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その4: シュートを「選ぶ」

まずはその1〜その3までお読みください。多分以下の文章も、よりわかりやすくなると思います。


はじめに


今回はシュートを選ぶ事について、詳しくお話ししようと思います。

別の言い方でショットセレクションとも言います。

僕は8年ほど前に初めてバスケにとても詳しく、尊敬するある人からショットセレクションについて話を聞きました。
彼はNBA.comのスタッツページから、色んなシュートに関する数字を見せてくれ、シュートを打つ場所の価値について説明してくれました。

しかし、その話を聞いても僕はショットセレクション(シュートを打つ場所によって価値が違う)の意味を理解できませんでした

もちろんそれまでショットチャートは死ぬほど見てきましたが、成功数と

「あーこの人3P多いんだな」とか「おー、シャックってシュートは全部ペイント内なんだ」

とか、そういうレベルの分析でした。元々ミッドレンジと3Pの違いなんて、注目もしてませんでした。

なので、まずは本当に理解する事から始めようと思いました。

まずその人から助言されたのは、シュートの場所別に投数vsインをチャート別に書いてみるという事でした。僕は当時HCをしていた社会人のチームの試合のビデオを観ながら、何時間もかけて3P、ミドル、レイアップ、FTと細かくシュートスタッツをつけました。

すると、チームで平均するとレイアップ・ミドル・3P・FTにて確率が試合を重ねるごとに大体一致していることに気づきました。そして、チームのシュートの価値が見えてくるようになってきました。つまり、より得点しやすいシュートを打つのがベストと思うようになってきました。価値が見えるようになると、どのシュートを選ぶべきか分かるようになりました。

次の練習で僕はシュートを打つ場所を、チームにアドバイスすることにしました。得意でかつ効率のいい場所で打つことを意識してほしいと伝えました。

すると得点が少し増えました!打つ場所と、打つ選択肢を考えることによって実際にチームに好影響を与えることを目撃しました。

それから更にショットセレクションについて沢山考えてきて、今に至ります。もちろん今も勉強中です。

コーチの方々はどうしても
・どういったオフェンスをするのか
・何のセットをするのか
といった、プロセスにフォーカスしてしまう気がします。
重要なのは、オフェンスの終着点=シュートです。どのシュートに最終的に辿り着くか…これを意図的にたどり着かせるか…これがショットセレクションではないかと思っています。


シュートを「選ぶ」

まずはシュートを選ぶことについて話します。

この2つの方法があります。

1)個人で選ぶ
シュートを個人で選択するのは、自分が得意な場所から打つことを意識することから始まります。そしてそれが効率が良いかどうかを、実際にチャートをつけたりして理解することが重要です。シュートは数字なので、そこに向き合うのは選手としてとても重要だと思います。

個人レベルでシュートを選ぶので一番わかりやすいパターンが、3Pのショットフェイクの後の動きです。

マイアミ・ヒートにダンカン・ロビンソンというシューターの選手がいます。彼は大学時代に3Pライン上でショットフェイクしてディフェンスのチェックを促した後、1回ドリブルをついて前に移動してミドルシュートを打っていました。

その後NBA入りし、ヒートに入団して同じ動きをした直後にコーチから呼び出され、

「君はそのシュートを2度と打ってはならない」

と言われたらしいです。

それからロビンソンは、ショットフェイクから真横にズレて3Pを打つようにしたそうです。

より良いシュートを選ぶように選手にアドバイスし、実際に個人レベルで選ぶようになったケースですね。


2)チームで選ぶ

チーム単位でシュートを選ぶということです。

メンバー全員に、こういうシュートを全員で意識して打ちましょうという提案ですね。

Gリーグ(当時はDリーグ)のNBAロケッツ傘下のリオ・グランデ・バイパーズは、ロケッツGMのダレル・モーレーの提案でゲーム中に3Pとレイアップ(5フィート以内のシュート)以外は禁止というルールを作りました。(8年前にこれをやっていたというのが僕的に一番すごい事だと思いますが…)

実験的な側面もあったと思いますが効率の良いシュートを必ず選ぶようにルールを決めたのはかなり革新的で、チームでシュート選ぶという意味では一つの歴史的な瞬間だったと思います。

他にチーム単位でシュート選ばせるので思い出せるのは現ラプターズHCのニック・ナースがチーム練習のスクリメージで、コーナー3Pを4点にし、ミドルを0点というルールにしました。

もちろん実際の試合ではその点数の価値ではないのですが…

点差=そのシュートの価値という形を作り、それを選手に数字で理解させようとしたのかなと思っています。実際の数字にわかりやすく提示された事によって、プレースタイルやどの場所でどのシュートを打つ意識をアップさせたのではないかと思います。

それに加え単にルールを変えただけなので、「このシュートしか打つな」という単純な指示より、選手にわかりやすくさせる効果があったと思います。



確率と効率

ショットセレクションに関しては、これにつきます。

つまり、

「確率がよければ、どこからシュートを打ってもいい。ただしそれが2Pの場合は、3Pの確率と2点vs3点で比べた場合より良くなければいけない」

可能な限り簡単にいうと、こういうことです。

「〇〇から打つシュートはダメ、〇〇から打ったほうがいい」

僕はこの表現はかなり誤解を生むと思っています。

ショットロケーションには基本原理がありますが(数字なので)、例外も十分に存在します。

もちろんミドルだけ打って勝つことも、理論上は可能です。
ただ、それだけ高い確率で決める必要がある、FTをもらう必要があるなど
条件が増えていきます。これを克服できるなら沢山点を取ることができます。


3次元目の奥行き

その2のブログで奥行きの話をしました。ボールからゴールの距離の話です。

その時お話ししましたが、シュートは距離が近いほど入りやすいです。

ダンカン・ロビンソンがヒートのコーチからワンドリミドルを打つなと言われたのは何故?はこの原理に添っていると思います。

それは「距離が近くなった分vs得点価値」が合わないからです。

図に書いてあるとおり、単純に距離の問題で赤の距離差で1点減るのはもったいないということです。青の距離差であれば、レイアップの方が単純に距離が近くて入りやすいので1点減っても価値は変わらないという考えです。

一歩近づくだけで1点減点されるのは、あまりにももったいないという意味ですね。

逆の考えとしては、ロング2を打てる状況で2歩下がって3点にするのはめちゃくちゃ効率のいい行為だと思います。これは少しだけ移動することによって点数を1.5倍にしてますからね!



こっちは選んで、相手に選ばせない

NBA(特にプレイオフ)ではシュートを選ぶvs選ばせないの勝負が、毎晩行われています。バスケットボールは対人のスポーツなのでオフェンスの邪魔することができます。そしてその邪魔とは、シュートを打つ場所にも及びます。

これは今後の投稿でじっくり話します。



リーグ・チーム平均値

ショットセレクションで大事なのは、自分が今分析してるorコーチングしているリーグの平均値を理解することです。

例えば大学リーグの3P平均値が2割だった場合、3Pの価値は大幅に減ります。
逆にミドルの平均値が5割であれば、ミドルは打ち続けるべきです。

FTも、カテゴリー的に下手であれば、FTを貰う価値も減ってきます。
するともしかして、ミドルのオープンショットがベストショットになってしまうかもしれません。平均値を把握しなければショットセレクションは不可能です。

自分のチームが所属してるリーグの平均値をまず把握し、その中でどこを変更すればEDGE(有利なポイント)が発生するか見えてきます。



シュート確率の上限

シュート確率には、上限があると考えます。

これは野球の打率にとても似ています。
野球の場合、4割打者はほほ出ません。
イチローのように超人的な選球眼があり、バッティングの技術があり、安打を打つことに全てを費やしてきた選手でも4割には達成できません。

同じように、3Pは今のところ5割をシーズンごとに打ち続けた選手はいません。そしてミドルも、5割ぐらいが上限で6割のミドルシューターはKD以外は存在しません。

3m5cm上にあるボール2個分の円周があるリングにゲームシチュエーションで他の動作も入り邪魔も加えられた場合、決める上限が存在するのかなと考えています。野球の安打の条件と一緒です。

この上限が存在する限りは3Pの価値が高くなってしまいますよね。



選ぶ権利

シュートには選ぶ権利というものが存在すると考えます。

なぜ僕が「権利」という言葉を使ったのか…
権利は勝ち取るものだと思っているからです。

先ほどお話しましたが、オフェンスには邪魔が入ります。
この邪魔を克服しなければ、シュートを選ぶことができません。

2つのスキルを駆使することによってシュートを選ぶ権利が生まれると思っています。


この2つの項目に関しては、また後日のブログでじっくり話します。



最後に…

バスケットボールは対人のスポーツです。

自分がやりたいことがあり、相手がやりたいことがあります。そして自らやりたいことを遂行し、相手のやりたいことを邪魔して防ぐ。

この戦いはシュートを選ぶ行為でも存在すると僕は考えています。

この戦いは何なのか?どうやって勝利するのか?

これを今後じっくりお話ししたいと思います。今日はここまで。


読んでいただきありがとうございました。

Mark Kaijima




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