリかの髪の毛に、一生懸命リンスしていた。
僕なんか、坊主頭のくせに学生服のポケットに櫛を挿していた。
もうひとつ、僕が思うに、丸刈りにすることによって、シャバとの関係を断つ、断つことによって、こちら側の結束を固める、いわば、反社の方々の刺青に近いものがあるのではないか。
しかし、どんな理由があるにせよ、今やナンセンスだ。
ナンセンスと言うのは、丸刈りがではない。
丸刈りを強制することが、ナンセンスなのだ。
恐らく、今では、ほとんどの学校がはっきり強制はしていないだろう。
僕の時もそうだった。
ただ暗黙の了解、と言う奴だ。
そんな風習を断ち切るには、やはり指導者が、「今日から君たちの髪型は自由だぁ」と声を張りあげるしかない。
僕も、自分が高校を卒業して、高校野球を冷静に見つめられるようになって初めて気付いた。
野球をやるのには、必ずしも丸刈りである必要はない。
髪型は自由でいい。
自由ではいいが、慶応の称賛と共に丸刈りそのものを批判する論調も目にした。
しかし、丸刈りを一方的にそれだけで批判するのはお門違いだ。
自由でいいのなら、丸刈りもまた許されてしかるべきだ。
僕も60歳を超えて丸刈りだ。
僕のようなハゲ親父からすれば、髪型を選べるなんて、それだけで人生薔薇色じゃないか。
別に、髪型自由の学校は慶応が初めてではない。
何十年も前から、いくらでもある。
実際に甲子園にも出場している。
昭和24年に初出場初優勝を果たした湘南高校にも長髪の選手が何人かいたらしい。
終戦から4年しか経っていない。
こちらの方がすごくないか。
もっとも、記事によると、慶応もこの時既に長髪だったらしいが。
やはり、慶応、恐るべし。
しかし、今回の慶応の髪型の異様な盛り上がりは、マスコミに多いOBが、一生懸命に母校を盛り上げる記事を書き、一部の意識高そうな系の人たちがのせられと言うことだろう。
ツーブロックでも、ロン毛でも、丸刈りでも、自分がいけてると思えて、自信を持って投げ込める、バットが振れる髪型があれば、それにすればいい。
野球は髪型でやるものだ。
甲子園のマウンドで、金髪ロン毛をなびかせて、颯爽と投げ込むエースを早く見てみたい。
それにしても、髭面の高校球児は最近とんと見なくなったなあ。