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プライム市場に行く意味は2つあります
上場企業にお勤めの皆さん、7月に東証から市場区分選択に関するお知らせが来ましたね。現在東証一部に上場している企業がプライムに「残れる」かどうかが、話題になっています。ですが、プライム市場を選択する意味、ちゃんと考えていますか?ステータスのことしか考えていないのであれば、それはちょっと残念です。
東証は、今回の市場区分変更にあたり、今の一部・二部のように上下の階層を作るのではなく、プライム・スタンダード・グロースは並列の関係と言っています。(詳細はこちら)
実際、上場企業としての信用力についてはスタンダードでもグロースでも一定程度取れると思いますので、並列の概念は理解できます。とはいえ、プライムに行く実利は大きく二つあります。
1.流動性(売買代金)
まずプライムでは流動性が高くなります。流動株式比率がプライムの基準になりますが、現在の東証一部という区分でも、他の市場では大きな差があります。主な要因はTOPIX連動のパッシブ運用金額が巨大ということでもありますが、東証一部に指定替えされると、一日の売買代金は大きくあがります。2019年、2020年の各市場の一日あたり売買代金を、上場社数(期首期末平均)で割ってみたのがこちらです。
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東証一部の一日当り売買代金は2兆円~3兆円です。このうちかなりの部分がTOPIX連動です。他にはMSCIも指標として活用されています。現在約2200社が一部に上場していますので、単純に平均を出すと一社あたり10億円強が一日の売買代金となります。海外機関投資家が求める流動性の最低基準としては一日5億円~10億円と言われることが多いですが、東証一部の多くの企業がこれを満たしています。
TOPIXの対象外のそれ以外の市場は、なかなか厳しい状況です。時価総額上位の企業はともかく、一日数億円、数千万円という企業が多いようです。マザーズ市場は、2020年は一日あたり平均約1,800億円が全体の売買代金で、一社当たり約6億円となかなか健闘しているように見えます。ですが、2020年11月頃からやや失速し、8月の一社あたり平均は3.5億円です。
近年の日本の株式市場では、1年に約100社が上場していますが、主な受入れ先はマザーズなどの新興市場です。
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上場企業数が増えたからといって、日本株に投資する資産が増えるわけではないですし、各企業にとって売買高を維持するのはかなり努力が必要となると思われます。そう考えると、プライム市場を選択する重要性のひとつは流動性にあります。
流動性が高ければ、海外を含む幅広い投資家の投資対象になるため、いざという時の資金調達や、既存株主の売出しといったコーポレートアクションで選択肢が広がることになります。これがプライムのメリットです。
2.投資家層の違い
もうひとつは、投資家層の違いです。1.の流動性の結果なのかもしれませんが、東証一部では多様な投資家へのアクセスが可能です。以下は投資家属性別の売買代金(フロー)の内訳です。ストックデータである期末の株主名簿とは様相が異なるはずです。株主(ストック)で多いのは、事業法人(政策保有に加え親子上場の親会社)や、国内金融機関(銀行含む)です。フローでは、個人投資家と海外投資家が主役です。東証一部では、6割が海外機関投資家です。それ以外の市場では、海外が4割近くありますが、実はこの4割は時価総額上位の企業に集中しているので、時価総額の小さい会社の売買(フロー)のほとんどは個人投資家です。
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このデータが何を意味しているかというと、公募や売出しなどで実際にアクションを起こす投資家層もこれに類似するということです。だから重要なのです。
3.プライムの意味
では、上場企業としてどうするか。株式を使ったコーポレートアクション(公募売出しや新株予約権付社債の発行、株式交換)などを活用するのであれば、幅広い投資家にアクセス可能なプライム市場を選択すべきでしょう。株式市場での知名度やIRの実績が充分高ければ、グロースやスタンダードでももちろん様々なコーポレートアクションが可能ですが、プライム市場にいた方が確実であり、それが重要な実利です。
それほど増資などのコーポレートアクションのニーズがなければ、流動株式比率を抑えて一定程度の信用力を得られるスタンダード市場や、成長株としてチャレンジするグロース市場でも別によいのだと思います。7月に書いた以下のnoteに反響がありました。プライムに行きたい人達に、その意味を考えてもらいたいと思い、このnoteを書きました。
そしてこの記事の続きも書きましたのでご覧ください。
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